「今度、こんな新商品を開発しようと思うのですが…売れますかね?」
旧知の経営者から四方山話の延長線上で、ご相談を受けました。
コラムの愛読者で、拙著「営業を設計する技術」を熟読されている社長だけに、企画・構想は完璧。
・明確なターゲット
・ターゲットが受け取る効用
・利用する場面設定
・明確なポジショニング(差別化)
・時代性の折り込み
・既存事業とのシナジー効果
・企画時点で「セールストーク」が出来上がっていること
新商品戦略、新規事業戦略に必要なすべての要素が魅力的に仕上がっていました。
ただ「机上の空論」という言葉がある通り、売れるか売れないかは実際に上市してみなければ分かりません。
不安が多少残るのは、よく分かります
・製造ラインに乗せる設備投資
・パッケージの印刷
・商品説明書の制作
・販売用のチラシ
・ホームページ制作
・広告費
…などなど、上市するまでには「投資」が必要ですし、何よりも「組織」を動かすわけですから、確実性を高めたいのは、みな同じでしょう。
大手企業であれば、上市前に数百万円から数千万円かけて「調査」を行った上で、上市するか否かの判断をしますが、中小企業が事前にマーケティング調査をするのは、ごくごく稀です。
拙著「営業を設計する技術」にも言及していますが、中小企業の場合は、そもそも売上規模を数十億円狙っているわけではありません。
数年で、数千万円、1億円程度の売上であれば、感覚的に「売れ行き」を捉えられれば十分です。
その為の手法として有効なのが、「テスト営業」です。
テスト営業とは、私がネットビジネス業界でのローンチの常套手段を、「リアル営業」の中にカスタマイズして導入したものです。
これは非常に効果的です。
営業マンにとっては「出来上がった商品」を売るよりも、これから発売する商品を売り込む方が、がぜん簡単なのです。
その理由をお話しする前に、「テスト営業の目的とやり方」を解説していきましょう。
テスト営業の目的は、2つあります。
- 事前に売れるか売れないか「肌感覚」で把握すること
- 顧客のニーズを事前に掌握すること
の2点です。
テスト営業は、映画の予告編のように、全体を見せずに、ダイジェストだけを新規見込み客に伝えていきます。
方法は、人脈や飛び込み営業など、商談を通じて、キャッチボールができる方法を選択します。
「半年後に、この新商品をご提供できます」
と、まだ出来ていない商品を出来たものと思い込んで、本気で売り込みます。
もちろん、相手には「製造途中」であることを知らせていますから、まだまだ改善の余地があることを含ませておきます。
・新商品を企画した「背景」や「目的」
・お客様が得られるメリット(商品企画の狙い)
・実際の利用イメージ
を伝えます。
すると、商談相手は、「実際の利用イメージ」にギャップや違和感を覚えたりすると、「いやいや、そこはこうしたシステムじゃないと使えないよ」と水を差してくることがあります。
この「ネタ(要望)」が、非常に大事。
次のテスト商談相手には、「前のお客様でこんなご要望がありまして…」とネタを振ると、「うちも!」と同調したり「うちには不要だな」と市場ニーズの精査が可能になります。
これを数件繰り返せば、現時点での「企画の甘さ」が露呈し、本気で商品開発をする際の「情報の宝庫」となるわけです。
机上の空論のまま、モノが出来上がってしまうと恐ろしさを感じませんか?
すべての投資が無駄になるとは言いませんが、それでも無駄な「出戻りコスト」は発生します。
必要に応じて、増設すれば良い…という発想では失敗を招く可能性が高まります。
初期設計は、できうる限り「完璧な設計」を目指すことが大切です。
少なくとも「骨格となる仕様」に関しては、設計ミスをしてはなりません。
だからこそ本気で売り込むテスト営業で、設計のアラを事前に掌握することが大事なのです。
繰り返すとテスト営業の目的は、
- 事前に売れるか売れないか「肌感覚」で把握すること
- 顧客のニーズを事前に掌握すること
になります。
が、この2つだけではありません。
すごいオマケ(?)がついてきます。
それは 3. 上市した瞬間「受注リスト」または「見込客リスト」の入手です。
上市してから、必死になって売り込むよりも、がぜん楽チンです。
藤冨と一緒に飛び込みでテスト営業を回ったことのあるお客様は、皆びっくりします。
「こんなに話を聞いてくれるとは思わなかった」と。
机上の空論を、現場で確かめ、確信を持って「商品開発」や「マーケティング投資」を手掛けるのと、暗闇の中手探り状態で投資をするのとでは、精神衛生上、雲泥の差が生じるはずです。
テスト営業は、「新商品の開発計画」の中で、もっとも重要な役割を担いますから、抜け目なく御社の計画にも織り込んでください。
次に「やり方」をお伝えしたいのですが、文字量がこの時点で2000文字近くなってしまった為に、次は次号に譲りたいと思います。
次週の「第474話 新商品戦略を確実に成功させる「テスト・セールス」とは_後編(https://www.j-ioc.com/wp2024/column/9379/)」をお楽しみにしてください。