とことん「本質追求」コラム第305話 720mlのボトルティーを60万円で売る商売センス

 

 

 

『以前、講演会に参加した時からメルマガを読んでいます。あの時に話をしていた「高額のお茶を売る話」そのまんまの事例で出てきましたね。』

 

3年ほど前の講演会にご参加いただいた方から、面白い情報を頂きました。

 

720mlのワインボトルに入れた5000円のボトルティーが飛ぶように売れているという情報です。

 

どんな会社がどんな戦略・戦術を仕掛けているのか?

 

好奇心を駆り立てられて調べてみると最高クラスのボトルティーは、720mlでなんと648,000円もの値付け設定!

ベンチャー企業の「ロイヤルブルーティージャパン」という会社が手掛けていました。

 

何とも、破格な値段設定ですが、非常にマーケティングの上手い会社です。

 

この戦略・戦術の背景を2つの視点から考察して見たいと思います。

 

 

一つ目は「ブランドの確立」という視点です。

 

購買プロセスの基本である「AIDMA」から考察すれば理解しやすいと思いますが、購入に至る最初は「注意」(注目)からスタートします。

 

ただ、情報氾濫時代においては、この注意を引き付けることは至極困難を極めることでもあります。

特に「お茶」などは、完全なるコモディティ商品。

同じ価格帯の商品であれば、どのお茶を買っても、味も香りも大差がないことを消費者は知っているからです。

 

500mlのペットボトル1本160円のお茶だって「一番茶を贅沢に使っています!」とか、「石臼挽きの抹茶を入れてコクを出しています」と宣伝しているくらいですから、商品の特徴や製法などで、購買プロセスの最初の一歩である「注意」を引き付けるのは、不可能に近いこと。

 

でも、1本60万円のお茶なら、多くの人は「何それ?」と注意を払うはず。

そして、どんなお茶なのか?と関心を抱き、説明を聞きたく(読みたく)なるはずです。

もちろん、1本5000円のお茶でも「何それ?」と十分に注意を引き付けると思います。

 

実際に、私も先日高速道路のサービスエリアで「1本1080円」のお茶を見つけた時に、思わず写真に収めてしまいました。

お茶ボトル

 

でも、購買意欲をそそられるまでには至らない。

伊藤園さんには失礼ですが、まぁ所詮「おーいお茶」だしね…と思ってしまったためです。

 

注意の引き付けには成功したけど、関心には至らないという自分がいましたが、多くの人は、おおよそ同じ感覚を持つはずです。

 

実際、数分間現場に立って見ていましたが、商品の裏書きを読む人は、一人もいませんでした。

 

 

ただ、ロイヤルブルーティージャパン社は、思わずホームページを熟読してしまいました。見たことも聞いたこともない価格だったので、関心を持たざるを得なかったのです。

 

熟読すれば、必然的に興味を引き付けられます。

 

ホームページにこう書いてありました。

 

薬品・添加物不使用、3日間または7日間かけて水出し、非加熱濾過除菌。その全ての工程を手作業で行う。お茶の世界を知る人からはあり得ないと驚かれる挑戦とも言える製法は、全て本物の高級茶の「色、香、味」を正確に伝えるために他なりません。

 

 

  • 薬品、添加物不使用
  • 長時間かけての製造
  • ありえない挑戦…

 

冒険者や挑戦者を駆り立てるには、十分なコピーです。

 

 

そして、この冒険者や挑戦者たちが、「ギフトのネタ」や「SNSのネタ」として利用すれば、着実にロイヤルブルーティージャパン社の信念や商品へのこだわりが伝播するはずです。

 

そして、購入者が「飲みました。これは凄い!」と「製品レベル」で評価をしてくれれば、ブランドとして確立される。

 

冒険者や挑戦者の購買パターンを読み込み、普及させるロジックをしっかりと設計していることが、手に取るようにわかります。

 

こう分析すると、なかなか秀逸なマーケティングだと感じることが出来るのではないでしょうか。

 

あと、もう一つの秀逸さは「全体売上をあげる設計」をしているところです。

 

3000円から5000円までのプライスラインだけでなく、20万円、30万円、60万円と高額プライスラインを設けることで、「5000円を安く見せる戦略」を仕掛けていることです。

 

以前、都内屈指の高級フレンチの経営陣に伺ったのですが、同店では1本200万円、300万円のボトルが地下のワインセラーに眠っているそうです。

 

「どんな人が飲むのですか?」と伺うと、海外からそのワインを飲むためだけに飛行機で来ているとのこと。

 

すごい世界だ…。

 

と、アゴが外れそうになりましたが、実際に存在している「市場」であることは間違いありません。

 

この話を聞いた時に、1本3万円のワインがとても安く感じられました。

もちろん、錯覚ですが、その場で聞いていると「安い」と感じられるのです。

 

 

ロイヤルブルーティージャパン社のお茶も同じです。

さすがに60万円のお茶は買いませんでしたが、5000円クラスは即決で購入していました。

 

高単価商品を売る際の仕掛けとしては、王道ではありますが「お茶」で初めての試みです。

売れない時代にどう売るか。

価格競争で利益が取れにくい時代に、どう高収益企業を実現するか。

 

示唆に富んだ事例でした。

 

御社での高付加価値戦略に、「この概念」を取り込んでみませんか?