とことん「本質追求」コラム第539話 多様化するニーズに対応にする「マーケットマネージャー制」のあり方とは

 

「先週のコラムで提言されていた”マーケット・マネージャー制”という発想は大アリですね。具体的な進め方、運用方法の構想はあるのですか?」

 

先週のコラムを読んだクライアント企業の社長から、久しぶりに連絡がありました。

7年前に新規事業開発のプロジェクトに携わり、年商で1億近くの事業に育ったようですが、3年前から横ばい状態。

 

統計データから見る限り、少なくても10億円はいく事業ですが…

競合も参入し始め、明らかにパイを食われているとのこと。

それでも現場は、のほほんとしている。

社長からすると、なぜもっと頑張らないんだ!と、気に入らなかったらしいのですが…

 

先週のマーケットマネジャー制のコラムを読んで、社員がのほほんとしている原因は、兼任制であることに気づかされたようです。

 

そりゃ、あっちも責任を持て、こっちも責任を持てと言われたって、どちらかが等閑(なおざり)になるのは、仕方ありません。

兼任制で1億まで成長させ、単独事業として営業利益も出しているのですから、担当者の方だって、「まぁいいんじゃない。本業も忙しいし」と言う意識になるのは、自然なこと。

 

本気で3億、5億と成長を目指すなら、担当者が、その目標を達成してみたい!と思える「夢」とか「大義」が、どうしても必要になります。

 

その具体的なアプローチとして、マーケット・マネージャー制は、有効ですが…

残念ながら、冒頭の質問には即答できませんでした。

ジャスト・アイデアレベルで書いたコラムだったので、進め方とか運用方法などは、まだ煮詰めていなかったからです。

 

藤冨は組織論の専門家ではありませんが、それでも、活力ある組織と、元気の無い組織の現場を見てきた経験上、荒削りではありますが、「こうすれば良いのに…」と言うアプローチには気づいていました。

 

冒頭の社長のご質問にお答えすべく、本当に荒削りではありますが「マーケット・マネージャー制に取り組むとしたら…」と言う切り口で進め方と運用方法をざっくりと書いてみたいと思います。

 

進め方

・マーケットマネージャー制の定義を定め、社員の共通認識を作る

・権限と責任を明確にする

・報酬体系を整える

 

運用方法

・評価体制を確立する

・PDCAを回すルールを決定する

 

こんな感じになるのでは無いでしょうか?

 

この目次を元に少し掘り下げておきます。

 

進め方
・マーケットマネージャー制の定義を定め、社員の共通認識を作る

マーケットマネージャーとは、マーケットの欲望や満たされていないニーズを発見し、それに適した商品・サービスを提供することで、売り手・買い手ともにWinーWinの関係を築く組織をイメージしています。

プロダクトマネージャーは、商品・サービスの販売に拘りますが、マーケットマネージャーは、市場が受け入れるのであれば、自社での新商品開発や既存商品の改良だけなく、他のサービスも抱き合わせ販売などもしていきます。
ミッションは、単に売ることではなく、市場に受け入れられる商品・サービスを見つけ出し、適切に提供する体制を作ることに主眼をおいていきます。

 

・権限と責任を明確にする

市場と対話をして求めらえる商品サービスを提供するために必要な権限を与えます。

部署内での人事権、新商品開発、商品改良、他社とのアライアンスなどの権限も付与することがポイントになりそうです。

責任は、マーケットの欲求に対応した結果の「売上」「成長性」になります。

 

・報酬体系を整える

専門家ではないので、賃金体型のつくり方には言及できませんが、「成長性」を評価軸とするのが、最も適切になるでしょう。

売上目標だと「トップから押しつけ」と捉えられてしまい、働く社員のモチベーションが下がってしまう懸念がありますので…。

 

運用方法

・評価体制を確立する

上記の通り、成長性を評価軸にするのであれば、とてもシンプルな評価体制が作れます。

売上、粗利、営業利益の3つの軸で評価することができますから。

ただ、マネージャーは、結果だけで判断すれば良いですが、スタッフには結果に対して最も影響するタスクをKPIとして設定することが必要になります。

そのKPIもマネージャーに策定させる方が良いのですが…最初のとっかかりは面倒を見てあげた方が良さそうです。

 

・PDCAを回すルールを決定する

月次は、KPIを主軸においた評価。3ヶ月に一回は、売上・利益で経過観測などPDCAの申告をする仕組みも必要となります。

 

 ただし、マーケットの満たされない欲求や欲望に対応した市場創造型の仕事になると、学習の成長曲線と一緒で、初期の伸び率は横這いになる傾向があります。

 

 

 

短期ではなかなか結果が出にくいことを理解した上での、評価体制、PDCAのルールを策定することも、重要になるでしょう。

 

画一的な市場ニーズが消え失せ、多様化した社会に対応するためには「市場の対話」が必要不可欠です。

 

御社は、市場との対話ができる組織体制に意識を向けていますか?