とことん「本質追求」コラム第504話 社員が変わる「社員教育」の進め方とは

 

 

「人は社員教育では変わらない…。藤冨さんの主張には強く共感します。ただスキルアップのための教育ではなく、社員に”生きる意味とは?” ”なぜ我々は仕事をするのか?”という根源的な教育をしてはどうかな?って考えているんです。どう思いますか?」

 

 

先日、以前セミナーにご参加された社長から、久しぶりの連絡がありました。

なんでも年初からのコラムを読んでいて、2022年は腰を据えて、今後の経営方針をしっかりと見直すべきではないかと思ったとのこと。

既存事業を悪くても現状維持しながら、新規事業の立ち上げにも尽力したい…

そのためには「売る力」が必要であり、営業部隊の力量に頼らざるを得ない。

営業の士気を高めたいが、本人のやる気なしにスキルアップのための社内教育をしたところで、砂漠に水を撒くようなもの。

だからこそ、仕事をする上での”根っこ”に栄養を注ぐべきでは? とお考えになったようです。

 

藤冨は即答しました。

その企画には大賛成です!と。

 

人生が変わるターニングポイントは、人それぞれ。

 

人の発言がキッカケになるか。

誰かの生き様を知ったことがキッカケになったのか。

のめり込むように読んだ「本」がキッカケになったのか。

それとも両親や肉親など最愛なる人の死別がキッカケになったのか…。

 

キッカケやタイミングなど、本当に人それぞれ…様々です。

 

しかし、単なる研修がそのキッカケになるか…というと、やはり懐疑的。

それでも賛成したのは、一つのアイディアがあったからです。

 

そのアイディアとは、その教育機会をキッカケに、社長が先頭に立って変わることです。

 

冒頭の社長にも電話口でその助言をしました。

 

「社長、社員を変えようと思えば思うほど変わりませんよ。少なくても私だったら変わりません。間違いなく斜に構えます。でも、社長が同じ研修に出て、社長自らがどんどん変わっていったら…間違いなく”あれ?社長どうしたんだろ?って、気づきが出ます。」

 

そこで社長から改めて「あの研修を聞いて、俺はココが刺さった。仕事って人生そのものだからな!」って笑い飛ばされたら、間違いなく社員の心にも内的変化が起こり始めるはずです。

 

「人を変えるためには環境を変えることが一番」

これは、藤冨が揺るぎなく持っている考え方です。

 

営業という仕事は、経理や製造と異なり、スキル習得だけでは、仕事の成果には繋がりません。

 

ぶっちゃけ言うと、「努力」と「センス」がかなり多くの割合を占めるのです。

 

努力は、成果を出したい、出すぞ!と言う気迫から生まれる持続的な集中力です。

これは高い動機づけがないと維持できません。

 

また、センスと言う言葉を出すと身も蓋もないと言われますが、藤冨はセンスなんて努力次第で身につくものと考えています。

もちろん、ある世界でトップを目指すには、かなり先天的な物もあるでしょう。

それでも、まぁ一流の仲間入りだね、と他者が認めるレベルくらいまでは、努力でのし上がれる世界が多いのではないでしょうか。

少なくても、営業の世界であれば、努力でセンスをひき上げることは可能です。

 

一流の建築家である「安藤忠雄氏」は、少年時代かなりの暴れん坊だったそうです。

大卒の初任給が1万円の時代に、1回試合すれば4000円。ケンカしてお金もらえるのはええなと思って、ボクサーを目指し、なんと1ヶ月でプロライセンスを取得したほど。

しかし、1年ほど経ったころにファイティング原田氏の練習を間近で見て、こりゃ敵わん!と、プロボクサーで生きる道を瞬間的に諦めたらしいのです。

 

次に、少年の頃に家の増築で働いていた大工さんたちのイキイキと仕事をする姿を思い出し、建築家を志すも周りからは「大学も出ていないのに無理だ」と猛反対。

独学で猛勉強の末に「一流の建築家」となった経緯があります。

 

その下地は一つではないにせよ、ラジオで安藤忠雄氏本人が語っていたことがいまだに忘れられません。

 

2人暮らしで育ててくれた祖母から「(アルバイトで貯めた)あんなお金貯めてどうすんの? インフレの今のご時世は役に立たない。それよりも、いま自分が持っているお金を全部使って、頭の中の肥しにしなさい」と…

ちょっとニュアンスは違うかも知れないけど、そんなことを言われたらしいです。

 

まさに、迫害を受けながらも世界の頂点にのし上がっていったユダヤ民族の考え方と一緒。

インフレ時はお金の価値が下がる。

しかも資産は奪われるリスクがある。

ところが、自分の脳みそが失われる時は、死ぬときだけ。

だから、最も投資効率の高い、自己投資をすべきだ!と。

 

素晴らしい祖母からの助言に安藤忠雄氏も感銘を受けて、全財産を使ってヨーロッパへの旅に出かけたそうです。

そこで、出会った西洋の建築物をみて、氏が作りたい世界観の基盤が出来上がったと言っていました。

 

「多くの建築物を歩いて見るうち、建築とは、人間が集まって語り合う場をつくることだ」と。

 

その後、日本に戻り、コンクリートという無機質な素材を日本人の自然観や技術を生かした、どこにもない建築をつくりたい。コンクリートやガラスや鉄を自然と融合させたい。そして温かさや人間性や精神性を持ちうることを証明したい」と、自らの建築コンセプト・テーマを掲げ、世界にのし上がっていきました。

 

祖母と二人暮らしで、決して裕福な家庭で育っていない安藤忠雄氏が、建築家としての素養を幼少期から培っていたわけではありません。

どちらかというと喧嘩に明け暮れたボクサーの方が一流になる素養はあったかも知れないと個人的には思います。

 

それでも、生き生きと働く大人を見て、建築家の道を目指し、不屈の精神で勉強を続け、独学で一級建築士の試験を一発で突破した。

 

センスは後天的に身につけられる。

安藤忠雄氏のケースを見ても、つくづくそう感じます。

営業センスは、作業ではなく、コミュニケーションが仕事の本質のため、相手によって仕事の成果が変わってしまう難しい仕事です。

 

しかし、人間を知りたい。もっと相手が喜ぶポイントを知りたい。その純粋な気持ちがあれば、営業センスは必ず上達します。

 

その動機づけを得るには、「哲学的な刺激を受ける場を共有し、社長自らが変わること」が最も確実。

 

そうすれば、自然と社員も「人間への興味が湧き、他者への貢献意欲も出る」ものです。

 

大事なことは、社長が変わったキッカケを共有すること。

そのキッカケを振り返り、自らも変わろう!と思う空気感(環境)を作ることです。

 

今、アメリカは記録的なインフレに見舞われています。

お金の価値が下がる今だからこそ、組織的な自己投資をして次なるチャンスに活かす土壌を作ることが賢明です。

 

御社は、組織的な自己投資計画を企てていますか?