とことん「本質追求」コラム第479話 伝統的な営業スタイルは終焉するのか?

 

「藤冨さんの言うこともわかりますが、営業はやはり”足”で稼ぐことが大事ですよね。ネットからの集客に頼るとか、営業マンがその思考回路に入ったらダメだと思うのですよ」

 

先週のコラム「第478話 時代変化に合わせて売上を引き上げる俯瞰思考のススメ」(https://www.j-ioc.com/wp2024/column/9873/)を読んだ知人経営者から異議が申し立てられました。

 

いえいえ、私は足で稼ぐことを否定しているわけではありません。

私も「営業の管理体質」「商材」によっては、いまだに「飛び込み営業」を推奨しています。

 

前提条件が変われば、主張や判断は変わります。

 

飛び込み営業が有効なその前提条件とは…

 

営業マネージャーが日々営業マンの行動をチェックし、Plan-Do-Seeを回せること。

販売する商材が「提案型」であることと、ブランドを変えても抵抗の少ないスイッチしやすい商品であることです。

 

ちなみに「全くの新商品」であれば、飛び込み営業は絶対にオススメ。

 

ローマの靴商人が、アフリカに靴を売りに行った時に、アフリカ人はまだ誰も靴を履いていなかった。

その時、A営業マンは、本社に電話をかけ「アフリカ人は全員”裸足”です。誰も靴を履いていないから、この国では売れない」と報告をしました。

ところがB営業マンは、「誰も靴を履いていません。この国なら大量に売れます!」とポジティブな報告をしました。

 

正解は、もちろんB営業マンの着想です。

しかし、B営業マンが、イタリア本国と同じような”売り方”でアフリカ人に靴を売ろうしても、売れるまでに長い年月がかかることは、想像に容易いです。

 

理由は、アフリカ人が靴を履きたい!と思う動機が、イタリア人の動機と異なる可能性が高いためです。

 

この時に有効なのが、「飛び込み営業」なのです。

いえ、厳密にいうと「飛び込み営業」というよりは、「ヒアリング」と言った方が適切かも知れません。

 

靴を履いていない人に、なぜ靴を履かないのか? と質問しても、靴を履くメリットを感じていないのですから、聞いても無駄。

靴が持つ機能的価値を、アフリカ人はどのような「メリット」として享受するだろうか? その仮説をぶつけるヒアリングをするのです。

 

・足の怪我から守ること

・早く走ることができること

・険しい岩場でも歩くことが可能になること

・個性の表現やステイタス性によって、異性からモテること

 

などなど、アフリカ人が「それ良いね!」と反応するポイントを探るには「飛び込み営業」は持ってこいなのです。

 

このポイントが絞れたら、マーケティングや営業活動の方針が、決定できます。

逆にいうと、的外れなままマーケティング や営業活動を展開するから、売れるまでに長い年月がかかってしまうのです。

 

話が「飛び込み営業推奨派」に流れてしまいましたが、「飛び込みが適しているか否か?」は、商材によることが大きいのです。

 

商品特性や顧客特性を吟味しないと判断はできませんが、大方の商品の場合は、飛び込み営業をする人件費投入コストとリターン(売上)が見合うことは少ないはずです。

 

これは「水の低きに就く如し」

時代は、自然の成り行きで進み、人間にはその自然の流れは止められません。

 

・時間効率を大事にする人が増えて、飛び込みなどの不要不急な会話を毛嫌いする人が増えてきたこと

・インターネットという情報源が浸透したために、営業マンからの情報は不要になってきたこと

・ど根性が必要な伝統的な営業スタイルを精神的に受け付けられない若者が増えてきたこと

・働き方改革などで、営業管理者も長時間労働がしにくくなり、全営業マンに的確なマネジメントがしにくくなっていること

 

など、テレアポや飛び込み営業などの伝統的な営業活動がしにくくなってきているのは、目を背けることができない事実なのです。

 

前週に書いた「第478話 時代変化に合わせて売上を引き上げる俯瞰思考のススメ」はそのような背景に基づいて主張しています。

 

今や伝統的な営業活動に縛られることなく、営業をクリエィティブする必要があるのです。

自分たちの商材や市場特性、さらにはマネジメントを含めた社内体制の全てを考慮して、ゼロから営業を設計する必要があります。

 

個人的な「ホンネ」を言えば、伝統的な営業活動こそ、真の営業であると感じてはいます。

見ず知らずの初対面の人の心を開くためには「何が必要か?」を動きながら考えることは、クリエイティブ能力を磨く!と感じているためです。

 

それでも、「働き方改革」によって労働時間が濃密化され、営業マンの無駄話を聞く時間がなくなり、営業マンも根性が必要な働き方を避けるようになってきている。

こうした時代の流れに逆らうには、相当の知恵と体力が必要です。

 

文科省がゆとり教育で失敗した通り、いま産業界が受け入れざるを得なくなっている「働き方改革」も間違いなく失敗に終わるのは目に見えています。

「能力、忍耐力、協調性の低下」「視野狭窄」「自主性や責任感の欠如」

など、残念ながら人間は弱体化する方向で進んでいくでしょう。

 

人間は社会的な動物であり、社会環境に「思考回路も行動基準」も大きく影響してしまいます。

 

諦めではありませんが、現実を現実として、真正面から受け止めて、それでも何とかするのが、経営者や経営幹部の役目であるはずです。

 

激変する今の環境下、あらゆる前提条件を脳みそにぶち込んで、我が社の売り上げを上げるには何が必要か…

 

ゼロから自社なりの営業政策を組み立てていくことが大事です。

 

御社は、時代の流れに順行した方針を打ち出していますか?