『いま洗浄力が弱いボディシャンプーが売れているらしいのですよ。巣ごもり生活で身体が汚れないから、洗浄力が強く肌に負担をかけるボディシャンプーが敬遠されているのでしょうね』
先日、聞いた興味深い話です。
何が興味深いか…それは時代の変化によって売れるものが変わることを分かりやすく示唆しているためです。
時代によって売れるものが変わる…。
アタリマエの様に聞こえるかも知れません。
しかし頭では分かっていても、実際に企画に落とし込むことは容易ではありません。
企画やアイデアを絞りだすためには、トレーニングが必要です。
トレーニングですから、日々の習慣が大事。
売れているものをウォッチして、なぜ売れているのか?
時代の変化や消費欲求の根源を探ることがポイントです。
まず、「売れている商品の発見」からスタートします。
次に売れている商品が「支持されている特徴」をネットの口コミを見たり、店頭で店員さんに聞き出したりします。
次に、その特徴は「顧客にとってどの様なメリット」があるのか?を推測または口コミ等から浮き彫りにしていきます。
そして、「メリットを享受したい背景や目的」を考察し、「欲求の根源」を想定してみるのです。
流れをまとめると…
「売れている商品の発見」→「支持されている特徴」→「顧客メリット」→「メリットを享受したい背景や目的」→「欲求の根源」
の順番で、売れている理由や欲求の根源を整理してみましょう。
例えば、上記のボディシャンプーを例題に「売れている理由や欲求の根源」を整理してみます。
アミノ酸系シャンプーが売れている→低刺激性→肌に負担をかけない→【メリットを享受したい背景】外に出歩かないから洗浄力が弱くても十分。【メリットを享受したい目的】(中高年:老化を防止、若年層:綺麗に見られたい)=褒められたい→自己承認欲求の充足
この様な流れになるでしょう。
この一連の推測をするトレーニングは「帰納法推論力」を高めてくれます。
「帰納法推論力」とは、様々な事実や事例から導き出される傾向をまとめ上げて、結論を出していく推論力です。
この結論をビジネス仲間などと一緒にディスカッションすると、さらに効果的。
他の人の推論を聞くことは、思考の幅を広げてくれるからです。
「そんな考え方もあったのかー」と素直に聞くことが大事。
世の中には、様々な人がいますから、多様性を感じることで、企画力の質もグンとアップします。
もう一つ、時代の流れを感じ取るわかりやすい事例を出してみましょう。
1980年代の後半からバブル崩壊の1991年前後までの好景気の時代には、高級品や住宅が飛ぶように売れて、人々の自己顕示欲を満たしました。
私が高校生の頃、バブル景気のちょうど入り口に入っていましたが、当時は高校生でも「ブランド品のスーツ」に身を包んだり、20万円近くもする米国空軍が着るジャンパーを羽織っていました。
大人たちは、ブランドスーツに着込んでディスコで夜な夜な遊びまくる人、レストランで高級酒を煽り飲む人、ブランド品を買い漁る人、株式投資で成功したタネ銭でマンションや土地を購入する一般庶民まで出始め、都心では、普通のサラリーマンでは家を買えないほど地価が高騰するなど、異常な消費社会が台頭していました。
『経済が著しく成長するなかで、私はさらに成長(成功)した。
だから、高額商品を購入できる…。』
いちいち自慢しなくても、その主張ができる道具として一役を買っていたのでしょう。
高級ブランド品や高騰した株式証券や土地などは、矮小な人間を秀でた人間に変える格好の消費ツールになっていたのです。
時代は変わり、30年近くもパッとしない経済環境の中で育ってきた20代、30代の若者たちの消費意欲は、真逆の変化が顕在化しています。
自動車の保有率は、この15年程度で15%以上も低下し、ファッションや食料品(調理食品、外食、素材となる食料)も半減近くまで消費金額が低迷しています。
若者消費意欲は全体的に低迷していますが…
それでも「スポーツ観戦・映画・コンサート鑑賞」や「交際(飲食を含む。)」などに、お金を掛けていると回答した人の割合は、20歳代で45.2%と、全体の29.0%を大きく上回っており、人とのつながりに軸を置いた「コト消費」を重視している傾向が伺われています。
景気の上昇期が続いた時代は、「外向き思考」になり、景気低迷期においては「内向き思考」になっていることが顕著ですが、その背景になっているのは「未来への不安」からくる「自己保身」「信用できる人とのつながり」になります。
SNSで仲間が繋がるのは、ある意味必然だったわけです。
決してSNSが台頭したから「つながり消費」ができたわけではありません。
「つながり」を消費者が求めていたからSNSが台頭したのです。
ここを強く意識しておくと、消費者が欲しているものが見えてくるはずです。
消費者の購買欲求の根源は、満足(快)の追求と不(不満、不足、不自由など)の回避です。
しかし、その消費者欲求の根元である「満足」や「不」の質と量は、時代や社会の空気感によって、強く影響を受けています。
その関係性を常に意識しながら、アンテナを立てておくと、自社の次なる打ち手が見えてくるかも知れません。
なぜ、その商品が売れているのか?
自分なりの仮説想定習慣をはじめてみませんか?