とことん「本質追求」コラム第466話 先行きが見えない時の3つの経営判断_後篇

 

今週のコラムは、第465話 先行きが見えない時の3つの経営判断_前篇https://www.j-ioc.com/wp2024/column/8570/の続きをお伝えします。

 

昨年から世界をガラッと変えた「コロナ」の影響で、私たちの経営環境も激変しました。

 

・外出自粛などの社会的な行動抑制

・オンライン・コミュニケーションの体験機会を通じた人々の思考・行動の変容

・激変した社会における、所得のさらなる二極化

 

あらゆる事業・商売に、良きにせよ、悪きにせよ大きな影響を与え続けることは、間違いありません。

 

既存のビジネスモデルが成り立たない業界も多数あり、藤冨のところにも悲痛な相談が持ち込まれている状況…。

 

そのような先行きが見えない時の経営判断は3つしかありません。

  1. 新規事業を起こす
  2. 既存事業の売上拡大策を実行する
  3. 事業を撤退する

の3つです。

 

前回は、1番まで解説しましたので、本号は「2. 既存事業の売上拡大策を実行」「3. 事業を撤退する」についてお伝えしたいと思います。

 

2.の既存事業に危機意識がある場合、客観的に全体像を把握する必要があります。

 

なぜ既存事業が縮小傾向にあるのか? この本質を正しく捉えることができなければ、的確な対策が取れるはずがないからです。

 

既存事業が縮小傾向にある場合、主に3つの視点から考察してください。

 

一つ目は、代替商品が、顧客ニーズを満たし始めたケースです。

馬が車に変わり、着物が洋服に変わり、ガリ版印刷がコピー機に変わったように、これまでの常識を覆す、新たな代替品が現れた場合、事業の縮小は避けては通れません。

既存商品の不満や不足などの「不」を解決しているために、消費者は好き好んで「不」を受け入れたくないからです。

フィルム式カメラから、デジタルカメラに変わり、既存事業(フィルム事業)が限りなくゼロに近づく中、富士フィルム社が「化粧品事業」「医療事業」「デジタル複合機事業」などなど、大胆な事業転換を行ったように、既存事業のコア技術やサービスを、他分野で生かす戦略が求められます。

 

座して死を待つ覚悟があるのなら、ライバルが次々と撤退する中、一人だけ生き残りを探る道もあるかも知れません。

明治時代には、一家に必ずあった着物の収納ケース「つづら」も、着物を着なくなり、かつ手軽な収納ケースがたくさんある中、市場は限りなくゼロに近づきました。

しかし、完全なゼロではありません。

こだわりを持つ顧客が生き残っていれば、僅かながらの市場は残ります。

ネットで検索する限り「つづら」を製造しているのは、東京・人形町にある「岩井つづら店」のみです。

その僅かながらの市場であっても、ネット時代になった今、需要があれば、受注は一極集中してきます。

他分野に進出するか、それとも冷飯を食いながらでも生き残るか…

その選択は、社長の想い次第になるでしょう。

 

二つ目の既存事業の縮小理由は、競争相手に負けてきたケースです。

自社商品の抱える「問題点」を突いた直接競合商品の登場は、意外に厄介です。

・新技術・素材などによる問題解決

・生産方式改革による低価格戦略

・陳腐化を意識したデザイン戦略

など、自社商品を時代遅れにするような競合の存在が出現した際には、抜本的な対策が必要です。

過去の成功体験にしがみつかず、ゼロから「自社商品の見直し」をしなければ、市場からそっぽを向かれてしまいます。

 

自社商品の方が絶対に優れているはずだ!と思い込むのは、必要なことです。

その思い込みのエネルギーが事業の推進力になるからです。

でも、正しいのはどんな場合でも、「顧客の判断」です。

その顧客の判断を真摯に見つめ、改革が必要であれば、大胆にゼロリセットをすることが必要です。

 

BtoC商品であれば、これまで数百万円かかっていた市場調査も、数万円でできる時代です。

藤冨がよく行っている方法を使えば、0が2桁も取れる金額で、定量調査ができます。

 

しっかりと「市場の声」「顧客の声」「非顧客の声」を拾って、競合と「勝ち戦」ができる土俵を見つけてください。

 

最後に三つ目の既存事業の縮小理由は、市場の構造的変化です。

主にBtoBtoCのケースに見られる現象ですが、クライアント企業の法人が、産業構造の変化や需要減退により、業界再編を進めているケースです。

業界が縮小傾向にある業界で、多数の売り手が存在する中、競争力を強めようと、リーダー格企業が「事業買収」に走り、寡占化を狙うような「構造的変化」が訪れている場合です。

これまで、多数の売り手相手に商売をしていたから、安定経営が成り立っていたのに、大手が独占する市場に変わってしまったら、経営の安定化が危ぶまれてしまいます。

 

いずれにしても、既存事業の売上拡大策を実行するには、「新分野の進出」「新市場の開拓」「既存商品の抜本的見直し」のいずれかしかありません。

まずは、既存事業に危機意識を持っている原因を特定し、いつ、何を、どのように実施するかを決定する必要があります。

 

最初の一歩が肝心です。

既存事業がなぜ縮小するのか(または縮小する恐れがあるのか)

この原因の特定に全神経を注ぐことが大切です。

 

 

先行きが見えない時の3つの経営判断における最後の選択である 「 3. 事業を撤退する」は、決して恥ずかしいことではありません。

 

「孫子の兵法」でも、「負け戦はするな!」と説いています。

勝てる要素が揃っている時は必死に戦い、勝てる要素がなければ退却する。

 

「負ける戦い」でも、戦をすることにリーダーが固持していると、社員の心は離れ、士気は下がるばかりです。

当たり前です。

社員に「怪我を負っても、死んでも戦ってこい!」と指揮するわけですから。

退却や戦いの回避を選択することは卑怯だと言われがちですが、下手に戦わないことも立派な戦略です。

残った兵士や軍資金(リソース)を元手に、早急な「別な活路」を見出す方が賢明なのは、冷静に戦局を見極めればわかること。

 

アフターコロナの世界は、これまでの経営環境を激変させます。

御社は、次なる時代に対して、どのような経営判断を行いますか?