昨日の日経MJ新聞で、大衆薬「低下」を崩す風穴!という記事が目に飛込みました。
その主因はネット販売。
ネット販売は、価格比較が容易なので消費者の立場にとってみれば合理的な買い物ができ、とても便利です。
価格比較が容易な分、価格競争が激化し、価格暴落の波は止められません。
消費者としての立場ではラッキーですが…
コンサルタントとしての立場で見ると危機感を覚えざるを得ません。
実は、この動きは前々から気になっていて、クライアントさんには、個別に注意を呼びかけていました。
販売代理店を介して売上をたてているメーカーは特に注意が必要です。
独占禁止法に抵触しないか…リーガルチェックは必要ですが「価格下落を防ぐ策を織り込んだ代理店契約の見直し」は、早急に行うべきです。
特に「代理店毎に仕切(販売店への販売単価)」が異なる企業は、気をつけなければなりません。
A社の仕切りが1万円なのに、B社は1万2千円で卸しているとしましょう。
仮に、A社がネット販売で1万1千円の単価で販売してしまったら…
B社は間違いなくクレームをつけてきます。
メーカーから買うより競合他社のA社から買った方が得だなんて、有り得ない話だからです。
販売代理店同士がネット上で価格を競い合い、力のある販売代理店はより仕切りを下げてほしいと交渉してきます。
有力販売代理店を失っては、売上ガタ落ちしてしまう恐怖からメーカーは交渉のテーブルに乗り、価格を下げていってしまいます。
すると、さらにネット上での価格競争が白熱し、負のスパイラルへと陥っていくわけです。
今までは、代理店同士の販売価格がわかりにくかったので、このような問題は浮き彫りにならなかったのですが、ネット社会は全てをオープンにしてしまいます。
以前、アイロンメーカーさんが、せっかくパブリシティー(新聞掲載)に成功したのに、私がネットで買おうと検索すると、新聞に掲載していた定価から、およそ半値以下まで下落していたことがありました。
メーカーも意図していない価格暴落で落胆していました。
これは、単に利益の低減と容易く片付けてはいけません。
価格の下落は、競争力まで奪ってしまうのです。
中小企業が作ったこだわりのアイロンの値付けを2万円として販売します。
大手家電店でアイロンの陳列棚をみた消費者は、3000円~の商品ラインナップを見て、アイロンの相場感をインプットしていきます。
高くても、1万円。
そこに、2万円のアイロンが目に飛び込んできます。
えっ2万円??? と価格を見た瞬間に違和感を覚えます。
そして、なぜそのアイロンだけ高いのか…知りたくなるのです。
高い理由を聞いて、そのこだわり理由が自分にとって魅力的であれば、強い興味が惹きつけられます。
ここで、
- アイロンにかける時間
- クリーニング店に通うコストと時間がセーブできること
- 高級素材でも安心して自宅でメンテナンスできること
など、アイロンにたいしての新たな価値基準が消費者のアタマに想起できれば「欲しい」という感情が沸き起こり、購入へと向かっていくわけです。
商品の差別化に知恵を絞り、その違いを広告やセールスプロモーション、営業マンの説明などで、消費者に訴えかけても、「違いの一言」に、インパクトを与えられなければ、注意喚起さえ出来ません。
しかし、競合他社と比較して、突拍子もない単価が設定されていれば「なぜ、そんなに高いのだ?」と気になります。
心理学的には、これを「認知的不協和」と言います。
心理的にバランスを崩した状態では気持ちが悪いから、バランスを保とうと高い理由が知りたくなるのです。
そこから、じっくりと説明するほうが、圧倒的に購入確率はあがるわけなのです。
価格の差別化は、世界で最もシンプルかつ強烈な差別化です。
この大事な販売心理プロセスを、代理店の暴走で失ってしまうのは、目先の利益を失うよりも痛手となります。
取扱商品や、販売体制によって、代理店政策は変わりますが、価格が暴落しない仕組みを同時に築くことを忘れてはなりません。
また、販売代理店に過度に依存しない売上向上策も同時に練ることも忘れてはなりません。
企業は、販売という自らの命を守る手段は、自らで築きあげなければならないのです。
追伸
スピーカー…
827万円って聞いて違和感を覚えない人はいないハズです(笑) ⇒ http://goo.gl/h87wh
これが、音質に強いこだわりを持つ人なら…気になって気になって仕方ないでしょう。