先日珍しく朝ごはんの食べながらテレビを見ていたのですが…
「たったの20分で総額3億円の社債が完売した水族館…」というテロップに釘付け!
社債の発行元は、人口13万人強の山形県鶴岡市にある1930年に設立された「加茂水族館」 映しだされた映像は、見るからにボロい水族館。
なぜこんな古臭い水族館の社債に一般投資家が飛びついたのか…
不思議でたまらなく思わず食い入るようにTVに引き込まれてしまいました。
同水族館は、周りに大型の水族館がオープンする度に客足が遠のき、ピーク時の半分まで売上が激減。
目新しい企画を打ち出さないと客足を戻すことができないとアフリカの魚ばかりを集めた展示会を開く等、様々な企画を実施するものの、まったく業績は上向かず…。
最後の手段と当時全国の水族館で人気を博していた「ラッコ」を導入するも客足が伸びるどころか、餌代だけが伸びる始末。
ダメな時は、何をやっても上手くいかないもので、館長は一時ブルーシートの家に暮らすことまで覚悟したそうな。
泣きっ面に蜂とは、よく言ったもので『もうコレで最後…天が見放すはずがない』と覚悟を決めても、さらに二番底があるというのは、意外によくある事です。
いくら覚悟を決めても、市場の欲求に焦点が当たっていない限り絶対に業績は浮上しません。
やる気の問題でも、能力の問題でも、行動量の問題でもないのです。
顧客の欲求に突き刺さった商品やサービスのみが自社の業績を押し上げてくれるのです。
あるとき、館長はホームレスを覚悟しながらも館内を歩いていたら、ある水槽の前だけ人が足を止めるポイントに目に飛び込んできました。
その水槽は「くらげ」。
しかも、意図的に飼育していたのではなく、たまたまサンゴと一緒に紛れ込んだものでした。
「こんなものが…」と不思議に思いながらも「くらげ」を展示すると、お客さんの反応も上々。
しかし、第二の壁が館長の前に立ちはだかりました。
「くらげ」の寿命は、なんと4ヶ月しかなかったのです。
仕入れルートが確保できればまだしも、それも叶わず結局自営で「繁殖」を決意。
これが成功し加茂水族館は「くらげ」を安定して展示できる環境が整ったのです。
そんな中、発光生物の研究をしていた下村 脩教授がオワンクラゲから緑色蛍光タンパク質を発見してノーベル化学賞を受賞。
養殖していた季節はずれのオワンクラゲが、全国で唯一見られる水族館として来場者も増加。
さらに、世界一のクラゲを展示している水族館としてギネスブックにも認定されたのです。
来場者が半減まで落ち込んでからの復活劇は、「くらげ」による一点突破。
同業者も「繁殖技術」が無い中では追随も出来ず、ただただ指を加えているだけでしょう。
現在は、来場者もピーク時なみに復活。
この勢いを逃すまいと、来年6月に向けて全面リニューアルに向けて市場から3億円を調達すべく社債を発行し、たった20分で完売…
と言うのですから、脱帽ものです。
周りが売れているからと「ラッコ」を導入してもダメだったように、多くの企業でも「売れているから…」という理由で安易にモノマネをする傾向を良く見かけますが、それが通用していたのでは、市場全体が成長しているときだけ。
市場が成熟している時には、誰もやっていない事に焦点を当てて差別化をし、自ら市場を作り上げる覚悟と努力が必要なのです。
今回の加茂水族館の事例を目の当たりにして、改めて心に刻みました。 勇気をもって、誰よりも早く、人と違ったことをする大切さを。
クライアントさんへの支援方針だけではなく、自らも体現していきます!