とことん「本質追求」コラム第50話 市場シェアを正確に調べて下さい!って、何のために?

「御社の現状を把握したいので対象市場のエンドユーザーに1件、1件電話をしてシェアを調べておいて下さい。2ヶ月後までには出来ますか?では、2ヶ月後にまた参ります」

先日ご相談頂いた企業の社長さんから話を聞いていて、開いた口がふさがりませんでした。 

「いま顧問契約をしているコンサルタントから市場シェアを調べろ!と言われているのですが、これがまた大変でして…」と、言うのです。

で…何の目的があってシェアを調べるのですか? と伺うと 

「えぇ、現状を把握しないと…という事だと思います。先生がそう言うので…」

「いえいえ、現状を把握してどんな判断をしたいのでしょうか?」

と突っ込んで聞きたい衝動を抑えて、いま抱えている問題点を聞きました。 

すると、単純に「最近売上が落ちているので打開策を探るためです」という何とも漠然とした「問題意識」。 

なるほど…これだから●社のコンサルタントはシェアを聞き出そうとしたのか…と無理矢理、自分を納得させようとしたのですが…

彼はなんの目的があって膨大な時間とコストがかかるシェア計測なんてさせているのでしょうか?

ときどき口も聞きたくないようなコンサルタントが「時間稼ぎのネタ話」をしていますが、もしかしてシェア計測も時間稼ぎ??? 

とか、

もしかして教科書通りの戦略フレームワークに当てはめて、答えを導きだそうとしている??? 

など、様々な想像をしましたが、いずれの想定でも、この話を聞いていてハラワタが煮えくり返る思いをしてしまいました。 

ご相談にきた社長さんは、内部留保も薄く限られた時間と費用の中で戦わなければならない状況です。 

一刻もはやく有効な「仮説」を市場にぶつけて「検証」する必要性があったのです。 
なのに悠長に市場シェアを計測させるなんて… 

悪意があってやっているなら問題外ですが、悪意がなくても大問題です。 

コンサルタントは知識や知恵という商売道具を使って、支援先企業の問題を解決するのが仕事。 

問題解決に繋がらない仕事をさせるのは、悪代官の戯言より始末が悪い。 

そもそも、シェアを計測する目的は、競争環境における自社の立ち位置を明確にし、そのポジションにそった戦略を採用することです。

大企業が膨大な整備投資の意思決定をも含む戦略策定の基礎資料とするのならば、正確なシェア計測も納得できます。 

でも、相談主の業界は、目立った大手はおらず中小企業が乱立している「多占市場」です。

これは誰が見てもわかる市場の状態です。

多占市場で、NO1の企業が何処で、NO2がどこで…なんて掌握したところで大した意味はありません。

だいたい、今の市場競争というのは同一業種の中で計測できるほど甘くはありません。 

カメラは、携帯に市場を取られたし、スマホは、PC市場と携帯市場とカメラ市場を取った。
SNSは、雑誌市場や本の市場を取っているし、外食産業はレジャー産業やコンビニから市場を奪われているのです。

顧客から見た時には、同じ効用を得られるのであれば、どんな業種であろうとも、競争相手になる時代なのです。 

そんな時代に「同一業種内でのシャア計測」なんてハッキリ言って無意味だし、時間の無駄。 

数の論理で見るのでなく、自社の象徴的なモデルユーザーとなりうる顧客(見込客)に訪問し、今置かれている現状や理想とする姿を10件でも20件でもヒアリング調査をしたほうが、よほど事業化のアイディアは湧きでてくるものなのです。 

どんな時にでも「それをやるゴールって何ですか?」と自問自答することが大切。 

もちろんご相談主にも、ちょっとしたアドバイスをさせて頂きました。
「先生、シェアの割合が明確になったらどんな戦略代替案をお持ちですの?」と、聞いてもらうようにしたのですが…

ちょっと嫌味でしたかね。 

仮説のない調査は、ヌカに釘を打っているようなもの…そういう仕事は昔からどうも突っ込みを入れたくなる体質のようです。