とことん「本質追求」コラム第49話 競争条件が勝敗を決める…誰と、何処で、どう戦いますか?

「日比谷花壇 vs イオン?」 

日比谷花壇が『葬儀ビジネス(自宅葬を一括請け負い)』の市場に参入した!という新聞記事が目に止まり「これは面白い!」と私の触覚がピクッと動きました。

花を売るとき、もっとも客単価の高い売り先はどこか…と発想を展開していったら、確かに葬儀はその一つだからです。 

生花ビジネスの競争から脱出して、新たな市場を開拓する…。 
個人的には、大好きなチャレンジング精神です!

しかしインターネットで葬儀市場をサクッと調べたら、面白い!の「ム、ムッ!」から懐疑的な「ム、ムッ?」に印象が変わっていきました。

誰もが知る通り、今の日本は高齢化社会。 
葬儀ビジネスは、成長市場の一つです。 
異業種からも、それぞれの強みを持った企業がワンサカ市場参入しています。

その中でも一社、目に止まったのが「イオン」です。

「イオン」のホームページと、「日比谷花壇」のホームページ。

じっくりと観察していたら、私のアタマの中に「ポジショニングマップ」を作る脳みそがむくむくと芽生えてきました。
(ポジショニングマップとは、参入市場において、競合から自社を差別化し、優位な地位を占めるための考え方です)

葬儀…しかも「自宅葬」に顧客が求めることは何だろうか…と。 

イオンのサイトを見ると、自社のブランドイメージがそのまましっかりと表現されています。 
「価格も品質もイオン基準」と。

「自宅葬」だから”費用が安い””明朗会計”というニーズは根強いのは分かります。

しかし、日比谷花壇は、どこで強みを発揮しようとしているのか… 残念ながらホームページ上からは読み取ることはできません。 

日比谷花壇は、高級生花店、最高品質、洗練されたイメージがあります。 

芸術的な「花葬壇」や、故人の職業や生き様をイメージした「花葬壇」のデザインを全面に打ち出しているのなら、わかるのですが… 

なにせ、自宅葬です。 
そこにハイパフォーマンスを求める市場が見えてこないわけです。

ハイパフォーマンを求める「社葬」や「セレモニーホールでの葬儀」なら分かります。

当然ながら「日比谷花壇」も社葬市場には進出していました。

社長就任や、本社移転、経営者層の誕生日まで、高級な生花プレゼントの需要対応で顧客リストはしっかりと蓄えていますし、十分な資金力がある顧客基盤なので、デザイン性のある「花祭壇」のニーズ対応は得意中の得意の分野でしょう。

ちょっとイメージしただけでも、法人市場の開拓は「日比谷花壇」にとって優位に働くのがわかります。

しかし個人市場でかつ「自宅葬市場」はどうでしょう?

イオンのホームページを見ていて、彼らと真っ向勝負するのは相当苦しい戦いをするだろうな…と心配になりました。

イオンは、自社で葬儀を手掛けているのではなく、全国各地の地元葬儀店を特約店化した「フランチャイズ」のようなビジネスモデルで運営しています。

いま、ネットスーパーが急成長しており、買い物に不自由している老人家庭のリストをイオンは大量に抱え込むことができます。 

つまりイオンは、「自宅葬」の見込客リストを全国各地で保有できる(している?)わけです。 

人件費や設備費用などの固定費を抱え込まず、全て変動費化した上で「イオン」というブランドイメージと顧客リストをフル活用して、成長市場に踊り出る。 
こりゃ敵わん…と見るのが普通です。 

さぁ、これに真逆のブランドイメージを持った「日比谷花壇」はどう対抗するのか?
ニッチ市場を探り当てて、深堀りできるのか? 
今後の「日比谷花壇」の葬儀ビジネスの動きから目が離せません。 

※個人的には「廉価市場」はイオンに任せて、「高級葬儀市場(法人や経営者者層)」に経営資源を全力投入するべきだと判断していますが…