先日、セミナーに参加された社長から、一度相談に乗って欲しい…と言われ、半日たっぷりと時間をとって、訪問してきました。
ところが、ご相談依頼をされた社長は、敏腕家であり販売戦略には全く隙がない。
販路開拓も伊勢丹を筆頭に超一流所を抑え、パブリシティーでは芸能界に疎い私でもスグに分かる超有名女優が同社の商品をアピール。
通販でも、リスティング広告を駆使して積極展開をしていました。
そんな中、なぜご依頼をされたのだろうか、と不思議に思っていたのですが…
それでも社長の悩みは深かったのでしょう。
広告やパブリシティーを積極的に投下すれば売上は上がるが、日が経つと売上も下がる。
日に日に、宣伝効果の効き目も限定的となり、このままで行くと、行先も不安。
というものでした。
商品レベルに問題があるのかと、最終消費者からの使用アンケートを拝見すると、これが予想とは逆に、すこぶる良いものばかり。
アンケートを書くと商品券をプレゼントされるので、「良い感想ばかり集まりやすい」と言う現実もありましたが、それを差し引いたとしても、良い評価を受けていることが文面からもにじみ出ていました。
商品レベルも、販売戦略でも、一見抜け目がないものでした。
しかし、話を聞くにつれ、だんだんと深刻な状況が理解出来るようになってきたのです。
顧客の商品の使用評価はすこぶる高いのですが、適正価格を聞くと、3割も安い金額を突き付けられていたのです。
使用感は良くても、本当に伝えたい価値が伝わっていない。
いや伝わっていないと言うより「提供すべき価値」が深堀りされていなく、商品レベルにも落とし込まれていなかったのです。
つまり、イメージで購入され、イメージで評価されていたのです。 「高い」という評価が出ても不思議ではない現実。
そういった状況下、社長も、値段を落として販売していこうか…と真剣に考えていました。
でも、価格を考えるのは最後の最後の事です…と断固として提言させてもらいました。
まずは、提供する価値と、顧客がそれを受け取った時の利益を明確にしなければ、顧客が払う妥当な対価というものが見えて来ません。
そもそも「価格」とは、モノの価値を金額で表したもの。と定義されています。
従って、顧客にとっての「価値」を徹底的に明確にしていかないと、本来「価格」の議論をすることは出来ないのです。
そこで自社商品の特徴の洗い出しと共に競合の戦略を分析することにしました。
特許庁のデータベースにアクセスし、その業界でどんなアイディアが叩きだされているのか…チェックしてみたのです。
蓋をあけてみてビックリ。なんと7,000以上もの特許と実用新案、200件近くの商標が出願、登録されていたのです。
限られた時間しかないので、全てをチェックするわけには行かなかったのですが、特徴的なものを拾い集めて、吟味していると、また業界特有の傾向が読み取れてきました。
特許、実用新案のレベルでは、非常に「鋭いウリ」を持っている商品でも、市場に出回ると曖昧でピンボケしたセールスポイントに変換されている商品がほとんどだったのです。
これは、売り急ぎでいる証拠。
誰でも良いから、何かに引っ掛かって…という”願い”のようなセールスアピールになっているのです。
これでは買い手にどんな明確な欲求があっても、どの商品もぼやけたアピールしかしていないので、使用評価が曖昧になるのもアタリマエ。
価値があいまいに伝わっているから、なんとなく高い…という評価になるのは必然だったのです。
広告規制がかかっている業界なので、確かに難しい面もあります。
しかし、コンセプトまでぼやかしてはいけません。
あれにも効果がある、これにも効果がある…という八方美人的セールスでは、誰のハートにも深くは刺さらないのです。
でも、こういった現状が明らかになっただけでもチャンス!
同業者も思考停止状態になっているところに、斬新なアイディアで斬り込めば、市場を一気に開拓できるチャンスはまだまだあるからです。
事実、類似市場では、3年連続で、3倍ペースで売上を伸ばしている”暴れん坊プレイヤー”がいました。
彼らの戦略構想は、王道中の王道。
こういった戦略を取りたいよね…と社長が話した瞬間…
その全く反対軸にも同等程度、いやそれ以上の市場が存在しているのに、売り手は皆無という状況が見つかったのです。
さぁ、千載一遇のチャンスとなるか…今後の行方が楽しみです。