とことん「本質追求」コラム第39話 高付加価値商品の持続戦略

「値崩れする商品」と「高価格を維持する商品」の違い・・・ 

2013年1月9日の日経MJの一面に、ビジネスマンをターゲットにしたアイロンが、一時生産が追いつかないほどの勢いで売れている!
という記事が目に止まりました。

メーカー希望小売価格が「1万1000円~1万6000円」となっており、一般的なコードレス型アイロンの2倍から3倍の値段。

男前アイロンそれにも係わらず、これまで1万3000台も売れているとのこと。 
名前は「男前アイロン」。
ネーミングも、とても惹かれます。

これは面白い!と思い、メーカーである石崎電機製作所さんを調べてみると、創業85年・・・老舗の生産財メーカーであることが判明。 

「はんだごて」や「熱風機」などの電熱製品を製造・販売している会社で、アイロンを製造する技術的な裏付けも納得。 

生産財の製造販売で、鍛えあげられた技術なら、相当期待できるかも・・・と思い、早速ネットで購入してみようと、検索すると・・・

なんと、新聞では11,000円~16,000円と書いてあったのに、6,800円で売っているではありませんか。 

早速、購入ボタンを押して待つこと10日弱。先週の日曜日にようやく「男前アイロン」が到着しました。 

で、早速使ってみると、これが、予想通りの素晴らしい商品! 
強力なスチームで、スーツの上着に出来たシワも一瞬で伸びてしまうほどで、これは久しぶりにいい買い物をした気分になりました。

が、同時にちょっと残念が気持ちにもなったのです。

これだけイイ商品なのに、なぜ価格が半値になるまでに下落してしまったのか・・・。 

そんな事をもやもやと考えていたとき、山本化学工業さんが販売している「ゼロボジション」という水着の事が頭に浮かんできました。

山本科学工業さんは、トライアスロン用のウェットスーツで世界シェア9割を誇る企業です。

その会社が開発した「ゼロポジション」は、元々泳げない人でも泳げるように・・・と開発した商品で、太ももに浮力をつけて、沈まないようにしてあります。

これが、泳ぐ姿勢を綺麗に保てるということでオリンピック選手の練習用水着としても使われているとの事。 

その「ゼロポジション」を同じようにネットで検索すると通常の水着の3倍以上の高価格(15,000円前後)をキープしていました。

これは、ゼロポジションが、その付加価値を理解してくれるユーザー。つまりオリンピック選手に愛用され、そこから波及させていったことが勝因であったと読み取ることができます。

価格を維持することで、高付加価値型企業というイメージが浸透され、高収益型の経営が実現できます。

如何に付加価値と価格を同時に高めていくか・・・

ここは重要テーマになるので、「男前アイロン」のメーカー石崎電機製作所さんに電話して取材させてもらいました。 

そこで掴んだ主たる要因は・・・ 中国で大量生産を行ったために、早く大量に商品を販売しなければならず、商社を経由して販路を拡大させた事でした。 

付加価値をしっかりと伝えられない経路に商品が流れてしまうと、価格の下落を抑える事はできません。 

高付加価値商品を拡販するためには、当初立ち上がりが鈍くても、付加価値をちゃんと理解し、正しい評価をしてくれるユーザーから波及させていく必要があるのです。

価値を中途半端にしか理解しないユーザーから広げてしまうと、コモデティティ化してしまいます。

高付加価値商品の持続戦略は、どのように商品の差別化を図るかも大事ですが、その差別化をしっかりと理解できる顧客層から波及させていくことの方が大切なのです。 

高収益型の企業体質を作り上げるためには、商品戦略と販売戦略を密に連動させなければならないことを今一度しっかりと抑えておく必要があります。