とことん「本質追求」コラム第451話 ベテラン営業は「武器」の企画・開発に専念する

 

『この間、ルーティン的に発生している業務を効率化するための治具※を(ベテランの)Kさんが作ったんです。見てください。すごいでしょう。

若手にもこういう仕事をしろ!ってハッパをかけているんですけどね。』

 

※治具とは、加工や組み立ての際、部品や工具の作業位置を指示・誘導するために用いる器具のこと。

 

クライアント企業の社長さんが、雑談中に仕事の本質に関わるテーマを投げかけてきました。

 

藤冨は技術畑にいた経験はないのですが、家系は工業一家。

 

父は自動車メーカーの生産技術に定年まで従事。

祖父は、工業系の独立コンサルタントをしていました。

 

その祖父が一冊の本を残していて、非常に示唆に富んだ指摘をしていました。

 

加工作業は未熟練工、熟練工は治具製作、機械修理要員に当てる(P29)

と書き記していたのです。

 

 

 

高校2年生まで同じ屋根の下に暮らしていたのですが、祖父がコンサルタントをしていたと知ったのは、私が23歳の時。

それこそ、コンサルタント会社に入社が決まったときに、祖母が祖父の仕事のことを教えてくれ、同書を形見としてもらいました。

 

本を開くとそこには専門用語ばかり。

チンプンカンプンだったので、本棚にしまっていましたが、藤冨が自ら出版する際に、パラパラ…とめくってみると、細かいことは分からずとも、伝えたいことの骨格がなぜかスーッと入ってきたのです。

 

その中で印象深かった中の一つが上述の「加工作業は未熟練工、熟練工は治具製作、機械修理要員に当てる」という主張です。

 

藤冨は、これを営業マンに置き換えて捉えてみました。

 

「テレアポ、飛び込みは未熟練営業マン、熟練営業マンは、HP、DM、展示会などの見込み客集客や、商談効率をあげるカタログや提案書作成に当てる」

 

このイメージができたときに「我が意を得た!」と感じたのです。

 

 

しかし、現実的には「言うはやすし行うは難し」

この理想を実現するのは、意識的な革新が必要です。

 

と言うのも、エンジニアにしろ営業マンにしろ、ベテランは仕事が早く確実です。

同じ労働量を投入しても、アウトプットに雲泥の差が出ます。

特にトップセールスは、社内で花形扱いされますから本人も営業に出て数字を稼ぎたくなります。

会社側も、数字が欲しいから、どうしてもトップセールスに頼りがち。

 

「期末の目標まであと一息…。ホームページからきた問い合わせを確実に決めたい!」などの意識が働くと、ベテランに任せざるを得なくなります。

 

まぁ期末なら仕方ないにせよ、日常茶飯事で「目先の利益ばかり」を追いかけていると、会社の成長につながる大きな機会を失いかねません。

 

「一文惜しみの百知らず」と言う諺がある通り、少しの損すらを惜しむ者は、その先に多大な利益があることを知らない…。目先の利益に固執してかえって損してしまうのは、あまりにももったいないです。

 

未熟練の営業マンに現場を任せ、ベテランは未熟練の受注確度を高めるサポートに回ったり、潤沢に商談が生まれる「仕組み」を構築することに専念をすれば、会社全体の底上げに繋がっていきます。

 

手前味噌ではありますが、私の役目は、まさにこの役割を果たすこと。

 

ただ、現場に入って本当に難しいのが、エンジニアは新人からベテランまで「ものづくりの技術」が一本道で繋がっていることが多いのですが、営業は違います。

 

営業の現場では「対人コミュニケーション能力」が成果を生み出します。

しかし、未熟練の営業マンのサポート能力は、「企画力」「文章力」「クリエイターのマネジメント力」など、未熟練の営業マン時代の経験値と断絶した能力を求められます。

 

また、外を飛び回って「自由」を味わった営業マンは、いわゆる内勤業務に馴染みにくい人も多いのが現実。

さらに、営業企画や販促は「格下」と認識してしまっていることが多いので、そもそもその業務に携わろうともしません。

 

中には「販促の仕事をやるくらいなら、辞めます」とまで言いだす営業マンも少数派ではないのです。

 

理想を実現するのは、意識的な革新が必要と言う意味合いは、藤冨の経験値から得られたものです。

 

意識改革の第一歩は、仕事の本質を知ることです。

 

1対1のセールスは、成果が限られています。

他方、

1対n のセールスには、限界がありません。

 

ホームページを「24時間休まないセールスマン」に変えたり、見込み客を発掘するDMを作成したり、紙芝居形式で伝えれば、商談がうまくいく提案書が完成されれば、自分が動かずとも成果が生まれます。

 

売上につながるコンテンツとアプローチから受注までの導線が仕組み化できれば、そこに広告費を投入することで、業績は飛躍的に伸びていきます。

 

どれだけ屈強な兵士でも、マシンガンや爆弾には勝てません。

 

営業部隊の全体底上げを狙うなら、熟練営業マンに戦場で使える「武器」の企画に携わってもらうことが大事。

 

御社では、熟練営業マンが現場を駆けずり回っていますか?

それとも、未熟練営業マンの武器を企画・製造していますか?