とことん「本質追求」コラム第31話 「モノマネ商品の市場参入」取扱説明書

「モノマネ商品の市場参入」取扱説明書 新商品の顔つきを見ていて時々感じる事があります。 

あっ、この商品、あのヒット商品のモノマネをしている・・・と。 

大手企業が先発企業の新商品をモノマネして、シェアをもぎ取ることは、よくある事です。 
しかし、中小企業がこの戦略を真似すると痛い目にあいます。 

モノマネ自体は決して悪いことではありません。
というより、ある条件下においては「王道戦略」ともなります。 

経営の神様と呼ばれる下幸之助さんも一時期「マネシタ電器(松下電器を揶揄した造語)」と呼ばれたほど、先発企業で売れ始めた商品に対して、類似商品をかぶせて成功を収めてきました。

しかし、これが通用したのは最盛期に2万7千店舗あったナショナルショップという強力な販売網があったからこそ成せた技。 
セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートのコンビ二大手三社の総店舗数が3万2千店舗ですから、どれだけ強力な市場影響力だったかは、容易に想像できます。

そう、ある条件下とは、新商品や新事業の”芽”が出来きたあとに、大量の広告投下、屈強な営業部隊の編成、支配的な販売網など圧倒的な資本力と販売力にものを言わせて、封じ込める事が出来る場合のみに、採用できる技なのです。 

また、もう一点モノマネが成功する前提に「市場が未成熟であること」という条件があります。 

文化が出来上がってしまった商品分野では、モノマネ作戦は不向きです。 
500年以上の歴史がある「ういろう」をいくら大手菓子メーカーが真似しても、圧倒的なシェア争奪は極めて困難・・・これは誰もが想像できる世界観だと思います。 

つまり、モノマネ作戦は、圧倒的な資本力と営業力のある企業が、これから市場が作られる新分野のみに効果的な戦略なのです。 
(正確には同質化戦略といいます) 

この前提を踏まえずに、売れている商品をそのまま真似してしまうと、思うように売れない状況に悩まされるだけではありません。 

「なんだ、あの会社ポリシーもへったくれもないな・・・」と、優良な顧客層であればあるほど、そっぽを向き始めてしまいます。 

BtoC商品なら、会社名を知らずとも商品を購入するケースが大半ですし、モノマネ程度の不評リスクは、さほど大きくはならないかも知れません。 

しかし、BtoB商品または、卸売企業に商品を販売している企業は『あの会社「モノマネ」ばかりして、最近まったく魅力を感じなくなったよ・・・』といったネガティブな印象によって、市場への影響力がどんどん低下していきます。 

松下電機(現、パナソニック)も、創業当初は「先駆的な商品」(自転車のランプや二股ソケット)を市場に投入して、飛躍の道を切り開いています。 最初からモノマネをしていたのではなく、圧倒的な資本力と販売網が整備できたからこその戦略だったのです。

こうして突き詰めて考えみてみると、やはり中小企業は、何としてでも市場にインパクトを与えるような独創性が欲しいものです。 

それが「中小企業の役割」だからです。 などと、教科書的なことを言うつもりはありません。 

独創的な新商品や市場開拓が、利益の源泉になる事実を見逃せないからこそ、モノマネ発想を排除し、果敢に新たな挑戦を仕掛けてほしいのです。 

先駆的な商品を市場に投入したり、既存商品で新たな市場を開拓する何よりのメリットは「価格決定権」が自社にあることです。

開発レベル、市場開拓レベルで参入障壁を築ければ「潤沢な利益」が獲得できます。 

買い手から見て、「なぜ、この商品を選択するのか」 この意味合いが、今後より一層大事になってくる時代。。。
独創性が貴重な利益の源泉になることは間違いありません。 

企業の「内」と「外」を見つめて、最高の提案を市場にぶつけていく実務を、様々な業種でお手伝いさせて頂ける事に感謝しながら、私自身、さらに独創性のあるノウハウをご提供していきたいと思っております。