「顧客目線で商売をするって意味が腑に落ちました。確かに今までは売り手の目線だったかも知れません」
先週26日に実施した弊社主催の「波及営業戦略の実践法」セミナーに参加してくださった企業経営者の方がアンケートに書き残してくれました。
今回もセミナーアンケートの全体評価では、非常に満足が85%、まぁまぁ満足が15%という結果。
これまでのセミナーでは95%以上が「非常に満足」だっただけに残念な結果でしたが、冒頭のコメントは最も伝えたいテーマだっただけに、救われる思いです。
なぜ、顧客目線で商売することが、最も伝えたいテーマなのかと言えば、これからの時代における商売の基本的精神は「愛」だと感じているからです。
「愛」という臭い言葉は、できるだけ使いたくなかったのですが、最も真意をお伝えすることができるのでは?と考えて使うことにします。
私が修行した「新商品開発専門のコンサルティング会社 日本オリエンテーションの松本先生」は、いつもこう言っていました。
お母さんは「最高のマーケッター」である、と。
赤ちゃんは、言葉を発することが出来ません。
でも、お母さんは毎日愛情を持って観察しているので「おむつが汚れたのか」「お腹が空いたのか」泣き声だけでわかると言います。
言葉にならない声を拾い上げて、要求に答えること。
これは、商売人(マーケッター)における最重要能力の一つだと言えるでしょう。
そのためには…
・興味を持って観察力すること
・どんな欲求が生じているのか仮説を立てること
・仮説に従って対応してみて、仮説が合っていたのか、検証すること
このサイクルを回し続けることで「仮説力」が向上します。
すると、お母さんが泣き声を聞いただけで「赤ちゃんの要求」が分かるようになると同じように、マーケッターも「市場の声(潜在客)」が聞こえるようになるのです。
これは「愛(人類愛も含めて)」を持っていなくしては、成し得ません。
マーケッターが市場を観察する場合、お母さんよりも、少し観察の幅が広くなります。
赤ちゃんの要求よりも、成人生活者の方が多様な要求があるからです。
赤ちゃんなら「お腹が空いた」「おむつが不愉快」など、生理的な欲求からくるものですが、大人の場合は、「米が食べたい」「肉が食べたい」「大きなトイレがいい」「ウォシュレット が欲しい」など、売り手からの提案に基づいて学習した多様な要求へと広がっていきます。
だからこそ、その「要求」の根っこにある「欲求」を観察しないと、声にならない声を拾い上げることはできなくなってしまうのです。
例えば…
・ウォシュレットが欲しい真の理由は何だろうか
分かっているようで、分かっていない「欲求」や使用したいという「背景」を洞察してみましょう。
一例ですが…
・下着が汚れないように、家族への配慮だろうか
・お尻を拭くと痛くなるからだろうか
・スッキリした気分になるからどうか
などなど、様々なニーズや欲求、またはウォシュレットを使いたい…といった「背景」を推察できます。
新商品開発の場合は、この推察から「不」(不快、不便、不満など)を解消するテーマを見つけ出し、「新しい効用」を発見し、それに対応した機能を開発していきます。
上の例になぞって、「新機能」を考えみましょう。
・お尻の状態をセンサーで見極め、綺麗になるまで自動洗浄する機能
・お尻に優しいミスト洗浄。だけど、しっかりと洗える機能
・ミントなどを配合して、洗浄後スッキリ爽快な気分に浸れる機能
市場をじっくりと観察したり、メーカーのアンケート調査を見たわけではないので、チープなアウトプットで恐縮です。
ですが、顧客の目線に立ち、顧客の立場に立った「商品のあり方(=商売のあり方)」の思考プロセスの進め方は、これが王道なのです。
藤冨は、中小企業の新規事業、新商品の創案や営業立ち上げプロジェクトに関わる
ことが多いのですが、大半は「機能」から入ってしまっています。
感性の鋭い社長が考えた「新機能」は、ずばり「市場の欲求」に突き刺さるものもありますが、それでも、チラシやパンフレット、ホームページなどの営業ツールを見ると「機能紹介」に留まったりしている…
これでは、販売不振から脱却できないのも不思議ではありません。
お客様が欲しいのは「機能」ではありません。
商品を通じて受け取ることができる「効用」「利益」「メリット」なのです。
販売を強化したいなら、営業ツールに、お客様が受け取れる「効用」や「利益」「メリット」を具体的にイメージできるように表現し直す必要があります。
藤冨がコンサルティングで行っている「機能-効用変換」という手法は、多くの企業が「効用開発」から「機能開発」を行っておらず、「機能開発」だけに焦点が当たっているために、逆算して「顧客が受け取れる効用」を見つめ直しているのです。
冒頭の「顧客目線で商売をするって意味が腑に落ちた」とアンケートに書いてくれた社長も、「機能―効用開発」は参考になった!と書いてくれていました。
この効用を実感した「お客様の声」や「権威から裏付け(エビデンス)」があれば、最強です。
「機能」 ↔︎ 「効用」 ↔︎ 「評価(お客様の声)」が連動していくと、見込客は、どんな人(法人)がどんな効用を受け取った商品なのか?が明快に理解できます。
その人(法人)が、自分と同じようなタイプ・境遇の人だったら、高い確率で「購買意欲」を抱いてくれます。
「顧客の立場に立って“欲しい・買いたい”という感情を抱いてもらえれば、営業活動は、非常に楽チンになります」
御社では、見込客の“欲しい・買いたい”という感情に火をつける道具を持ち合わせていますでしょうか?