とことん「本質追求」コラム第441話 セールスから逆算する「成功確度の高い新規事業アイディア創造法」

 

「新商品を考える時に、どうしても”モノ”レベルで考えてしまうのです。お客様は商品を買うのではなく、コンセプトを買っている!というのは何となくはわかるのですが…」

 

コロナの影響で、崖っぷちに立たされた企業が、なんとか新商品でジリ貧状態から脱却しようと奮闘しています。

しかし肝心の新規事業アイディアがまとまりません。

 

セールスの現場をイメージしながら、コンセプトを作り込むことは、切羽詰まった状態で新規事業を成功させるためには避けて通ることは出来ません。

商品開発と営業を連動させなければ、無駄な試行錯誤に時間を取られ、(資金ショートの)タイムリミットに間に合わないからです。

では、どうやったら、商品開発と営業を連動させることが出来るのか?

 

一言で言うと「売れる営業トークから逆算した商品」を作り込めば良いだけなのです。

 

イメージがしやすいように、マーケティングについて語るときには、しばしば登場する話を少しアレンジしてお伝えしましょう。

 

香港の靴メーカーが、アフリカに靴を売り込むため3人の営業マンを派遣しました。

営業マンAは、現地に着くなり社長に電話をしました。

「アフリカ人は誰も靴を履いていません。靴を売るのは不可能です」と。

 

しかし、営業マンBは、「社長、これは売れそうです。すぐに在庫を送ってください、この国ではまだ靴を履いている人がいないから売れるはずです」と、電話をかけてきたそうです。

社長は、前向きな営業マンBに好感を持ちました。しかし、本当に全ての在庫を売り切ることが出来るか疑問が残ります。
誰も履いていない靴に、果たしてアフリカ人が興味を示すのか、確証が持てないからです。

そこに、顧客視点で物事を見る習慣を身につけた営業マンCが、社長に次のように報告してきました。

営業マンCは香港から持ってきたサンプル用の靴を村の村長と奥さんにプレゼントし、こう伝えたそうです。

『アフリカ以外の国では、みんな靴を履いています。今、私が履いているものです。この靴というものを履くと、石を踏んでも、トゲの生えた木を踏んでもケガをしません。足の怪我から死に至ることもある破傷風になる心配もなくなります。ぜひ一度ためしに履いてみてください。2~3日経ったらまた来ますので、感想を聞かせてくれると嬉しいです」と。

 

彼が村長に伝えたポイントは、

・靴は何のためにあるのか。(ケガをしないこと)

・貴方が履くメリット(効用)は何か。(ケガをしない。さらに死に至る破傷風の心配がなくなること)

・貴方にお願いしたいこと(試し履きをして感想を言う必要がある)

・次にいつ来るのか(2~3日後)

の4つになります。
靴を履くメリットを的確に伝え、その効用を感じてもらえるか?を検証しようとしたのです。

そして、3日後に改めて村長のところに行って、営業マンCは、以下のような質疑応答を想定しながら、会話を進めます。

 

営業マンC「村長いかがでしたか?」

村長「確かにこれは素晴らしい。森に行っても安心して歩くことが出来る」

営業マンC「この靴は本来2000円します。この村の人たちは購入してくれるでしょうか?」

村長「うーん、それはわからん」

営業マンC「何か、もっとこうなったら良いのに!とか、履いていて”ちょっとなー”と言う不満みたいなことは感じましたか?」

村長「そうだな。足の怪我の心配はないけど、やっぱり裸足の方がいいな」

営業マンC「なぜ、裸足が良いのですか?」

村長「靴は窮屈だし、蒸れて暑苦しかった。しかも、これじゃ走りにくい」

営業マンC「なるほどです。そしたら、これを見てください。サンダルと言う履物の写真です。これで走りやすいように工夫した改良品が出来たら、どうですか?」

村長「おおー裸足じゃないか!怪我はしないし、走りやすく改良してくれるのなら、まずワシが買うよ」

営業マンC「わかりました。ご協力有り難うございます。早速本社に電話をして商品を作ってもらいます。出来たら、すぐに持ってきますね」

彼は、売りたい商品を売り込まず、消費者が欲しがる商品を探究しました。

「効用は評価されたか?」(森に行っても安心して歩くことが出来る)

「効用(価値)と価格が釣り合っているか」(やっぱり裸足の方がいいな=釣り合っていない)

「不満はないか?」(窮屈、蒸れる、暑い)

「不満の改良アイディアの提示したら、どう反応するか?」(走りやすいサンダル)

「改良案における購買意欲は確かか?」(まずワシが買うよ)

 

「効用」「価格」「不満」「改良案」「改良案の購入意欲」この5つのポイントを押え、ターゲットが喉から手が出るほど、欲しい商品は何か?
を考えたのです。

ここまで、コンセプトを煮詰めると「売れるニオイ」がしてきませんか?

 

靴を売ろうとすると、どうしても靴の固定観念に縛られてしまい「顧客が真に求めていること」が見えてきません。

しかし、靴が持つ「機能」を、顧客にとっての「効用」に変換しながらコミュニケーションをしていけば、顧客の購買欲求の強さがクリアに見えてきます。

ある人にとって、どんな場面で、どんなメリット(効用)が享受出来るのか。

 

「人(ターゲット)」「効用」「場面」この3要素で構成された概念を「商品コンセプト」と呼びます。

(30年近く前に修行させて頂いた新商品開発を得意とするマーケティングコンサルタント会社「日本オリエンテーション 松本勝英先生のメソッドです)

 

お客様は、商品(または、サービス)ではなく、商品コンセプトを買っているのです。

 

セールスから逆算した「商品コンセプト創造法」は藤冨独自のアプローチですが、コンセプトからパンチ力のある営業トークが生まれれば、その事業の成功確度が高いと判断できます。

 

御社では、新商品開発、新規事業開発、新市場開拓など、新しい事業推進をする際に、セールスから逆算してビジネスプランを決定していますでしょうか?