とことん「本質追求」コラム第26話 『本屋でフライパンを売る!?』<販路開拓に欠かせない視点>

最近、雑誌の付録が、充実しているのが気になって仕方ありません。

雑誌のフライパン付録写真定番の「おもちゃ」に始まり、バック、身だしなみセット、美容器具、ダイエット用具、果ては、フライパン(グリルプレート)まで・・・

本がウリなのか、付録がウリなのか、分からなくなるほどの乱戦ぶりです。

私が20代前半の頃・・・マーケティング会社に勤めていた時の事です。 

日本を代表する家電メーカーにお邪魔したとき、翻訳機を見せられて「これを売るのが私の課題なのです。しかし・・・」と行き詰まった様子でお話をされていました。

大企業といえども、売れるか売れないか分からない新商品には、多額の広告や販促予算をかけることはありません。 

なので、最初は「ゲリラ戦」で市場の突破口を開き、売れそうだ・・・という社内の空気を醸成することが肝心です。 

その突破口はどこか・・・ さらに詳しく伺うと、その翻訳機は、「家電屋」で売っているとの事。 

(うーん、それは厳しいだろうな・・・)と察しながら。 

翻訳機を買うお客さんって、どんな人ですか? と質問すると、

「それは、これから海外旅行に行く人とかでしょ」とアタリマエのような答えが返ってきました。 

「それはそうですよね、海外旅行に行く人だと思います。ちなみに、海外旅行に行く人は、どんな事前行動をしているのでしょうか?」 

とさらに突っ込んだご質問をすると、

質問の意図がわからなかったようで、気まずい沈黙の時間が流れ始めてしまいました。

若かった私は、その沈黙に耐え切れられず、矢継ぎ早に・・・

「例えば・・・旅行に行こう!と思ったら、まず旅行会社に相談しに行くと思います。そして旅行プランが決まったら、旅行カバンや洋服を新調したり、英語が不安なら本屋さんに言って、英会話ハンドブックも買うかも知れません」 

そんな消費者の行動モデルを想定すると・・・ 

「旅行会社、かばん屋さん、本屋さん」と言った販売ルート(チャネル)に翻訳機が置いてあれば、消費者は「あれ?これ便利かも!」と気がついてくれる可能性が高まります。

少なくても旅行に行こうとしている人が、家電屋さんに行って「翻訳機」に接触する確率よりも高まると思うのですが・・・と告げると。

なんと、その場で「コンサルをお願いするにはどうしたらいいのか・・・」と話が急展開してしまいました。
(当時、私は営業だったので、私がコンサルしたわけではありません・・・)

大量に広告費を投下して「翻訳機」の便利さを伝え、店頭まで誘導するのであれば、家電屋さんに置いても構いません。

が、広告予算をかけないのであれば、消費者が気づきやすく、興味を持ちやすい”場所”に商品をおくべきです。 

在り来たりのチャネルに置いても、その商品は「風景」となるだけ。 ものすごく「違和感」を感じるような「場所」において、強制的に「気づき」を促す。 

あるシュチエーションにいたら、その商品が欲しくなる。 そんな「場」づくりが販路開拓を成功に導いていきます。

なんかタマに変わった料理でも作ろうかな・・・と本屋に行ったら、グリルプレート付きを雑誌が目に留まる。。。 

料理写真を見れば、簡単シンプルだけど、ちょっと変わっている。 

ふーん、面白そうだな、と料理雑誌を手に持ってレジに向かう。 

このようにあるイメージを「モデリング」しながら「その商品を使いたくなる瞬間」から逆算して、販路開拓やセールスプロモーションを組んでいくと”顧客目線”に沿った販売戦略を組むことが出来ます。

アタリマエのように聞こえるかもしれませんが、意外や意外・・・ご相談を受ける企業さんでは、このモデリングがほとんど無視されてしまっています。 

自社の商品の売れ行きが思い通りに行っていない場合・・・ 

今一度、モデルケースをしっかりとイメージして、仮説を作って見てください。 

そこに「無理なシナリオ」が生まれず、スムーズに「売れる絵」が描ければ、そのプロジェクトは成功する可能性が飛躍的に高まります。