「最初はものすごく不安でしたが、勇気が出てきてきました。(新商品開発は)ワクワクしますね」
先日、新規事業を考えているレストラン経営者が、悶々とした悩みから脱して、実践に向けてのスタートラインに立たれました。
とある経営者や幹部の方が集まる会で、藤冨から「新規事業の成功確度を高めるためのアプローチ方法」を伝授したのですが…
ランチを終えて、ざっくばらんな相談会の時に、「自分が考えていたプランと成功確度を高めるためのポイントが大きくズレていて不安になってきた…」「先生は、徹底的に絞ることが大事とのお考えでしたが、私たちは3つの商品を作ろうと思っていまして…」とおっしゃいました。
「絞るといっても、商品で絞るのではないですよ。買い手の目線に立つと分かりますが、お客様の満足やメリット、効用などで絞り込むのがポイントです」
ちなみに、その3つの商品とは何ですか?」
と伺うと、案の定「商品」で絞っていただけ。
簡単に言えば、「出汁」と「おかず」と「炊き込みご飯」の3つのテイクアウト商品を考えていたけど「炊き込みご飯」だけに絞った方が良いのかな…と悶々とされていたようです。
講義の中でもお伝えしていましたが、なかなか「思考の中心軸」に入ってこない本質的な考え方なので、もう一度ご相談者の事例をベースにして、お伝えしました。
お客様は「炊き込みご飯」を購入しているのでしょうか?と。
ここで多くの人は「?」マークが頭に浮かんでしまいます。
それはそうです。
「炊き込みご飯を食べたいから、炊き込みご飯セットを買うんでしょ?」と。
はい、間違いではありません。
でも、その炊き込みご飯を食べたいと思った「背景」なり、「動機」なり、「目的」なりが、それぞれの人にあるはずなのです。
成功確度を高める新規事業は、この「背景」「動機」「目的」などを追及して、他にも同じような人達がたくさんいるはず…と思いを馳せていくマーケティング思考が大切なのです。
表面的な商品。ハードウェアとしての商品で差別化してしまうと、そもそもブランディングは出来ません。
ある属性の人たちが熱狂するような「何か」を提供できた時に、ブランディングは成功します。
美味しい炊き込みご飯セットのテイクアウトメニューを考えても、競合相手はたくさんいます。
近所の和食料理屋も同じような商品を出すかも知れません。
そもそも、スーパーに行けば「美味しいレトルト商品」がたくさん陳列されています。
と、藤冨が言うと大多数のレストラン経営者は言うでしょう。
「スーパーのは不味いじゃないですか。ウチのは凄く美味しんですよ!」と。
これは、レストラン経営者だけではなく、大多数の作り手、メーカーの人たちは同じような反応を示します。
ある意味仕方ありません。
人間は目に見えるものの認知率は高いのですが、その背景にあるものは、認知しなくても生活なり仕事ができてしまうからです。
普段意識しないことを、突然意識してみましょう!と言われても「脳みそに蓄積された情報」がないのですから、アウトプットのしようがないのです。
ただ、これを営業活動に落とした瞬間に、ハタと気付いてしまうことがあるのです。
「美味しい炊き込みご飯セットですよ!」
「1200円でレストランの味を自宅で味わえますよ」
と言っても、思うように売れないからです。
そもそも「美味しい」って、人によって全然基準が違ってしまいます。
「薄味が好きな人」「濃い味が好きな人」
「塩味が好きな人」「しょうゆ味が好きな人」
「野菜が好きな人」「魚が好きな人」
「和風出汁が好きな人」「洋風出汁が好きな人」
まー美味しい!って、表現して買い手の興味をくすぐることが、どれだけ難しいかは冷静に考えればわかるはずです。
他の製造業の方にも、これは共通したテーマです。
抽象的な表現しかできない商品は、営業やマーケティング活動のステージに行くと、とても苦労をするのです。
「わが社の靴は、とても丈夫で長持ちしますよ」
「うちは、加工業なのですが、短納期がウリなのです」
「美味しい」と言う表現が、買い手にどれだけ伝わらないか?と同様に、「丈夫」や「長持ち」も人によってモノサシが違います。
短納期だって、それぞれのモノサシがあります。
そもそも論として、競合商品も同じ表現で、買い手にメッセージを送っているわけですから、買い手は「どこも一緒でしょ」と見向きもしないわけです。
抽象的な表現しかできない「商品企画」は、マーケティング・営業のステージに移行すると、大変な苦労を伴います。
多大な時間とコストをかけても成果になかなか繋がらず、組織全体で「ムダやムリ」が生じてきます。
企業としての効率を高めるためには、川上である「企画」の段階から、営業目線を組み込む必要があると、藤冨は事あるごとにつくづく感じています。
冒頭のレストラン経営をされている方には…
「商品企画」は営業効率を高めるための起点になっています。
もう一度、3つの商品の横串を指すような「買い手の購買動機」から作っていきましょう。とお伝えし、幾つかのヒントを差し上げました。
食事は、生物としての“栄養”や“食欲”を満たすだけではありません。
人間としての「楽しみ」「好奇心」を満たす場面もありますし、作る、食べる、それぞれのステージにおいてのコミュニケーションの場でもあります。
このような本質を追及した先に、「自社ならではの顧客像」が浮かび上がってくるのです。
大切なことなので、もう一度言いますが、営業効率を高めるため商品企画は、「商品」を作るのではなく「買い手の購買動機」から作っていくことが大事です。
あなたは、買い手の購買動機に、どれだけ感情移入ができていますか?