とことん「本質追求」コラム第435話 好業績企業は、相手の認識に敏感

「私たちが何を売っていたのか…今更ながら知ったことに自分でもビックリしています」

先日、半年間かけて「波及営業法」を社内に定着させるコンサルティングを終えた社長から、感慨深いコメントを頂きました。

当初から「御社は何を売っているのですか?」と質問したことに「?」を抱かれていたようですが、私は大真面目。
茶化しているわけでもなく、真剣に「お客様は何を買っているのか?」
その真相を知りたくて質問をしていました。

シューズメーカーに対して「御社は何を売っているのですか?」と聞けば、大半の方は「靴に決まっているでしょう」と答えます。
筆記具メーカーに対して「御社は何を売っているのですか?」と聞けば「ノートやボールペン、シャープペンですよ」と答えるでしょう。

これは、私が23歳の時に勤めていたマーケティング・コンサルタント会社、日本オリエンテーションの代表松本先生が、よくメーカーに質問していたことですが、ほぼ「商品名」で答える方が大半。
感覚的には99%の人たちが「商品名」で答えていました。

しかし、購買心理の現実を直視すると、買い手は「商品」を購入しているのではありません。
本コラムでも、そして藤冨のセミナーでも、さらにはコンサルティングの現場でも、何度も、何度も繰り返しお伝えしていることですが…

買い手は、「自分自身が得をするメリット」を購入しているのです。

油断すると、すぐに脇に置いてしまいがちなので、口を酸っぱくして伝えていることですが、お客様は、自分が得することにお金を払ってくれているのです。

以前、金属加工部品を製造している企業をお手伝いした際、我々は「お客様が役立つ”部品”を作っている」という認識からなかなか抜け出せないでいました。

「役立つって、何に役立っているのですか?」と聞いても、「色々です」と的を射た回答が得られません。

では、その「色々」を具体的な事例を通じて教えてください。
と聞くと、専門用語ばかり。

最初は、何を話しているのか全く理解ができなかったのですが、根気よく聞いていると、製造業が「作業効率を高めたい」「加工精度を上げたい」「作業の安全性を高めたい」といった「お困りごとを解決する“道具”」を作っていたのです。

なるほど、確かにお客様に役立つ”部品”を色々と作っていました。

しかし、これでは正直いってセールスのしようがありません。

「誰に対して、何を売っているのか?」が明確にならなければ、セールスの最初の一歩も踏み出せないのです。

ホームページも作れなければ、チラシも作れません。
営業マンを雇っても、どの業種のどの部署にコンタクトすれば的を射た営業活動ができるのか…すら分かりません。

これまでは、展示会や紹介を中心に新規顧客を獲得していたそうですが、コロナの影響もあって、その道を絶たれました。
「展示会では、そこそこ新規取引先ができていたのだから、これまでの考え方でいけるでしょう…」とタカをくくっていましたが、現実は甘くはありませんでした。

ホームページをリニューアルし、会社案内も刷新して近隣の製造業に挨拶回りするも、梨のつぶて。
ほとほと困っているところに藤冨のセミナーを発見して、「継続的な新規開拓ができる仕組みづくり」のプロジェクトを開始しました。

新規開拓は「誰にどんなメリットを提供できるか?」そして、それを「潜在客や見込客が、どう認識するか?」が出発点になります。

ここがとても大事です。

「潜在客や見込客が、どう認識するか?」です。
これがマーケティングや営業活動における「すべて」と言っても過言ではありません。

話を戻すと、「お客様が役立つ”部品”を作っています」という自社紹介では、潜在客や見込客は「ん? 役立つ? 何に?」という認識しかしてもらえません。
忙しい社会ですから、初対面の人や会社から、よく聞かないとわからないものを聞いてくれる人は、極めて少数派です。

だからこそ、一瞬で理解してもらえるような「メッセージ」を作り込まないといけないわけです。

「誰に対して」
「どんなメリット(効用)を」
「どの商品よりも優れた価値で提供すること」

このメッセージを絞り出すことが必要なのです。

潜在客や見込客が「ちょっと面白そうだから、もっと話を聞かせてください」という心理に持っていければ、受注確度は8割以上に達したも同然です。

だからこそ、相手の認識に敏感になって「ちょっと面白そうだから、もっと話を聞かせてください」と言われるまで、自社商品を打ち出すメッセージを研ぎ澄ますことが大事なのです。

・商品そのものに「メッセージ性」を織り込むこと(商品企画レベル)
・会社案内で、自社の売りや差別的優位性を織り込むこと(広報レベル)
・ホームページ(商品を紹介するランディングページ)やチラシで、商品の魅力を伝えるメッセージを織り込むこと(販売促進レベル)
・営業マンの提案書やトークスクリプトで、受注力が高まるトークを織り込むこと(営業レベル)

好業績企業は、すべての事業活動の階層で、買い手の認識にたった「魅力的なメッセージ」を作りこんでいます。

冒頭の会社も新規開拓し始めたばかりですが、確かな手応えを感じていると社長が力強く話していますし、金属加工メーカーに至っては、コロナ禍でも昨対115%を叩き出しているそうです。

相手の認識に立って、メッセージを作り込めば、好況下でも、不況下でも、打ち手はいくらでもあります。

御社では、「相手の認識にたった魅力的なメッセージ作り」に心血を注いでいますでしょうか?