とことん「本質追求」コラム第425話 成功する新規事業のテーマ設定方法とは

 

「欧米諸国には、一見すると小さなマーケットでも、世界的に著名で優れた会社がたくさんあるんですよね」

 

先日、クライアント企業さんと一献傾けた際に、興味深い話を聞きました。 

 

同社は環境試験装置の開発メーカーですが、昨年国内最高峰の機関に同社製品を収めた国内唯一無二の会社です。 

しかも、世界マーケットを対象に独壇場を握る装置を提供している米国企業からの入れ替え商談。 

 

すでに稼働していますが、その世界トップ米国企業の装置と肩を並べるどころか、より優れた評価をもらえているそう。 

世界的に認知される企業になることは、夢の存在ではなくなりました。 

目標であり、計画的に狙っていくステージにまで来ています。 

 

その同社社長が、酒席で欧米企業と日本企業の違いについて語ってくれたのですが、商談で勝ち取った米国企業は家族経営に毛が生えた程度なのに、世界的に著名な企業であり、非常に高額なフィーをとって商売をしている…。 

 

欧米企業にはそうした会社がたくさんあるが、日本には少ない。 

その違いは何か? 

 

というテーマです。 

 

 

一言で言うと「欧米企業は、学問から商売に入ってくる。理論がしっかりしているから商売がブレない」とのこと。 

 

日本は教育と商売がかけ離れているとよく言われます。 

学問と商売がかけ離れているわけではないと藤冨は思います。 

学問と教育がかけ離れているのでは、ないでしょうか? 

 

理論が実践にヒントを与え、実践が理論を豊潤にしているはずです。 

 

冒頭のクライアント企業の社長さんは、実践の場において、すでに日本どころか世界的な技術的ノウハウを蓄積しています。 

現場から叩き上げてきた経験則から『こうすれば、こうなる』というノウハウであり、技術力を持っています。 

 

今のままでも十分に成功できるのですが、その社長さんが、今なんと「学問」に没頭されているとのこと。 

 

これは最強への道です。

これまでの経験で学習してきた具体的なケースが、抽象的な学問に翻訳された瞬間、深みを増していくことは間違いありません。

 

今でも、国内最高峰…いえ世界最高峰のノウハウを持った企業です。 

これから、どこに向かっていくのか? 

ゴールは、世界シェアナンバーワンしかないでしょう。 

 

ある分野でスキルを磨いて一流として成功するには、1万時間もの練習・努力・学習が必要だという研究があります。

 

一時かなり有名になった『1万時間の法則』です。

 

しかし、1万時間何かに没頭すれば誰でも一流になれるのか?と言えば、疑問を抱くはずです。

 

野球少年なら、小学校から高校野球まで、1万時間以上は練習しているはずです。

しかし、プロ野球選手になれる人はほんの一握り。

ましてや、その中で一流選手の地位を獲得できる選手は、稀有な存在です。

 

これまで費やしてきた時間、蓄積がムダになるかならないかは、その人のビジョン、職業選択にもよるでしょう。

しかし、一流になる、成功する、確固たる基盤を作るとなると、時間以外の何かが必要です。

 

専門知識と人間のパフォーマンスの心理的性質の研究者として国際的に認められている「アンダースエリクソン教授」が1万時間の法則を研究していました。

本来、教授が言いたかったのは、“時間だけでなく「質」が大いに影響してくる” ということ。

言ってしまえば当たり前のことですが…

 

でも、その質って、そもそも何だろうか? と問うと、成功への道筋が見えてくると思います。

 

アンダースエリクソン教授は、3つの概念を「質」と定義しました。

 

  1. フィードバックの仕組みを作る
  2. 計画的訓練を行う
  3. 指導的な立場を経験する

 

1は、まさに上述の社長さんが行なっていること。

理論と実践を行き来することで、理論が実践の場でそのまま使えるのか。よりよく使うためにはどのような工夫が必要か。を何度も行き来することです。

この繰り返しが理論と実践の架け橋を強固にします。

まさに「理論が実践にヒントを与え、実践が理論を豊潤にするサイクル」が回り始めてビジネスが面白くって堪らなくなります。

 

2の計画的訓練は、問題を定義し、解決策を考え、その結果を評価する、いわゆるPDCAを回していくことですが、この際「細部にこだわれ」と提言しています。

これは間違いありません。私の専門分野においても、言葉の使い方一つで大きく成果が変わるため、セールストークやキャッチの作り方には、めちゃくちゃこだわっています。

細部に神が宿る。この細部にこだわれるビジネスか否かも成功の尺度となるでしょう。

 

3の指導的立場になるのは、わかりやすいですね。

教わる立場よりも教える立場になるためには、体系的な理解が必要になります。

教える側になるための訓練こそが、スキル、能力を高めていくことは間違いありません。

 

と、この3つの質を意識的に織り込んだ上で、時間との相関関係によって「一流」になるか否かが決定されると、提言しました。

 

しかし、藤冨はもう一つ大事な「質」があると感じています。

 

その質は、ビジネスの「テーマ設定」です。(スポーツ選手や音楽家も同じです)

テーマ設定というと意識的なマインドセットのように感じれられますが、ここで定義するテーマ設定は「無意識的関心」によるものです。

冒頭の社長さんは、唯一無二の技術を持った故人を顧問に迎え、同社の基盤技術の中に織り込みました。

その故人との出会いも、そして面白い技術も、その出会いは偶然です。

少年時代から描いていた目標では決してありません。

たまたま一生懸命に取り組んでいた仕事の延長線上に存在していただけです。

 

そして、そのテーマに取り組んでも「あっという間に時間が過ぎ、没頭し、時にエキサイティングする対象」こそが、個人、企業が一流になる「テーマ設定」になるのです。

 

私の周りには得意技術を武器に成功している社長さんがたくさんいます。

その共通点は、「無意識的関心によって没頭したテーマ設定」がありました。

 

意識的な努力よりも、無意識的に努力をしてきたことにフォーカスを当ててみると、道を切り開くチャンスが見つかるかも知れません。

 

アフターコロナを見越して、新規事業を企てようとしている方が今たくさんいらっしゃいます。

 

あなたも、無意識的に没頭していた対象物… カフェでボーッとしながら振り返ってみては如何でしょうか?

成功する新規事業のネタが見つかるかもしれません。