とことん「本質追求」コラム第423話 生き残り条件「そこに愛はあるんか?」

 

 

『これから生き残る中小企業は、アイフルの宣伝の中に答えがありますよ』 

 

先週末にコンサルタント仲間と一献傾けた時に彼がしんみりと力強く問いかけてきました。 

 

儲かるから、このビジネスをやる!と言う事業は、淘汰される時代がくる。 

代わって、こんな商品やサービスがあったら、みんな喜ぶだろうなと言う「愛」が出発点の経営者が次の時代で活躍するだろうと。 

 

なるほど『そこに愛はあるんか?』の問いかけに対し、堂々と、かつ明快な答えを出せる経営者が、次の時代に活躍できるということだそうです。 

 

藤冨も「愛」という言葉は使ってこなかったのですが、心の中にストンと落ちてきました。 

 

藤冨の専門分野「営業」の世界から「経営」を眺めていても、この時代変化の波は、間違いないと感じていたからです。

 

心理学者マズローの「完全なる経営」には「進歩的ないいセールスマン」の定義に迫る章があります。

 

原文でご紹介しましょう。

 

「セールスパーソンは製品を販売する以外の役割を担っている。(中略)消費者の欲求や市場のニーズ、自社製品に対する満足度などに関して、絶えずフィードバックを得ておくべきであるが、この種の情報を集めてくるのは、セールスパーソンに他ならない。(中略)将来の製品革新、開発担当の副社長でもある」

 

「現代の平均的セールスパーソンは、自分自身のことを、人を操る人間、心理学者、人の行動をコントロールする人間と見ている。つまり情報や真実を隠すことによって、製品を買わせているという面がある、と自ら認めているのである」

 

「だが、原則として、新しい進歩的なセールスパーソン気質、あるいは新しいマーケティング活動は、他の企業活動と同様、事実の情報開示や公正さ、正直さ、真実さというものを基盤とすべきなのである

 

と、言及しています。

 

これは、まさに「そこに愛はあるんか?」と通底した概念です。

 

目先の売上、利益ではなく、企業が社会の一員と認められるための活動、つまり顧客に愛を注いだ結果、利益を享受することができる世界が定着してくるのです。

対象は、顧客への愛だけではありません。社員、取引先などのステークホルダー全般に対しての愛が「結果としての利益」に繋がっていくでしょう。

 

こういう提言は、「ええかっこしいの偽善者」「建前主義」「理想的妄想家」として捉えられがちです。

 

今や先進国の共通問題である「格差社会」において「下位層」へと転がり落ちる恐怖心が存在する以上、仕方ありません。

しかし、その恐怖心が強ければ強いほど「目先の利益(これまでの常識)」に踊らされ「結果としての転落」へと陥る可能性に気づく必要があります。

 

以前のコラム「第382話 生存者(生存社)の条件」(https://www.j-ioc.com/wp2024/column/6572/)で紹介した「わけあって絶滅しました」にも書かれています。

 

恐竜を含め、生き残れなかった生物の絶滅理由ランキングの1位は「理不尽な環境変化」です。

昨年9月に書いたコラムですが、今のコロナ騒動は、まさに「理不尽な環境変化」に他なりません。

 

コロナをキッカケとして、私たちは現実の認識を見つめ直すことを強いられました。

 

・相互監視社会が、隅々まで行き届いていること(自粛活動中の自粛警察?がその最たるもの)

・多くの国民(企業)の生殺与奪権は、国家に委ねられていること。

・良き振る舞いは、安全な社会を作り、国民はそれに従わざるを得ないこと。

・仕事とは何か、テレワークをはじめ仕事へのあるべき取り組み方は何か。

・生活とは何か、幸せとは何か。東京や大阪など大都市圏に住むのが良いのか、それとも地方が良いか。

 

 

などなど、それぞれの方が、それぞれの受け取り方で、“自己の存在意義”、”会社をはじめとした社会との関わり合い方”を、新しい視点で見つめ直さざるを得なかった。それがコロナ騒動だったと思います。

 

つまり、コロナは単なる「現象」ではなく、「新しい社会に移行していくためのトリガー(引き金)」と捉える必要があるわけです。

 

トリガーですから、その現象について着眼しても意味がありません。

「何が変わるためのトリガーになり得るのか」に着眼する必要があるのです。

 

 

・企業倒産の拡大(帝国データバンクの調べでは、5月10日から6月26日にかけて2倍近くが倒産)

・失業者の増加(日経新聞、潜在的失業者を含めると597万人と発表)

・世界同時不況の深刻度合の顕在化(国際通貨基金(IMF)は1920~30年代の大恐慌以来最悪の同時不況に直面していると発表)

 

など、負のスパイラルの始まりであることは、数多くの統計データから読み取ることができます。

 

社会不安が増大すれば、求められるのは「愛」をはじめとした「存在価値」です。

 

マズローもこの「存在価値」を「B価値(Being)」と呼び重視しています。

 

B価値(真、善、美、正義、完全性、秩序)を育み、守り、高める能力は、いい世界を作る能力であり、世界を完璧に近づける能力である。と著書「完全なる経営」でも言及しています。

 

 

つまり良い側面から今後の社会を捉えると、苦境を強いられる社会の中では、存在価値を重視する事業活動こそが、多くの生活者の中から支持されると考えることができるわけです。

 

「そこに愛はあるんか?」

 

御社の事業の出発点は、「愛」ですか。それとも「利益」ですか?