とことん「本質追求」コラム第418話 在宅勤務の課題「評価システム」を構築する際の覚書

 

「来週から緊急事態宣言が解除されるようですが、ウチはこのままテレワークを続けようと思います。思いの他「成果」には繋がっていますし、無駄な経費も抑えられるので。ただ、遠隔勤務だとモチベーションの維持評価体制の構築といった難題を解決しないといけないですね 

 

先日、動画投稿サイト「ニコニコ動画」を運営するドワンゴが、新型コロナウイルスの収束後も全社員約1000人を原則、在宅勤務とする方針を固めたとの報道がされました。

私のクライアントさんの中にも、同様に「営業マンを在宅勤務」にする方針を真剣に考えている社長さんが沢山いらっしゃいます。 

 

ただ、冒頭のように2つの課題が重くのしかかっているのも事実です。 

数社ほど、クライアント企業さんのオンライン営業会議に参加していますが、側から見ていても”困難な課題”と感じています。 

 

働く側は、どうモチベーションを維持するのか?

雇用する側は、働きをどう評価し、給与に反映させるのか?

 

この2大テーマは、在宅勤務を定着化させる際に、目を逸らすことができない課題となります。 

 

しかもアフターコロナには、これまでとは違う経営環境になることを念頭におくと、さらにこの2大テーマをクリアにしておかなければなりません。

 

連続的、形式的な仕事であれば、成果を図ることは比較的簡単ですが、非連続かつ柔軟性に富んだ業務を遂行する場合、評価のモノサシがそもそも存在しないことが多いからです。 

結果、評価が不透明であれば、働く側のモチベーションも下がります。

なんとかしなくてはなりません。

 

 

と、藤冨も問題意識を抱えながら「在宅勤務における評価システム」は極めて難しいのではこのコロナ騒動が起きた時から頭を抱えてきました。 

 

営業は短期的成果と中長期的な成果があり、両者のバランスが事業成長には欠かせないためです。 

 

短期的成果は簡単です。 

数字で計測できますから。 

しかし、中長期的な成果は目に見えにくいもの。 

 

これをどう評価するのかこれが難題です。 

 

その答えを一つようやく見つけることが出来ました。 

定性的な評価ですが、参考になるハズです。 

 

以前にも本コラムで取り上げた二宮尊徳の着眼点です。(以前のコラム→ 「第369 二宮尊徳に学ぶ成長発展の下地づくり」 

 

二宮尊徳は、年貢が1/5にまで落ち込んだ小田原藩の領地の再建を藩主自ら依頼され、見事に復活をさせた「秀逸な再建人」です。 

 

尊徳は、貧困に陥っていた原因を「道徳心の欠如」であると結論づけました
そして、復興への道は、この道徳心を取り戻すことにあると見定めたのです。
「仁愛」「勤勉」「自助」この3つの徳を徹底して行うことで、貧困から脱し、成長できると信じたわけです。

 

では、この徳をどう評価したのか? 

あるエピソードが、とても参考になります。 

 

給与の支払日に、いつものように一人ひとりの評価が、各自の手柄や分担に応じて申し渡された時のことです。

一番高い評価で報いられたるものとして名があがったのは「根ほり」をする老人でした。

 

一日の稼ぎが「20セント」の時に、なんと75ドル(=7500セント)もの金額が支払われたのです。

 

受け取った老人は、「これはこれは。私はこのように年を取っていますから一人前の労賃さえもいただく価値はございません。」何かの勘違いでは? と、受け取りを辞退しようとします。 


ところが、尊徳は「根を取り除いてくれるおかげで障害物がなくなり、他の作業がとてもはかどっています。誰もやりたがらない仕事を誠実にこなしてきた天からの贈り物です」と、老人が、将来にわたって安心して暮らせるよう施したのです。 

 

老人は号泣したそうですが、それを見ていた周りの人たちも強い感銘を受けたそうです。 

もちろん、反対意見もあったようです。 

しかし、尊徳にとっての最高の働き手とは、一番多くの働きをするものではなく、一番良い心掛けで働くものと定義していたので、判断が揺るがず、周りのものも説得できたのです。

 

成果主義とは、直接的な成果だけではなく、このように将来の成果に確実に結びつく地味な仕事にも目を向けるべきだと私も感じています。

 

「仁愛」「勤勉」「自助」この3つ徳から発動された【仕事】を高く評価するには、評価者自身が律していないとできない技ですが、アフターコロナを想像すると避けては通れない評価方法だと確信しています。 

 

次に、働く側のモチベーションをどう維持するのか?というテーマについては、

前々から私が懸念している「働き手の勘違い」を先に解消する必要があります。

 

パワハラだとか、ブラック企業だとか言う単語が出始めたあたりから、働き手の意識は大きく変わったと藤冨は強く感じていました。

 

私が20代だった30年前は、まだまだ働き手の勤勉さは高かったと思い出します。

 

しかし、残念ながら今はその勤勉さが失われつつあります。

権利ばかりを主張し、義務を果たさない働き手が急増しているようにも感じています。

 

そのツケは、間違いなく己(働き手)に戻ってくるはずです。

それが自然の摂理ですから、間違い無いでしょう。

 

もしも、ツケが回ってきたときに…

いえ、そのツケが回ってくる前に、働き手自らが意識改革をすれば、次の時代でも活躍できる人材になると感じています。

 

そもそも「モチベーション」と言うのは、自らの心の中から発動されるものです。 

 決して、外から働きかけられるものではありません。

それこそ、これまでのように会社に出勤しているのであれば、外から働きかけられるモチベーション施策が通用しているように見えるかも知れません。

しかし、在宅勤務となればそれが「馬の耳に念仏」であったことが露呈するのは火を見るよりも明らかです。

外発的なモチベーション施策は、過去の旧石器として位置づけられるハズでしょう。

 

したがって、これからは働き手自ら発動されるモチベーション以外は通用しなくなります。

 

 『会社の理念や哲学に共感し、自らの使命感を持って、その世界を実現させようとする気持ち。』

 

このような本質的なモチベーションの源泉があって初めて、道徳的に会社にも社会にも接することができるのではないでしょうか。

 

在宅勤務だけでなく、今後定着化するであろう「会社と個人の緩やかな結び」には、働き手の意識改革と経営者の正しい評価方法が必要不可欠になるはずです。 

 

御社では「道徳心をベースにした評価システム」をすでに取り込んでいますでしょうか。 

そして、そこで働くスタッフの方達は、「会社の理念や哲学に共感し、自らの使命感を持って、その世界を実現させようとする気持ち」を持って働いていますでしょうか?