「いま営業部隊が冬眠状態になっています。外出自粛令で、営業先がみな休業対象となっていますが、これが解除されてからどう動くべきか、いろいろ思案しています。ちょっと相談に乗ってもらえませんか?」
外食、ホテル・旅館、学校、塾、ボウリング場、ゴルフ練習場、遊園地、スポーツクラブ、映画館など、広範囲な商業施設を対象に、政府が出した「休業要請」。
これに伴い、対象業種に商材を販売しているB to B企業にも、大きな打撃が加わっています。
B to C企業も悲痛な現状に晒されていますが、そこの取引先企業も同じように営業活動がストップし、負の波及効果に苦しんでいる状況が続いています。
いつ収束するのか、わからない状態の中で目先の不安に支配されがちですが…
こういった時こそ、中長期的な視点を持って、一歩先の打ち手を視野に入れつつ、目先の対応を着実に手当てしていく必要性があると感じています。
平時であれば、新しい打ち手は「半歩先」の時代に焦点を合わせることが定石です。
しかし、今回のコロナ騒動は平時ではありません。
大きな構造変化の狭間に位置付けられます。
こういった時代は、一歩先の時代を捉える必要があります。
では、その一歩先のアフターコロナ後の経営環境はどう変化するのか?
まず、元通りには戻らない…と悲観論で捉えておく必要があると藤冨は考えます。
私自身も、半数以上の予定が「オンライン会議」に移行しておりますが、全く不都合を感じていません。
逆に移動時間が大幅に減ったことで時間効率が向上しています。
ゆとりの時間も増え、プライベートも充実してきました。
ここ7〜8年味わったことのないライフスタイルに満足しています。
クライアント企業さんの大半も、テレワークを導入し始め数週間で定着し、これまでの勤務スタイルに疑問を持ち始める人が急速に増えている印象を受けています。
事務所縮小や、撤退を始めた企業さんも出始め、いよいよ2017年から政府が推し進めてきた「働き方改革」が強制的に実現されつつあり、不可逆的な流れであると認識できるようになってきました。
今は、外出自粛令の発動によって都市部の人口が極端に減っているためもありますが…。
藤冨の事務所がある茅場町では、ランチの時に並んで入れない繁盛店が、12時のピークタイムなのに3人しかいない…など目をふさぐような光景が日常的風景となっています。
これがどこまで回復に向かうだろうか…
と思いを張り巡らせてみるものの、テレワークの定着などを想定すると、決して元通りには戻らないと感じざるを得ません。
東京一局集中の問題も50年以上前から政府主導で旗揚げされてきたものの成果につながらず現代に至っています。
しかし、このコロナ騒動を機に地方に暮らす人々が増える可能性も高まるのでは?と感じます。
少なくとも、出勤をしない人たちが増え在宅勤務が定着すれば、都市部内での昼間人口の分散化が進むことは間違いありません。
つまり「物理的分散化」による「マーケットの縮小」は現実味を帯びてきたわけです。
また、今回私が強く懸念しているのは、コロナによる死亡者よりも、経済的理由などによる自殺者の増加です。
「厚生労働省の人口動態統計に基づく自殺者数の推移」を見ると分かりますが、戦後自殺者が増加した山は、「第二次世界大戦後の混乱」「プラザ合意後の円高不況」そして「バブル崩壊」の3つになります。
いずれも、不況をショックにした先行き不透明感の増大が原因です。
今回のコロナショックは、上記3つの不況・社会的不安定感よりも強烈であることが予想されています。
国際通貨基金(IMF)は、新型コロナウイルスの感染拡大で、世界経済は1920~30年代の大恐慌以来最悪の同時不況に直面していると発表しています。
不謹慎な発言ですし、不幸な未来を予測したい訳ではありませんが…
これは歴史が示した現実ですから、避けて通ることはできないものと藤冨は認識しています。
間違いなく、この1〜2年で多くの方がコロナショックの間接被害で尊い命を失うことになるでしょう。
結果、消費意欲の減退によるマーケットの縮小は、これから数年続く構造変化として捉えておいた方が無難かと考えます。
そう考えると、一歩先の時代に自社の事業を適合させるためには、市場縮小を前提とした「損益分岐点の引き下げ」で、小回りの効く経営を実践する必要があります。
変化の時には、小さなトライ&エラーを繰り返し行うことが大事で、そのためには、意識してこれまでの常識を逸脱させることが大事。
実際、100年続く老舗企業の統計を見ると面白いのですが、規模の小さな会社の方が老舗企業に多いことがわかります。
規模のヒエラルキーの絶対数に比例しているという見方もできますが、それでも老舗企業の絶対数から見れば、規模の小さな企業の割合が多いのは間違いない事実。
好不況を繰り返した長い歴史の中で、生き延びてきた企業は、危機の時には、極限まで損益分岐点を急激に下げ、さらに柔軟に自社の事業を次なる時代に適合させてきたからに他なりません。
(出所)信用調査機関の2019年企業データを基に株式会社ボルテックス100年企業戦略研究所が作成
新しい時代は、「物理的分散化」「マーケットの縮小」を主軸として、在宅勤務の増大による新しい消費欲求が芽生えてきます。
- 在宅勤務による「居住空間の充実」
- 運動不足による「ストレス解消」「手軽な運動グッズ」
- 社会との分断による「つながり欲求の増大」
- 自己管理、コントロールを促すコンテンツやツールへの欲求
- 自己実現や社会貢献意識を満たすコンテンツやツールへの欲求
- 成果主義への移行を促すコンテンツやツールへの欲求
- 手軽、安価に余暇を充実できるコンテンツやツールへの欲求
など、変わりゆく社会に置かれた「個人」や「企業」が何に困り、何を欲するのか?
それを読み切り、自社の事業を適合させていくこと。
損益分岐点を引き下げながら、次なる時代に最適化した事業運営をトライ&エラーを経て見つけ育てた企業が次なる時代の勝者となるでしょう。
御社は、次なる時代をどう捉え、どのように今を乗り切っていきますか?