とことん「本質追求」コラム第404話 非効率こそ、効率化の源泉となる

 

 

 

『今の時代、飛び込み営業なんて効率がわるくないですか? 反響営業にしましょうよ』

 

これまでにないサービスを世に広めようと、社長陣頭指揮のもと営業戦略を組むお手伝いをしていた際、現場からブーイングが入った模様です。

 

冒頭の通り、飛び込み営業を現場に指示したのですが『非効率…』だと社内で騒いでいるとの連絡が社長から入ったのです。

 

で、彼らは何をしているかと言うと、何週間もかけて提案書なり注文書などの「資料作成」をするために机にかじりついているとの事。

社長も呆れ果てて、口が開かなくっているとのことでした。

 

それはそうです。

既存商品の販売戦略の見直しであれば、デスクワークはある程度必要ですが、今回は全くの新規商品。

 

顧客も当然「ゼロ」ですし、売り手の我々がイメージできるのは、「恐らくこのサービスから得られるメリットを欲するに違いない…」という仮説しか持っていません。

 

先週のオンラインセミナー(ZOOM)を視聴してくださった方は、深い理解をして頂けると思いますが、サービスを受ける「顧客メリット」を謳うだけでは、顧客の購買行動に火をつけることは出来ません。

顧客メリットではなく「顧客利益」を的確に伝えることで初めて反響を得られるのです。

 

この顧客利益を表現できない状態で反響営業をしたい!なんていうのは、はっきり言って夢物語です。

営業現場で「揉まれること」を恐れる負け犬の遠吠えでしかありません。

 

誤解を受けない様に予めお伝えしますが、私は「反響営業」を否定しているわけではありません。

逆です。反響営業で成果が期待できるだけの「材料」が揃っていれば、率先して行う「反響営業支持者」です。

 

しかし、材料が揃っていなければ、反響営業の道具は作れません。

その材料とは、顧客の購買心理にまつわる情報です。

 

つまり顧客が「欲しい・買いたい」と感じるセールスポイントが見えないままでは、道具を作っても無意味になるだけ。

 

私だけでなく、経営者はおしなべて時間の浪費が大嫌いなのです。

 

例えが良くないかも知れませんが、鯛が好きな「エサ」と、マグロが好きな「エサ」と、タコが好きな「エサ」は違うはずです。

さらに、最適な釣り竿も違えば、リールやオモリやテグス(糸)など、仕掛けも全て異なります。

ポイントも違えば、釣りをする時間すら違います。

 

同じ「釣り」と言っても、釣りたい魚によって、全く別もの扱いになります。

 

よろしいでしょうか。

「反響営業」も一緒です。

 

誰が(どんな魚)、どんなセールスポイント(エサ)に響くのか。

その人たちは、どんな媒体(ポイント)に接触しているのか。

いつが暇で、いつ情報に深く接触してくるのか(釣りをする時間)。

 

などなどの「材料」がわかって、初めて「反響営業」の道具を作り込めるのです。

 

釣りと営業を同じにするのは失礼だ!という声もあろうかと思いますが、私がお伝えしたい内容をしっかりとイメージしてもらいたいのでご容赦ください。

 

 

上記のプロジェクトは、まだ顧客が「ゼロ人」です。

 

もちろん、売れる商品(サービス)を生み出すために、押さえるべき原理原則はしっかりと押さえてきました。

しかし、商品とは異なり、サービスというのは、変幻自在に要件を追加できます。

したがって、多少詰めが甘くても、どんどん営業現場に出て、どの様な価値を提供すれば顧客は「欲しい、買いたい」と思ってくれるかを知る必要があります。

魚に「どんな時に、どんなエサを食べたいの?」と聞くことは出来ません。

しかし、人なら聞くことが出来ます。

 

だから「飛び込み営業」で、まずは売ってみて、お客さんの反応を観察するのです。

売り込むことが目的はありません。

売れたら、売れたで購入に至った「背景」「動機」「目的」などをしっかりとヒアリングする。

断られたら、断られたで、断った理由をしっかりと掌握していく。

 

売れる理由、売れない理由を明らかにしたら、改善案を持って、また新規の飛び込みに尽力する。

 

以前と商談相手の反応が変わったのか、変わらないのか。

 

この蓄積があって、初めて「ターゲットに響くセールスポイント」が明確になっていくわけです。

 

釣りたい魚がいるポイントと採食時間、好みのエサと、釣り上げるために最適な仕掛けがわかっていると、釣果は期待できます。

しかし、魚の習性を知らずして、わざわざ釣りに出かけても、釣果が期待できないのと一緒です。

 

だから、まずは「知ること」から始めなくてはなりません。

 

その旨を上述の企業の営業責任者に電話で伝えました。

 

すると…

 

「なるほどです。そういう目的で“飛び込み”とおっしゃっていたのですね。それなら分かります。まずは情報収集のための訪問をするのですね!」と理解を示してくれました。

 

しかし、その口調から私は「彼は逃げ腰になっている!」と感じたために、さらにツッコミを入れました。

 

「情報収集が目的ですが、本気で売ってきてください!」と。

ある意味、ノルマを掲げたいくらいの勢いで告げたのです。

 

その理由は簡単です。

 

 

「こんなサービスがあったらどう思いますか?」程度の軽いヒアリングでは、ホンネが出ないからです。

 

ホンネのない情報なんて、ゴミ同然です。

我々は民間企業。行政ではないのですからゴミの収集義務はありません。

 

本当に使えるダイヤモンドの原石が欲しいのです。

 

そのためには、本気で売り込まないと、本気の「断り文句」が出ません。

買ってくれたら、その本気のどの部分が響いたのか…

それが知りたいのです。

 

 

それがわかって初めて、「ホームページ」「チラシ」も「DM」などの反響営業のツールができるのです。

 

まずは、すぐに修正ができる「アプローチブック」や「提案書」で商談相手の反応を観察し、セールスポイントが浮き彫りになったら、ホームページ、チラシ、DM作りに本格的に取り組めば良いのです。

 

もちろん、営業段階で「ホームページ」も「チラシ」もない… というのでは営業にならない、という商品もあるでしょう。

それでも、顧客の購買行動特性がわからないうちは、一夜城レベルの代物で対処すべきです。

何週間もかけて作るべきものではありません。

 

 

新規事業の成功確率は1000、3つと言われています。

1000個のうち、3つ当たる確率という意味です。

 

しかし、絶対に成功させる!という執念があれば、顧客を知り、顧客に適合した商品に改良し、さらにセールス・アプローチも顧客の目線に沿ったものに、どんどん改良できます。

この執念が新規事業を成功させるのではないでしょうか。

 

「君子豹変す」

という諺があります。

 

徳の高い立派な人物は、過ちに気づけば即座にそれを改め正しい道に戻るものだということ。また、状況によって態度や考えを急に変えるものだという例えですが、これは企業活動も一緒ではないでしょうか?

 

御社では、真摯に顧客と向き合う営業活動をしていますでしょうか?