先日、講演会終了後ご質問頂いた業界が気になって気になって仕方ありません。
ここで具体的な業種についてお話しても問題はないのでしょうが、ご質問頂いた方の競争優位性を保つために、あえて秘密にしておきます。
ご質問頂いた方の業界は、誰もが知る典型的な斜陽産業で、国外からの攻勢も半端じゃなく、かつ国内の需要もおもいっきり右肩下がり。
どうあがいても、さらなる成長産業への転換は難しそうです。
いまの時代、顧客からの要望を国内で受け、製造指示をインターネット経由で瞬時に国外に飛ばし、数日後には客先に納品する物流体制までもが構築されています。
人件費は日本の20分の1という国も存在し、通信コストは限りなくゼロに近い。
コスト競争に陥ってしまうと、日本企業ではもう鼻血すら出ない状況になっている状況です。
だからといって、このまま指を加えて傍観していれば、市場退場を突き付けられてしまいます。
いかに生き残り、成長できる分野を見つけ出すのか。
斜陽産業の方とお話すると、笑顔でしゃべれなくなるほど「未来を創造」する難しさを痛感させられます。
しかし、答えは必ず”足元”に転がっています。
と言うより、足元以外で、新たなビジネスアイディアを出そうとすると、必ずと言っていいほど失敗します。
●今、自社と取引のある企業は、ウチの何を評価しているのか?
●今、自社が顧客に提供している商品のベネフィットの中核はなんだ
ろうか?
●同じベネフィットを提供している他産業は無いだろうか。
などなど、自社と顧客と産業界という3つの軸で俯瞰し【自社の存在領域】を見つけ出すことで、自社独自の新たな成長分野を作り出すことが出来ます。
そもそも斜陽がなぜ起こるのか・・・
その本質は【他業種からの侵食】にほかなりません。
であれば、自社が【他業種に侵食】することでしか、成長ベクトルを描くことは出来ないということになります。
15年前、外食産業にシステムを販売していた時、よくチェーン店の経営者とこんな会話をしていました。
「今、中食(なかしょく)がブームになっていますけど、この兆候は危険ですね」
「えっ、中食? あぁコンビニとかスーパーの惣菜のことね。全然平気だよ、競争相手じゃないし。」
「でも、胃袋は一人3回制限ですよ。中食に1個取られたら、残り2個になっちゃいますよ」
「そもそも外食と、中食は違うよ。こっちはサービスがあるからね!」
と、多くの経営者が強い問題意識を抱えていませんでした。
しかし、その結果、、、
以前30兆円あった市場が、昨年23兆円へと縮小してしまいました。
競争の定義を「胃袋争奪戦」と捉えていれば、もう少し状況は変わっていったかも知れません。
よくセミナーでもお話しますが、自社が何屋さんなのか?
顧客の立場で問いなおす事が、いま多くの業界で求められています。
元気のある外食産業の戦術がやっている事を見ると、料理が残っていたら、再調理をして別な料理として提供するなど、中食業界の企業には採用不可な戦術で戦っています。
この会社は「気の利いたお母さん代行業」として事業を定義しているのかも知れません。
斜陽産業に限らずですが、成熟期にいる業界は「事業の定義」を真剣に見つめ直さなければ、衰退の一途にまっしぐら・・・という状況に陥ってしまう可能性が高いです。
経営者は、営業マンの尻を叩く前に、自社が何屋で顧客をどこに導こうとしているのか。
ブレないようにしっかりと定義をしてから、営業マンにハッパをかけて、業績拡大に邁進して欲しいと思います。