「先日のポジショニングマップのコラムはとても面白かったです。ウチでも作りたいのですが手伝ってもらえますか?」
かれこれ5年前からコラムを読んでくださっているという方から、嬉しいメールを頂きました。
しかし残念ながら、現在複数の新規プロジェクトが動いており3月まで新規のプロジェクトはお手伝いできない状況です。
なので、取り急ぎ本コラムにて作り方のコツをお伝えすることで、お許しを願いました。
皆様も是非ご参考になさってください。
ポイントは3つです。
①. X・Y軸の設定を顧客視点で決定すること。
②. 自社の強みが浮き彫りになる軸を見つけること。
③. 数をこなすこと。
ポジショニングマップを作成する上で重要なのは、前回のコラムにも書いた通り、①の「X・Y軸」の設定がキモを握ります。
機能や性能、事業規模、など売り手から眺めた概念で軸を決めるのはご法度です。
あくまでも「顧客の購入選択基準」で設定することが最重要ポイントとなります。
この「購入選択基準」を決めるときも3つのポイントがあります。
❶. 「欲しい、買いたい」という欲求に根付いている
前回のコラムの例のように「中小企業」「大企業」とか、「中国製」「日本製」、「多機能」「シンプル」など、欲しい、買いたいという欲求にリンクしない軸の設定は禁物です。
顧客の顔が見えるような概念で設定することが大切です。
また、「多機能」など、顧客の購入意思決定要因にならない概念も避ける必要があります。
「声で操作ができる」とか、その機能を欲しがる顧客像や利用場面が思い浮かぶような概念を絞り出して下さい。
❷. 正反対の概念で設定する。
例えば、薬で考えると…
即効性と根治は、反対概念です。
しかし、双方ともに、それぞれの顧客の欲求が存在します。
この時の注意点は、どうしても自社を良いポジションに持って行こうと、反対軸の設定を曖昧にしてしまうケースを時々見受けます。
うちは根治の素晴らしい商品を作っている。
そもそも即効性のある薬は良くない!
などと、正義感をむき出しにして『根治の反対軸は“まやかし”だ!』などと、反対軸を歪曲してしまうケースなどです。
笑ってしまうかも知れませんが、プロジェクトに入ると当の本人たちは真剣な顔でこのような発想をすることがあります。
ポジショニングマップは、競合相手の商品を貶(けな)すことが目的ではありません。
あくまでも、顧客の選択軸から、選ばれる存在として市場のポジションを確立させるための思考ツールです。
競合も頑張っている。ちゃんとその市場もあるぞ!という広い心で軸を設定すれば、正しく市場を俯瞰(ふかん)することが、出来るでしょう。
❸. 時代が背中を押している。
現代を表すキーワードの影響を受けている欲求であれば、なおベストです!
「少子高齢化」「若者の現実思考」「レンタル思考」など、マスコミが盛んに取り上げる記事は、それだけ私たちの脳みそに刷り込まれています。
買い手の思考回路は、マスコミや企業の宣伝(結果としての商品)が作ると言っても過言ではありません。
市場の認知度が高いキーワードで売り込みができれば、販売効率が高まるのは自然なことです。
この3つのポイントを押さえながら、「X・Y軸」が設定できれば、市場を客観視できる「業界地図」が出来上がります。
②. 自社の強みが浮き彫りになる軸を見つけること。
競争環境の中から、選ばれる存在になるための業界地図づくりがポジショニングマップになりますが、自社の得意や強みに根付いていないところにポジションを取ろうとすると、一瞬の売上は上がっても、長い目で見るとドツボにハマります。
中小企業がポジショニングマップを作る際、基本的には「ゲリラ戦で勝てるような業界地図づくり」を目指す必要があります。
この戦なら必ず勝てる!という得意や強みに根ざすことで、成果が上がりやすくなります。
モスバーガーがマクドナルドに戦いを挑む際、マクドナルドは絶対に手を出さない手作り感や、ライスバーガーなど和風テイストなどのポジションを取っていきました。
このような話をすると、生産性が悪い!などと、反論する人がいますが、売上あっての生産性です。
まずは買い手から歓迎されることを一番に考えてください。
本コラムでも、何度も何度も取り上げていますが、ドラッカーが言う企業の第一の目的は「顧客の創造」です。
生産性向上は、あくまでも利益を出すための手段です。
手段にとらわれ、目的を見失ってしまってはいけません。
最後に、価値あるポジショニングマップを作るために必要不可欠なことがあります。
それは、数をこなすことです。
徹底した「顧客思考」になるためには、やはり訓練が必要です。
③. 数をこなすこと。
「顧客思考になる」「買い手の視点から商品・サービス(事業)を眺める」「買い手の立場になって物事を考える」…。
言うは易し、行うは難し の代表例だと私は思います。
これまで様々な業界の企業さんと一緒に「売上拡大策」を考えてきましたが、最初から「買い手」とのチャンネルがあっているプロジェクトは、ほぼ皆無です。
事実、チャンネルがあった瞬間に売上は上がり始めますから、最初はズレていたと言わざるを得ません。
買い手の気持ちになると言う、非常にシンプルな思考回路なのですが、実際にやるのは、とても難儀です。
普段から訓練していないと、なかなか的を射た「購買決定要因」を突き詰めることはできません。
そこでオススメなのが、身近な商品やサービスを使って、購買決定要因を洗い出してみることを習慣づけることです。
ビールの購買決定要因って何だろうか?
「キレ」と「コク」。「ライトテイスト」と「ストロングテイスト」じゃないかな…。
ミネラルウォーターの購買決定要因って何だろう?
「硬い水」と「柔らかい水」。「ボトルのオシャレ感の高い、低い」で選ばれているんじゃないかな…。
コピー機の営業マンが来たらコピー機の購買決定要因を聞いてみて、自分の価値基準と比較してみる…。
私たちは、普段の購買行動をほとんど無意識に行なっています。
感情の好き、嫌いで判断していると感じています。
しかし、その好き、嫌いや無意識の購買行動にも、ロジックが働いています。
このロジックを常に考えていると必然的に「顧客思考」が刷り込まれていきます。
的を射たポジショニングマップの軸を作るためには、必要不可欠な顧客思考。
あなたも、普段から「購買行動」を分析する習慣を身につけてみませんか?