とことん「本質追求」コラム第371話 現場でわかった「新商品」が売れない2つの理由(2)

 

 

 

「確かに、商品も良くできていて、営業スタッフも皆真面目なのに、新商品が売れないことってありますよね」

 

先日のコラム「第370話 現場でわかった「新商品」が売れない2つの理由(1)」をご覧になった社長とコラムを振り返りながら近況を聞かせていただきました。

 

同社も、数年前は新規事業が苦戦していましたが、様々な施策を同時並行で一気に進めた結果、順調に2本目の柱が立ち上がっています。

 

同社社長と5年前に意気投合したのは、藤冨の「変化、成長、進歩を促すには、教育よりも環境に着眼することが大事」という考え方に共感してくれたためです。

 

各人それぞれが自らの変化、成長を望むのであれば、教育は効果的です。

しかし、全員が全員「変化・成長」を望むわけではありません。

 

そもそも生物としての保存欲求の高い人の方が割合的には多いのですから、変化は好まない人が多いと藤冨は認識しています。

 

今日解説します「初動のエネルギーを軽減させて、新しいことに取り組む心理的障壁を低くしてあげること」も、実はこの前提条件をベースにしてアプローチの方法を考え出しました。

 

と言うのも、多くの経営者は、自ら道無き道を切り開いてきているだけに、人間は誰でも開拓者精神を持ち合わせていると思いがちです。

なんでもトライして、問題が起きたらそれを突破する方法を考えれば良い。

諦めずに次々と壁を乗り越えていけば、必ず結果は出るよ!と…。

 

しかし、現実は違います。

「新しいことに失敗覚悟で取り組み、試行錯誤をしてでも結果を出すよ」という人は間違いなく少数派です。

 

私が推奨している波及営業の下敷きとなっている「普及学」では、新しいイノベーションに初期段階で反応する人は、2.5%と言われています。

 

これは商品や文化の普及していく過程を研究した学問から導き出された数値です。

しかし、私は様々な業界の企業で新規事業に携わらせてもらった経験上、新規事業に意欲的に取り組む人の割合も近似値が出るのではないだろうか、と感じています。

 

ここで一つ考えなくてはいけないことがあります。

「なぜ、人は新しいことに取り組まないのだろうか?」という原因の追究です。

 

  • 失敗すると恥ずかしいから(自尊心の保全)
  • 失敗すると評価が下がるから(自己防衛欲求)
  • 無駄な労力はかけたくないから(自己保全欲求)

 

などが考えられます。

 

それでも、組織が「新商品の売上増進を経営陣は期待している」ことを社員が認識すれば、当然ながら「自己承認欲求」を満たすために、結果だけは出したいと願う心理が芽生えてきます。

 

でも、前例がないから、何をどうやって進めたら良いかわからない…

 

「失敗する恥、評価が下がるリスク、無駄骨を折るリスク」と「売れた時の評価」を天秤にかけ、どちらがベストな選択か葛藤をし始める…。

 

そして「売れた時の評価は一瞬。失敗した時の評価は一生」と判断されれば、もう個人にとっては新規事業に取り組むのはリスクでしかないわけなのです。

 

まずは、この前提を押さえることが大切です。

 

そして、その前提に則った上で「どう対策を打つか?」を練る必要があるわけです。

 

一つは、失敗した時の評価を明確にし、自尊心が保てるようにすることが大事です。

 

そして、2つ目が、各営業マンが「前例がないから、どうやって進めたら良いかわからない」という状況を「自分で考えろ!」と切り捨てることなく、汲み取ってあげることがポイントです。

 

いえ、そうしないと組織は中々動いてくれません。

 

それが「初動のエネルギーを軽減させて、新しいことに取り組む心理的障壁を低くしてあげること」を対策案にあげた真意です。

 

初動のエネルギーを軽減するには、手前味噌ながら「波及営業法」のステップを着実に進めていくことが有効です。

 

  1. 自社が有利に戦える市場に絞り…
  2. 波及効果の高い「ネタ」を仕込み(※)
  3. 仕込んだネタを武器に対象市場にマーケティング、セールス活動を集中させていく…

 

この3ステップをセンスよく整えていくことで、初動のエネルギーを軽減させたマーケティング・営業活動を展開することができます。

 

 

自社が有利に戦える市場に絞ることは、あらゆるメリットを生み出します。

 

  • 営業対象を集中することで「対象市場の課題・問題点」や「欲求」がクリアになり、的確な営業活動ができるようになります。

 

  • 結果的に広告費、販促費、営業活動費が低減でき、高い営業利益率を上げることが可能になります。

 

また、波及効果の高い「ネタ」とは、以前藤冨が提唱していた「あの人(法人)が購入した商品なら、優れた商品に違いない…と思われるようなモデルユーザーを神輿に担ぐ」概念を包括していく考え方です。

単刀直入に言うと「見込み客が“すごい商品かも!”と気づきを得る“ネタ”を仕込む」わけです。

これで営業効率をグンと引き上げることが可能になります。

 

そして、最後にそのネタを広告や販促活動に展開し、営業活動で最も難易度の高い『見込客の集客』に活用し、営業効率を高めていくのが、波及営業のめざすところです。

 

これまでに様々な業界でこの波及営業法の導入をトライしてきましたが、このステップ がプロジェクトXやガイアの夜明けなどのような魅力的なストーリーに出来上がった時は、極めて高い確率で結果が出ています。

 

その一番の理由は、営業の皆さんが初動のエネルギーが軽減された中で、存分に力を発揮できているからでしょう。

 

「前例がないから、何をどうやって進めたら良いかわからない…」

 

社長に面と向かって中々言えない本音ですが、多くの社員は苦しんでいます。

これは過去の経験上間違いありません。

 

このような状況では、いつまで経っても結果は出ません。

 

御社では、新規事業の立ち上げや新商品の発売時に、初動のエネルギーを軽減させる策を練り上げていますか?