とことん「本質追求」コラム第351話 組織を強くする朝令暮改のススメ

 

 

 

「社員から朝令暮改は、組織が混乱するので止めてほしい。って、言われました。確かに…と思う節はありますが、なかなか治らなくて…」

 

 

先日、クライアント企業の社長さんと飲んだ時に、苦笑いしながらお話しされた軽いお悩み(?)。

 

深刻に捉えていらっしゃる様子ではなかったのですが、私は「朝令暮改推進派」なので、「治す必要はないですよ!」と真剣にお伝えさせて頂きました。

 

ただし、同じ朝令暮改でも、社員に伝える内容を変えるだけでスムーズに浸透するコミュニケーション技術と、反発を食らうだけの伝え方があるのは事実です。

 

どうせ、目的が一緒なら、お互いに気持ちよく朝令暮改を受け入れたいものです。

 

そもそも論として、私が「朝令暮改推進派」である理由は、環境変化対応力組織力強化が同時に図れる点で、結構なメリットがあると感じているからです。

 

環境変化が変われば、それに適応するために、生きるべく選択肢も変わっていくのは、誰しもがイメージする通りです。

 

しかし、これが渦中の中にいると、「環境変化」を認めたくないという人たちがある一定数いるのも事実です。

いえ、一定数というよりは大多数であることが現実社会ではないでしょうか。

 

外にいると気づけるけど、中にいるとわからない。

 

これは生物としての生存本能が起因しているのでしょうから、ある種仕方ありません。

 

それでも、リーダーとして「環境変化」が起きているから、規定路線から外れて、新しい意思決定をすべきだ!と思えば、断行するのが真のリーダーです。

 

ここでその断行方法が問われます。

 

結論だけ伝えて、「こうすべきだ!」という新進路だけ社員に説明しても、社長の気まぐれとして捉えられてしまいます。

 

会議が終了したら、社長の聞こえないところで「うちの社長は優柔不断なんだよ」「すぐに思いつきで言うから収拾がつかなくなるんだよ」とか、結構好き勝手なことを囁きあっているものです。

 

自分自身が変化を拒んでいたり、仕事量が増えることにヘキエキしていたりするだけなのに、何かしら他人のせいにしたがるのが、まぁ人間というものなのですが…

 

これでは、社長自身は信頼を失い、社員は他責思考が強化されるだけで終わってしまいます。

 

ほとんどの場合、新しい取り組みというものは「試行錯誤」が伴うものです。

絶対に成し遂げたい目標や目的を社長と社員が一緒に描けていれば、前向きな試行錯誤により、突破口は開けるものです。

 

しかし、仕事に対して斜めに構えた状態だと、ちょっとした失敗でも「やっぱりな…」と社員は呆れ顔で仕事を放り出してしまいがちです。

社長も社長でバツが悪くなり、積極的な試行錯誤を試みぬまま頓挫。

 

これでは、百害あって一利なしです。

 

仮に、事業がうまくいっても、他責思考のままで成功したので、「まぁ運が良かっただけだよ」と自信にはつながらず、組織力は弱体化していきます。

 

しかし、結論ではなく「我々が置かれた環境」という現実を見つめ直す話し合いから入れば、状況は一変します。

 

そもそも意思決定が変わるということは、何かしらの前提が変わったはずです。

 

その前提は、外部か内部環境のいずかであるはずです。

 

  • 環境が変化した。
  • 環境の本質を捉え直した。

など、前提が変わったからこそ、意思決定が変わるわけです。

 

 

この事実をしっかりと共有することで、結果的に意思決定が翻ったとしても、皆の理解が進んでいきます。

 

 

結論だけを言うと反発されるけど、結論を見直さなくてはいけない前提を伝えれば、納得しやすくなります。

 

日本のセブンイレブンの創始者である鈴木敏文氏の、「夏におでんを売る!」という意思決定も基本的に同じ概念です。

 

暑い季節に熱いものは売れない。

 

という常識のもと、「いいから夏に売ってこい!」と結論だけ言われても多く人は頭の中に「?」が浮かびます。

 

しかし、「夏におでんを売る」前提が、「複数人が集まる部屋で寒い思いをしている人が大勢いる」という前提があれば、「売れるかも」という期待が芽生えてきます。

 

営業マンの世界で言われる「売る理由づけ」というものです。

 

こうした「前提が変われば、行動も変わる」という認識が組織に芽生え、行動に移すことが「良し」とされれば、必然的に組織力は高まるはずです。

 

組織を最も弱体化させる「事なかれ主義」の真逆をいく文化が根付くためでしょう。

 

これだけ変化の激しい世の中です。

ドラッカーが予言したように、これから本当に「断絶の時代」が来るかも知れません。

 

いえ、溶ける国境、現金からデジタル通貨への移行、デジタル通貨以外にもあらゆる個人情報が管理できるテクノロジーの進展…

 

時代を大きく変えうる材料が整う中、間違いなくこれまでの延長線上に、新しい時代が描かれることはないでしょう。

 

ドラスティックに変わるはずです。

 

どのような世界がやってくるかは予想がつきません。

 

それでも…

だからこそ、変化対応力に優れた企業体質を築くことは、今 喫緊の課題だと藤冨は思うのです。

 

御社は、環境変化に対して果敢に立ち向かう組織文化を育まれていますでしょうか?