「私のこだわりが、全然伝えられていないじゃないですか。もっと前面に打ち出したいです。」
思うように立ち上がらない事業の再生をお手伝いするなか、時々経営者と衝突することがあります。
藤冨は仕事を請け負ったからには、売れる体制づくり、仕組みづくりを築かなければなりません。
社長は社長で、強い想いを抱いて事業に取り組んでおり、それを何とか表現したいと必死です。
ただ、売れてこそナンボの世界。
社長もそれは頭では分かっているし、一番願っていることでもあるけれど、起業というのは「壮大なる自己表現の場」であるために、手段と目的を混同してしまうことが時々あります。
そのため私は「売れる!」を出来るだけ論理的に説明し、理解してもらうことが最初の仕事となるわけですが、これは、言うは易く行うは難し。
当たり前のことですが、「売れないような取り組み」に知恵を絞っている人は一人もいません。
だから、自分の考えていることは「売れる取り組み」に集中していると思いがちになります。
しかも悪いことに「モノが売れない時代、開発ストーリーを前面に出して売る!」などの成功事例などがあるために、余計な混乱をしてしまいます。
冷静に考えて欲しいのです。
お客様は、なぜ対価を払うのか…を。
対価とは、読んで字のごとく「財産・労力などを人に与えまたは利用させる報酬として、受け取るもの」と定義されています。
これを顧客の目線から表現しなおすと「受け取る価値やメリットに対して、支払うもの」となります。
あまりにも当たり前のことを改めて言うとバカバカしく感じるかも知れませんが、ついついやってしまいがちなことなので、どうか改めてお読みください。
「お客様の関心ごとは常に“自分自身のメリット”にある」ことを。
そして、もう一つ脊髄まで浸透させておかなくてはいけないことがあります。
「人は、興味のあるなしを数秒で見分ける」ことを。
私は、セールスマンの経験以外に、ネットだけで商材を爆発的に販売してきた経験もしてきていますが、この2つの経験を行き来するなかで、絶対的な法則が存在することを確信しています。
その絶対的な法則とは、情報の接触時間を出来るだけ長くすることです。
顧客が、購買に至るまでには、心理的な遷移(せんい)が存在します。
- 興味のあるなしを切り分けるステージ。
- 自分のメリットに置き換えるステージ。
- そのメリットが本当に必要か、評価するステージ。
- メリットを享受するために、もっと他の代替案がないか比較検討するステージ。
- そして、そのメリットを受け取るに値する対価であるか、意思決定をするステージ。
と、順番を追って遷移しています。
一瞬で遷移するケースもあれば、ある程度の時間を経て遷移するケースもあります。
さらに、意識できる心理状態と、意識せずに遷移してしまう心理状態があります。
ただ、この大きな流れに沿って、商品やサービスへの初対面から、購買行動に至るのは間違いありません。
ここを逆算思考で捉えてみてください。
最終的に「購入」という意思決定の人数を増やすには、「他の代替案より魅力的だと思う人」を増やさなくてはなりません。
その前に、「必要性を感じる人の人数」を増やさなくてはなりません。
そして、その前に「メリットを感じる」を出来るだけ増やす必要がありますし、その前の「興味がある!」という人を増やさなくてはならないのです。
「じょうご」のように下に流れる人は、どんどん減っていくわけです。
だからこそ、最初のステージの人数を増やすことでじょうごの出口を大きくしていくわけです。
ホームページのアクセス解析は、これを「見える化」してくれるので、とてもわかりやすいです。
サイトの滞在時間。
閲覧ページ。
ページの行動フロー。
などから、心理状態を推測し、課題が浮き彫りになったら、その対策を施し、また結果を見て、評価をしていく。
この作業を続けることで「強いサイト」を作っていくのですが、アクセス解析をしていて、いつも驚くのはサイトを10秒以上読み込んでくれる人がいかに少ないか?ということです。
だからこそ、興味のあるなしを切り分けるステージに細心の注意を払う必要があるわけです。
話を戻すと、自分のこだわりや思想を、訴えてはダメということではなく、伝える順番が大切なのです。
言いたいことを我慢して、まずはお客様が受け取れるメリットを伝えるのです。
これはホームページの販売技術を通じて、体感したことですが、これは全てのセールス行動に当てはめて考えることが出来ます。
テレアポのスクリプトも、話す順番を最適化するだけで、アポ率が上がったり。
封筒に一工夫するだけで、ダイレクトメールの反応率が上がったり。
チラシのキャッチコピーを変えるだけで、申し込み率が向上したりするわけです。
顧客の購買心理の遷移に着目し、セールス情報のフローもそれに合わせて最適化する。
ガラッと結果が変わるはずです。
御社でも、セールス情報の提供フローを今一度見直しをしてみませんか?