『どうすれば、売れる営業マンになれますか?』
週2で社長を任されている会社の営業マンから真剣な眼差しで質問をされました。
素直で真面目。そして何よりも向上心があるので、成長の可能性を秘めた若者です。
でも、やり手営業部長の下についているので、自分との差があまりに大きく、ちょっと自信喪失気味。
どうすれば、先輩達のように商談相手を惹きつける営業トークを繰り出せるのか…その手掛かりが欲しかったようです。
そこで、逆に質問をしてみました。
自分の営業トークと先輩営業マンのトークは、何が違うのか。
さらに、売れている先輩と伸び悩んでいる先輩のトークの差はどこにあるのか?と。
彼には、商談に行くたびに商談レポートを書かせていて、その出来栄えはなかなかのレベルなので、観察力はあります。
なので、売れるトークと売れないトークの差を正しく認識できていれば、努力すべきポイントが明確になり、成長速度は加速するはずです。
彼の出した答えは、売れている先輩は『導入効果を伝えている』『他社事例を伝えている』と分析をしていました。
確かに間違いはありません。
しかし、自分は言っていないのか、また伸び悩んでいる先輩は、導入効果や他社事例は伝えていないのか?とさらに突っ込むと小声で『いえ、言っています…』と、明確な差を言い当てることが出来ない状態でした。
差が認識できていなければ、差の埋めようがありません。
努力するポイントがズレ、頑張っているのに成果に繋がらないという不毛な結果に終始してしまいます。
そこで、実際にロープレをやってみせました。
営業トークの骨格は、まったく一緒にして、藤冨と新人、立て続けにやったところ、彼はハトが豆鉄砲を食らったような顔で、確かに違います!と、明らかな『差』を認識したのです。
その「差」とは何か。
それは、相手の頭に映像が再現できる話し方をしているか否かの違いです。
とは言っても、どうすれば出来るのか、皆目見当もつかなかった様子なので、こう指導してみました。
「自分がまず、その状況下を頭の中で映像化してみなさい。その映像が映画のように展開していくので、その映像を相手に伝えるように話してみなさい」と伝えたところ…
彼の営業トークが、私の頭の中でも映像として再現されるようになったのです。
5分前の営業トークとは雲泥の差でした。
映像をイメージしながら伝える技術を知らない時は、大根役者が棒読みのセリフを話すような感じでした。
いくら感動的な物語でも、棒読みのセリフで言われたって、心はビクとも動きません。
しかし、その役になりきって感情を込めて話せば、そのセリフの裏側にある背景やイメージが伝わり、聞き手の心を揺さぶることが出来ます。
一流の役者は、その役になりきるために、その人が置かれた立場、感情、時代背景、さらには風貌から立ち居振る舞いまで、自分の中で明確にイメージしながら役を演じています。
今、NHKの大河ドラマで「せごどん」が放送されていますが、若い頃の西郷隆盛は、筋肉隆々でスッとした体格でしたが、維新後から西南戦争に突入するまでの西郷隆盛は、腹が少し出てきて貫禄ある体格へと変化していました。
おそらく役者の鈴木亮平さんの努力で、実際に太ったのだと思われます。
新人営業マンにもそれを伝えました。
鈴木亮平さんは、役を演じるために、歴史を勉強し、役になりきるために西郷隆盛の感情を自分なりに解釈し、凄まじい努力をした上で、演技をしているのでは? と。
で、自分は?
と問うたのです。
優れた先輩営業マンたちは、魅力的に営業トークを繰り出しますが、それは長年の努力の上で成り立っているものです。
一朝一夕で身につけた能力ではありません。
営業トークが上手いのは天性のもの、と切り捨てられがちですが、決してそうではありません。
聞き手が、脳内に映像をイメージでき、その物語が魅力的に展開されるように、試行錯誤しながら、営業トークを組み立てているのです。
意識しているか、意識していないかは別にして、優れた営業マンの会話を聞いていると、間違いなく映像化できるように語りかけています。
商品説明をする営業マンはダメ! と一般的に言われていますが、それはちょっと乱暴な切り捨て方で、実際は商品説明をしたって、それが生活や仕事の中で使うメリットがイメージできれば、最高の営業トークに生まれ変わるものなのです。
要は話し方。伝え方。
一流の役者のように、お客様になりきって、その商品やサービスを使うイメージをどれだけ魅力的に語り伝えられるか?が、商談の成否のカギを握るのです。
営業マンの育成は、もしかしたら「演劇の技術」が、そのまま活用できるかも知れません。
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