「そもそも、差別化を考えるのが難しいんですよ…」
先週のコラム「成功する営業戦略は細部まで映像で描ける」を配信後、同じようなコメントを複数の方から頂きました。
細部を詰める重要性は理解出来たけど、そもそもの差別化アイディアが出ない…というものです。
確かに、差別化を考えるのは大変なことです。
一朝一夕で思いつくほど簡単なことではありません。
頭脳労働は、肉体労働の5倍疲れる…とも言われていますが、たしかに疲れるものです。
肉体労働も大変ではありますが、仕事が終わればOFFになり疲労の蓄積はされません。
しかし、頭脳労働は解決が導きだされるまでOFFになることがありません。
ずっと脳みそにこびりつき、考え続けて数日、数週間、数ヶ月経つと、ものすごいフラストレーションが溜まってきます。
それを解消するため、集中してアウトプットを出そうと根詰めると、間違いなく吐きそうになります。
「頭がウニの状態になるまで考えろ!」
と言いますが、整理がつかずグチャグチャになった状態からでないと、優れたアイディアは、出ないものなのかも知れません。
アイディアの源泉が「異なるものとの組み合わせから産まれる」という事実から見れば、それがわかります。
しかし多くの人は、この考え続ける苦痛に耐えかねて、思考の逃避をしてしまいます。
これは非常に勿体ないことです。
なぜなら、「差別化を考える」だけに絞って言えば、優れたアイディアを生み出す為には3つの視点で考えれば、必ず新しいアイディアが浮かんでくるためです。
その3つとは…
- 自社商品の「効用」が最も知覚できる新市場はないか…をリサーチする。
- 間接競合となる商品の「効用分析」を行い、買い手の「目的」をスイッチさせる。
- 直接競合となる商品の「ウリ」と明確な対抗軸(反対軸)をつくる。
この3方向から、グルグルと考え続ける事で、競争せずに戦える新しい事業領域が発掘できてくるのです。
今回のコラムでは、このうちの「直接競合」となる商品のウリと明確な対抗軸をつくる技をお伝えします。
これは、非常にわかりやすく、取り組み易いのでオススメです。
というのも、人間は、常識と思っているものを真っ向から否定すると、否応無しに興味が惹きつかられます。
その否定の根拠が正しかったり、現実的に私たちにメリットがあると知覚されたりすると「新しい常識」が芽生えてきます。
これほど分かり易いことはありません。
2014年1月14日号のメルマガで「新潟の料理屋さんで美味しいお刺身を頂いた」ことをお伝えしましたが、これも直接競合との明確な対抗軸をつくっていた好例です。
この料理屋さんでは、刺身を数日間熟成させることによって旨味を引き出しています。
お刺身を口に放り込むとネトッと舌にまとわりつき、魚本来の旨味と甘みが口全体に広がっていく感覚は、今でも忘れられません。
この経験によって私は「刺身は鮮度が命」という概念が真っ向から否定され、「熟成させた刺身の方が美味い」と強く記憶に刻まれました。
そう、「新しい常識」が上書きされてしまったのです。
これからの私の消費行動は、この新しい価値基準によって規定されていくのでしょう。
過去の常識を否定してくれた人(会社)を、私たちはニューリーダーとして位置づけます。
強烈な差別化を作るのには、これはもってこいの作戦です。
拙著「営業を設計する技術」にも記載した寝具メーカー「エアーウィーヴ」も、構造的には全く同じ戦略を採用しています。
世界一のマーケットシェアを誇る「テンピュール」の<低反発素材>と明確な対抗軸を張るため<高反発素材>のマットレスを開発しました。
この<高反発素材>の効用を徹底追求して、「低反発よりも高反発の方が疲れは取れる」ことを立証しました。
テンピュールが身体を包み込み「静止」させることで熟睡をサポートしている…という概念を覆し、「運動」(寝返り)することで疲れは取れる…と新しい気づきを市場に与え、緻密な営業戦略によって、オセロのように市場をひっくり返しています。
●鮮度→熟成
●静止→運動
など、業界トップとの明確な対抗軸を作りだすことはできないか…。
もし、この「解」が見つかった時は、業界のニューリーダーとして「切符」を手に入れたも同然です。
あとは、先週のコラム「成功する営業戦略は細部まで映像で描ける」の通り、細部を徹底して詰めていくことで、成功確度は飛躍的に向上していくのです。