とことん「本質追求」コラム第329話 営業マンに元気がないときの問題の本質を探る

 

 

 

「事なかれ主義の蔓延まではいっていませんが、どうも社内に活力がないのですよね。」

 

先週のコラムを読んだ社長が、酒席でポツリと呟いていました。

 

新規事業の立ち上げに尽力をしている最中ですが、そのメンバーは皆「活力」があります。

しかしながら、私が普段接しない営業社員たちの元気がないとのこと。

 

どうすれば、もっとイキイキみんなが働いてくれるだろうか。

最初はあまり深い悩みには聞こえませんでしたが、話を深めていくに従って、解決せねばならない課題が見えてきました。

 

問題の本質が、根深いものだったからです。

 

そもそも、元気がない状況を具体的に伺ってみると…

 

・営業マンがいつも社内にいる。

・何をやっているかわからないけど、いつもパソコンをカチャカチャさせているだけ。

・社員同士が仕事の会話をしていない(雑談ばかり)

・営業の報告書を見ても、全く相手の心境が見えてこない。

・問い出すと「私は頑張っている!」と、話すが噛み合わない。

 

などなど、典型的なヤドカリ社員が多数いるとのこと。

 

ヤドカリ社員とは、周りの様子を窺(うかが)いながら活動し、都合が悪くなると、すぐに貝に隠れてしまう社員のことで、彼らは新規営業が苦手だという特性を持っています。

 

伺うと案の定。

彼らの新規開拓件数は、異常に低かったのです。

 

しかし、彼らには問題意識があまりないように窺(うかが)えます。

というのも、話を詳しく伺うと、それなりの数字が追加受注から上がっていたからです。

予算もそれなりに達成できているようなので、彼らには新規をとる必要すら感じていない可能性が大です。

 

それが、社長が悶々と感じている「元気がない」正体だったのです。

 

この話を聞いて、大問題を察知しました。

 

予算が低すぎるのです。

 

いえ、予算が低いのが問題の本質ではありません。

低すぎる予算の背景に問題が見え隠れしていたのです。

 

伺えば、予算は営業マンが前期の実績と既存顧客の需要動向を考慮して決定しているとのこと。

これでは妥当なライン、達成できそうな予算に収まってしまうのは、至極当然です。

 

本来、予算というのは、次なる成長を目指すために必要となる「利益」を出すためのものです。

売上ではなく、利益計画が重要なのです。

しかし、営業マンに利益計画を企てさせ、実行に責任を持たすことは不可能です。

費用の最終決定をしているのは、社長だからです。

 

従って、必要な利益を生み出すために、必要となる売上高を設定し、その売り上げにコミットをするのが、予算であるはずです。

 

つまり、予算は会社の成長方針によって決定されるわけです。

昨年実績によって決まるものはなく、ましてや社員が決めるものではありません。

 

楽勝で達成できる予算なら、誰も頑張りません。

元気がないのは、ある意味当然の結果でした。

 

あまり頑張らなくても、成果が出る環境なら、人間は必然的にチャレンジ精神を失います。

一度チャレンジ精神を失うと、努力が億劫になります。

努力が億劫になれば、成果が出ない言い訳ばかりを探すようになります。

 

結果、組織のあら探しにつながり会社批判が起きたり、社員同士でけなし合うことが散見されるようになってしまう。

 

これは、因果の法則に従えば自然の流れです。

 

ボトムアップで決める問題点は、意外にも大きいものです。

 

・ボトムアップで積み上げた予算

・ボトムアップで創案した新規事業

・ボトムアップで固められた社内制度

 

一見すると民主主義で良いアプローチにみえますが、社内の活力を蝕む根源になったり、空中分解の起因になったりします。

 

会社の「あるべき姿」を正しく描けるのは、社長です。

 

御社での予算決定は、トップダウンで行われていますでしょうか?