とことん「本質追求」コラム第324話 背景を語ると商品が売れてしまう原理とは。

 

 

 

「ブランデッドムービーは、確かに面白いですね。ウチで取り組むとしたらどんなストーリーになるでしょうか」

 

 

先週は、なんと新規事業を6テーマも抱えていたので、普段なら脳みそから炎が出るほど、思考が擦り切れる思いをするのですが…

面白いほど、全く別の業界なのに、1個の共通テーマに集約されるプロジェクトがありました。

まさにシンクロ現象です。

 

振り返ると、全ての企業で共通していたのが「企業の存在意義」に根ざした事業は強い!というメッセージ。

冒頭のブランデッドムービーのテーマは週半ばのプロジェクトをブレイクスルーしようとしていて、アンテナを高くしていたときに引っ掛かったものですが、なんと後半3社にも共通したテーマが横たわっていたのです。

 

ブランデッドムービーとは、一般的な動画広告と異なり、商品そのものの宣伝ではなく、ブランドの存在意義やイメージ力を引き上げるために何かしらのストーリーを通じて買い手(買い手候補)との関係性を築き上げる作品のことを言います。

 

そう、作品なのです。

 

その作品だけで、短編映画のような存在価値があるために、人々はその作品に引き込まれていきます。

感動したり、共感したりしながら感情を揺さぶられ、作品の世界観に没入する中、ブランドへの親近感を抱かせるものですが、これは間違いなく「効果的に売上に結びつく手法」として定着していくはずです。

 

そもそも、多くの業界では、どの会社のどの製品を購入しても、さほど変わらない…という競争環境におかれています。

いわゆるコモディティ化と呼ばれる現象です。

 

競争環境を勝ち抜こうと、どの企業も「自社商品の素晴らしさ、特徴、効果・効能」を謳うので、買い手はもううんざり。

同じような情報ばかりで、宣伝や営業トークが聞こえた瞬間、耳を塞ぐ始末。

 

これは、宣伝などのマーケティングの世界でも、テレアポや飛び込みなどの伝統的な営業の世界でも皆共通していることです。

 

 

こだわりを持って本物を作っている企業は、本当に迷惑。

乱立した商品に同化してしまい「良さ」を認知してすらもらえない。

 

そこで、登場したのがブランデッドムービーというわけです。

後からいくつか事例を紹介するのでゆっくりと見てもらいたいのですが、共通点をあげてみましょう。

 

それは、「商品や企業の存在意義」「企業の哲学や理念」「起業した想い」「社会に問いたいこと」など、商品が生まれた背景を語っていることです。

 

この共通点を感じたとき、私は優れた営業トークだ!と感じました。

 

よく売れる営業マン達が「商品のことなんて全く話していないのに売れちゃったよ!」という話をしています。

 

普通で考えたらありえないことです。

 

でも、これは現実です。

顧客は商品を購入しているのではなく、商品を通じて得られる効用を購入しています。

 

 

そのために、彼らは「外堀」を掘って行きます。

商品から得られる効用に気づいてもらうために、外堀を掘って「あれ、もしかしたら彼らが売っている商品って必要かも」と悟ることができるから、購入しているのです。

 

何の脈絡もなく商品が売れるはずがありません。

さりげないリードがあるのです。

 

 

ブランデッドムービーは、まさに「効用に気づくためのさりげないリード」をストーリーを通じて再現しています。

途中、一切「広告色」を出すことなく、見終わったら最後に企業名やブランドが出てきて「あっ宣伝だったの?」と初めて気がつきますが、その時点で「好意」を抱いているので、ブランドにも好感を持つというロジックが成り立っているのでしょう。

 

テレビCMのように、続きが見たいから「仕方なく」受動的に見るコンテンツではなく、YouTubeやニコニコ動画を通じて視聴しているので、気に入らなければ、すぐに中断できる能動的な媒体です。

 

つまり、能動的に最後まで見ているということは「引き込まれている証拠」と言っても間違いはないでしょう。

 

逆に言うとブランデッドムービーは、「引き込むストーリー」がキモを握るわけです。

 

視聴する人は、何に期待をするのか?

画面上で展開されるストーリーを見て笑ったり、泣いたり、怒りを感じたり、感動したり、失望したり、幸福な気持ちになったり、不幸な姿を見て、自分はまだマシ…と安堵を得たり。

何かしらの心理的欲求を満たすために、ストーリーを見ようと決意をして「再生ボタン」を押しています。

 

そのストーリーに没入体験する中で、企業の哲学や理念、商品やブランドが生まれた背景を知る中で、その企業や商品、ブランドに親近感や好意を抱いてくれるわけです。

 

商品の差別化がしにくい時代には、これはとても有効です。

優れたセールスマンが、受注をもらうために効用に気づくための外堀を掘るように、これからの広告も外堀を掘らなければならない時代がきたのでしょう。

 

商品を売り込もうとした時点で、そのストーリーは陳腐になります。

魅力的なストーリーそのものを創造しなければなりません。

画面上で展開されるストーリーを見て笑ったり、泣いたり、怒りを感じたり、感動したり、失望したり、幸福な気持ちになったり、不幸な姿を見て、自分はまだマシ…と安堵を得たり、それを目的として「脚本」する必要がありそうです。

 

サノヤス造船という企業が、8年ほど前に「造船番長」というブランデッドムービーを何気無く作ったら、YouTubeを通じて拡散され、フランスの広告賞をとったり、新入社員の応募数が倍増したりと言った成功事例。

https://www.youtube.com/watch?v=VacHUagnip0

 

コモディティ商品の代名詞と言っても過言ではない「格安スマホ業界」で話題となっているニフモが作った「轟満の先入観」

https://www.youtube.com/watch?v=o8i4Hje75To

 

ジャパンネット銀行が「いつでもどこでも」安全で簡単に利用してもらいたいというメッセージを込めた「ネコ会議」

https://www.youtube.com/watch?v=hdRQUQXrvcw#action=share

 

 

ブランデッドムービーを作るか否かは別として、商品そのものではなく「企業の哲学や理念、商品やブランドが生まれた背景」を発信することは、必要不可欠な時代となってきます。

 

御社は、すでに取り組んでいますでしょうか。