「今、営業部にコンサルティング営業の商談スタイルを習得させようとしています。先生は、どう思いますか?」
クライアント企業さんはじめ、時々同じような質問を受けます。
これはコンサルティング営業であろうと、提案営業であろうと、質問法を駆使した営業スタイルにせよ、大きな概念では皆一緒で、私の回答は常に一つです。
「もちろん、効果はありますよ!」と。
しかし、「しかし」がつきます。
表面的なテクニックを学んでも、全く意味がありません。
表面的な現象にとらわれる限り、やっぱりウチには「●●法」は合わないよね…と、また新たなテクニックを探し始めてしまいます。
この堂々巡りが続くと悲惨な結果を招きます。
浮き足立った営業活動に終始する日々が続き、業績がみるみる低迷していく…。
そのような営業部隊をこれまで何社も目の当たりにしてきました。
なぜ、そのような結果を招くのか?
理由は極めて明快です。
「顧客の期待を醸成する」
という儲かる視点が欠落してしまうからです。
提案営業も、コンサルティング営業も、質問法も、そして藤冨が推奨している「波及営業」も、目的はただ一つです。
「顧客の期待を醸成する」ことです。
これは、営業活動のノウハウだけのことでありません。
マーケティング活動も、商品の企画・開発も、パッケージやネーミングのクリエイティブさえも全部一緒です。
目的はただ一つ。
「顧客の期待を醸成する」ことです。
テクニックやノウハウは、その目的を達成するための一つの手段に過ぎません。
テクニックやノウハウをなぞるだけで、業績が向上するなら、営業部に社員などいらなくなります。
学生アルバイトで十分です。
でも現実は、そんな単純ではないはずです。
テクニックやノウハウは、ある実例があって成功したモデルです。
その実例には、様々な要素が絡み合っています。
- 商品そのもの
- 営業マン
- 業界の動向
- 景気
- 顧客を取り巻く環境
- 顧客の購買意思決定要素
- 決裁者、決裁ルート、決裁関与者
などなど、「受注が決まる背景」には、様々な要素が絡み合っています。
テクニックやノウハウと向き合う時には、この背景を類推しながら、なぜ成果に繋がったのか?を読み取ることが大事です。
その上で、自社に取り入れるために必要な翻訳をすることで、初めて成果に繋がっていきます。
テクニックやノウハウの表面をなぞっただけでは、成果に繋がりません。
テクニックやノウハウが成果を出した「背景を類推しながら」成功した要素を掴み取って、自社に転用する「知的活動」が必要になるのです。
以前、本コラムでもお伝えしたことがありますが、藤冨が提唱した「波及営業」をそのままパクって、自分のコンサルティングにしている知人がいました。
その知人のコンサルティングを受けた企業は、流れに流れて、藤冨のところに辿り着きました。
表面的には、確かに波及営業ぽかったのですが、残念ながら「ぽかった」だけです。
波及営業そのものではありませんでした。
彼はきっと手順通りに誘導していけば、自分も同じようなコンサルティングが出来ると思ったのでしょう。
知的活動が「商品・サービスそのもの」である生業をしているのに、そんな浅はかな活動をしていては、長続きなどするはずもありません。
経営者も同じです。
テクニックやノウハウに踊らされずに、今起きていることの背景や本質を読み取って、自分のケースに置き換える「知的活動」だけが成果に繋がっていきます。
コンサルティング営業は、顧客が抱える問題や課題をあらゆる視点から考察し、それらを共有した上で、ベストな解決策を自社へ誘導しているだけです。
提案営業の本質は、世の中が気づいていない問題点や課題を明らかにして、我々なら、その問題や課題を解決できる商品・サービスを提供できることを伝えるだけのことです。
質問法の本質は、提案しようとしている「価値」を見込客が想起できるように誘導することです。
結果、「自己説得」が生まれ、決まりやすくなるだけです。
やり方、進め方は違いますが、目的は全て一緒。
顧客が自分の抱えている「問題」や「課題」または「欲求」などが、目の前にある商品やサービスで解消できる! という「期待」を醸成するだけのことです。
それ以上でも、それ以下でもありません。
御社の営業部隊は「テクニックやノウハウ」に踊ることなく、本質を見極めた営業活動を展開されていますでしょうか?