とことん「本質追求」コラム第311話 優秀な営業マンを採用したい! という錯覚。

 

 

 

「世の中は好景気の風が吹いているようですが、ウチはイマイチでして。営業部を活性化するために、新規採用を考えています。給与は多少高くてもよいので、良い人はいないでしょうか?」

 

先日スポットでご相談に来られた社長さんからの一言。

商品のコンセプト。競争環境。新規受注のリード状況。商談確率から既存ユーザーの満足度まで一通り伺いましたが、正直申し上げて「業績がイマイチな理由」は営業以外にあると確信をしました。

 

確信した理由は、消費者が求めているであろう価値観商品コンセプトに乖離が見られたからです。

 

商品のコンセプトレベルで「需給のミスマッチ」を起こしている場合は、いくら営業に力を入れたところで「ヌカに釘」になるのは、これまでの経験上明らかです。

現に社長さんの発言から、営業マンが疲れきっているのが透けて見えてきたほどです。

 

合わないネジを無理やりねじ込もうとしたところで、ネジが摩耗しスカスカになるだけです。

 

これはトップセールスマンであっても同じです。

そもそも、トップセールスマンは「売れる匂いのする商品」と「売れない商品」の嗅ぎ分けが、自然とできていることが多いもの。

いくら高給をもらっても、継続性がないと判断すれば話にも乗ってきません。

 

大事なことは、営業マンも「これなら売れる!」お客さんも「面白そうな商品ですね!」という、売れる匂いを作ることです。

売り込む前に、この準備をしっかりと作り込めば、利益の出しやすい営業体制を作り上げることができます。

 

ネジが合わない状態で、全ての営業リソースを使えば、人件費、交通費、販促資材費などの経費を垂れ流しにしてしまうことに繋がります。

準備が整って営業に向かえば、仮にネジが合わなくても「なぜ仮説と現実は違うのか?」という学習結果を組織に持ち帰ることができるので、営業活動費は無駄になっても、マーケティング活動費としての成果をもぎ取ることができるわけです。

 

だからこそ、売り込む前に必ず「売れる匂い」を作り出すことが大事です。

売れる営業マンの採用費と給与に何百万円も投資するなら、売れる匂いに何百万円も投資した方がマシです。

 

変な錯覚を起こしやすいのですが、人が入ると組織の役に立ってくれる! と無条件に感じてしまうことが多々あるように感じます。

もちろん、「売れる匂いのする商品」という武器を持ち、その武器を売れる作戦にはめ込んで活動をしている「ステージ」になって入れば、人の数と業績は比例していく可能性は高くなってきます。

 

しかし、売れない状態で、売れる人を雇おうとしても、その営業マンが組織に貢献できるか否かは、未知数と言わざるを得ないでしょう。

逆に経費倒れのリスクの方が高いはずです。

 

そもそも、私はマーケッターや組織の仕組みを作るSEなどは、優秀な人材を雇った方が効率的だと感じています。

しかし、営業マンは凡人を集めるべしという確固たる主張を持っています。

 

と、言うのもトップセールスマンというのは、曲者が多いのが現実だからです。

特に成果報酬で給与を稼いできた営業マンは、会社の味方ではなく、お客さんの味方になって「自分を売る」という典型的なセールススタイルを持っている人が多いものです。

お客さんの味方になるから売れるのですが、一定の頻度で会社とトラブルを起こします。

誤解を恐れずに言えば、商社の営業なら、影響度は軽微かも知れません。

商品がダメなら、取引メーカーを変えればよいだけだからです。

 

しかしメーカーは、商品をコロコロ変えるわけにはいきません。

一面しか見ずに単に売ることだけを考える営業マンでは、摩擦係数が大きくなりすぎです。

 

バブル世代の外車セールスは、ほとんどがフルコミッションのセールスだったようですが、その後販売店はフルコミという制度を捨てるのと同時に、売れる人も排除して、営業組織を作り変えた歴史があります。

 

ブランドが定着したら荒っぽいセールスをしなくても、凡人がコツコツやるだけで売れる。

それに営業とお客様というのは「相性」という関係性で結ばれることが多く、荒っぽい営業には荒っぽいお客さんがつきやすく、おとなしい営業にはおとなしいお客さんがつきやすいもの。

 

なので、会社が客層をコントロールしてブランドを築こうと思ったときには、まずは内側から質的改善をすることが多いのです。

 

 

話が少し脱線しましたが、会社が中長期で成長しようとビジョンを描くとき、売り込む前に、売れる匂いを作り込むことが何よりも大事です。

 

売れる匂いとは、一言で言うと「商品コンセプト」です。

優れた商品コンセプトであれば、マーケティング・センスのある人を雇えば、人の心を惹きつけるセールスのシナリオがすらすらと明文化されていきます。

 

これを「見込客の発掘ステージ」であるチラシやホームページに。

「見込客から顧客へと転換する商談ステージ」には提案書やセールストーク・スクリプトに展開すれば、凡人でもしっかりと売上を上げる体制が作れるものです。

 

優秀な営業マンが欲しい!という感情がもし芽生えたら、ぜひ自問してみてください。

「もしかしたら、売れない商品を無理矢理売ろうとはしていないだろうか?」と。

 

当たり前のことですが、原因と結果の法則を踏み違えれば、いつまでたっても結果は出ません。

 

御社では、売れる匂いをしっかりと作り込んでから、営業活動に力を注いでいますでしょうか?