とことん「本質追求」コラム第291話 強みを打ち出しても売れない理由

 

 

 

「相談に乗って頂きたい。添付ファイルの商品を今売り出しているのですが、思うように売れていません。

この商品は当社独自の技術を使った世界で唯一のものです。特に、駆動部分の技術は…」

 

 

先日、弊社のホームページから1件の問い合わせが入りました。

おそらく2000文字はあろうかと思うほどの長文で独自技術の結晶の積み重ねで出来上がった商品の説明をされていましたが、冒頭の1/3くらいで読むのをやめてしまいました。

 

申し訳ないのですが、お返事すらしていません。

 

このことを仲間に話すと「せっかく問い合わせをしてきてくれた方に失礼では?」と言われたのですが、私は逆に聞きたい。

 

面識もないのに、ダラダラと長文を読ませる方が失礼では?と。

それに、私だけなら未だしも、こういった方はお客様にも同じような話し方、書き方をするはずです。

 

私が「波及営業」を広めたい根源は、「押しつけがましい売り方」をなくすことです。

もっと言えば「組織から押し売りを強要される営業マンがいなくなること」を真の目的として「波及営業」を使ってもらいたいと願っています。

 

人の自慢話を聞いて、喜ぶ人はいません。

 

まぁ、多少の自慢話であれば「話のネタとして食いつく材料」には、なるかも知れません。

しかし、延々とダラダラ自慢話を語り続けられたら、誰でも辟易(へきえき)してしまうはずです。

時間を大切にしているビジネスマンからすれば「時間泥棒」と言われても仕方ありません。

 

これは、営業活動なら尚更です。

 

聞いてもいないのに、自社の強み、特徴をダラダラと言われ続けることは、自慢話を延々と続ける人と同じです。

 

相手の心を動かすのは、強みや特徴ではありません。

強みや特徴が、どう貴方(御社)にとって貢献するのか? この伝え方こそが、相手の心を動かすのです。

 

この違いは、かなり繊細で、分かっているようでいて実際にはズレてしまっていることが、よくあります。

 

とある某大手企業の販売代理業をしている社長さんで、同メーカーの販売台数日本一を誇る社長さんとお話をしていて、まさに…と思っていました。

 

「藤冨さんが言う仕組み(理性)で売るというのは、これからの時代特に重要性が増してくると感じています。

でも、高額商品を売るには、それだけでは無理ですよね? 高額商品をしっかりと売れる上位10%の営業マンは感性で売っています。この構図は絶対に変わらないでしょう」と。

 

はい、私も全くの同感です。

 

ここで言う感性とは、相手の思考回路に入り込むことです。

 

相手の思考回路に入り込むためには、他者にベクトルが向いている必要があります。

自分にベクトルが向いている限り、相手の思考回路には入り込めません。

 

この2パターンに厳格なる壁を設けると、自社の強みや特徴など、売りたいトークをダラダラと並べることが如何に滑稽かがわかるはずです。

 

強みを打ち出せば売れる!

実務から離れたセミナー研修講師や書籍を見聞きし、鵜呑みにしているといつまで経っても堂々巡りを繰り返すことになります。

 

真実は一つです。

 

顧客は自分にメリットがあると確信を持った時に、契約書に捺印し、財布からお金を出し始めるのです。

 

トップセールスマンに限らず、キレるマーケッターや企画マンは、基本的に「人間好き」「社会の成り立ちに興味がある」など、自分以外にベクトルが向いている人が大半です。

 

無論、経営者も同様です。

 

これは

会社の生存率は、

1年後に60%、3年後には38%、5年後に15%、10年後は5%しか生き残らないと言われています。

 

最初は、事業構想が当たって、事業がどんどん成長していっても、結局は市場や顧客と「対話」ができていなければ、商品は売れていきません。

 

一方的に伝えるのではなく「対話」なのです。

 

対話があって、初めて「顧客が内包しているニーズ、欲求」を知り得ることができ、現状との隙間を埋める商品やサービスを提示することで、顧客は購入するメリットを感じます。

 

一方的に話をする人は、会話と対話の違いが理解できていません。

 

会話は、日常的な話題が二人以上でなされることで、相手への理解や共感がなくても、成り立つものです。

今日は天気がいいですね! ええ、とても気持ちがいいです! などは会話の典型例。

 

しかし、対話は違います。

相手を理解するために、向き合って話をすることです。

 

さらに言うと、ビジネスでの対話は、言葉を交わさなくても、対話が成り立ちます。

 

相手の行動を観察し、こんな商品があったら喜ぶだろうな。

こんな商品があったら、その苦痛から逃れられるのに…。

こんな商品・サービスがあったら、社会はもっと快適に過ごせるのに!

 

と、察することで顧客の先を回り、商品・サービスを通じて対話をすることで、商品は必然として売れていきます。

 

相手の行動から察する「思考回路」を逆算することで、「顧客が内包しているニーズ、欲求」を合致させることができるからです。

 

 

これは「どうだ!」と言う自己主張的なアプローチのことを言っているのではなく、「おもてなし」に近い感覚です。

 

顧客を慮(おもんばか)る気持ちを、商品・サービスに織り込んでいくのです。

 

御社では、会社として市場や顧客と対話をしていますでしょうか?