「競争相手がいるって良いですよね。努力するから自社商品がブラッシュアップされるし、傲慢になる暇もない。逆に競争相手がいないのは、いつも不安に苛まれますね」
先日、長年お付き合いのある社長と一献傾けながらの会話。
さすが、とある業界でトップシェアを誇り、10期連続で「増収増益」を続けてきている成長会社は、根強い力強さがあります。
私自身も、この社長の思想に強く共感しますし、現実「競争相手がいない企業環境は、自滅の根源となりがちな傲慢経営の体質になりやすい」というデメリットがあります。
ただし、もう一つの真実もあります。
これも私が好きな経営者の思想ですが、独走、独占を常に目指すという思想。
この2つは一見矛盾しているようにも見えますが、根底は同じです。
独走は、競争相手の存在があっての概念ですし、独占は、生存競争の結果生まれるものです。
実際、冒頭の「競争相手がいるって良いですよね」と言った社長も、一時期、ペンペン草も生えないローラー営業で競争相手を全て駆逐し独占状態を獲得した経験もしているわけです。
だからこそ、別な市場に打って出て、常に競争環境に晒される世界観を意識的に作り出し、強い企業体質を維持していこうとしているわけです。
ちなみに、競争と言っても、中小企業にとっては、良い競争と好ましくない競争があります。
ここを踏み間違えていると、一向に儲からず社員を疲弊させてしまうので、注意が必要です。
良い競争は、質で勝負をする競争。
好ましくない競争は、量で勝負を挑む競争です。
量で勝負を挑む競争は、計測可能な尺度で競争を仕掛ける事です。
価格であったり、内容量であったり、成分量であったりと、追随がすぐにできてしまうものは、自社よりも資金力、リソースが豊富な会社に参入されたら、すぐに負け込んでしまいます。
以前、自分たちより格下の競争相手がM&Aによって、いきなり力をつけ、大量にマーケティングコストをかけられた会社の社長から当時の話を聞いたことがあります。
最初は、負けてたまるか!と営業マンにハッパをかけていたそうですが、結局は力負けして、業績が急速に下がっていったそうです。
わかった時点で「競争をかわすべきだった」…と悔やまれていました。
やはり、同じような商品で競争する限り、自社より力を持っている会社と真っ向勝負を挑むのは、賢い選択ではありません。
量で負けるなら、質を突き詰めるべきです。
ここでいう「質」とは、顧客から見た際の「価値」です。
同じような商品であっても、顧客から見た際の「価値」が変われば、別商品になります。
逆に、全く別の商品であっても、顧客から見た際の「価値」が同じであれば、同列商品となってしまいます。
スマホカメラの性能アップで、コンパクトデジタルカメラが、世界的に4割減に追い込まれた例などは、まさに別商品なのに、顧客から見た際の「価値」が同じケース。
同じ業界の競争相手から、仕掛けられる戦いは、ある程度の予測がつきやすいのですが、全く別業界から攻められるのは、衝撃が強くなりがち。
競争する軸を変えられるわけですから、カウンターパンチを食らうようなものです。
昭和世代の私たちは、写真はアルバムに入れて保管するものでした。
しかし、今の世代は違います。
写真を撮ったら、SNSにアップすることが最終目的だったりするわけです。
または、そのままクラウド上にアップして、田舎に住む両親のデジタルフォトフレームに共有するなんて使い方をしている。
今の時代、カメラには「通信機能」がなくてはならない存在になったわけです。
このままだと、デジカメは競争優位性を奪われたままです。
顧客はカメラをどう使うのか?
顧客はカメラに何の価値を感じているのか?
ここの深掘り無くして、本当の「競争」は仕掛けられません。
これが「質」を突き詰めた競争の概念です。
同一業界、異業界でもあっても同じ。
日頃から、自社商品が顧客に与えている価値は何か?
その価値を得るプロセスの中で、顧客が抱えている顕在的、潜在的な不満はないか?
こうした、視察、観察、洞察をし続けることが「競争の優位性」を常に保ち続けるコツになります。
最初に携帯にカメラを入れてみたらどうか?という着想をした人は、きっとこんな体験をしたのではないか? と私は推測しています。
デジカメは、持っている。
だけど、普段は持ち歩かない。
ある時、とても美しい景色を見て、写真を撮りたい!と思った。
でも、デジカメは自宅。
残念…とガッカリして、ポケットに手を突っ込んだら、携帯があった。
「あー、携帯にカメラがついていたら良いのに…」
これはあくまでも私の妄想です。
しかし、価値を生み出す瞬間は、生活者視点、利用者視点の思考、行動、そこから生まれる満足・不満足が起点となります。
だからこそ、常に「競争優位性」を保ち続けるためにも、自社商品の利用者を視察、観察、洞察をし続けることが大事なのです。
御社では、顧客の視察、観察、洞察を常日頃から行っていますか?