「リーマンショックで売上が激減して以来、これ!といった活路が見出せないでいます。今、ネット販売に力を入れていますが…どう思いますか?」
先週、とある地方でセミナーを行った際に、外国人向けのスーパーマーケットを営んでいる2代目経営者が声をかけてきました。
写真を見せてもらうとかなり大きなお店で、最盛期は5店舗を経営。
現在は、2拠点を閉鎖して3店舗で営業をしているとのことでした。
私は、モノやサービスの開発元でないと、お手伝いすることはしないので小売店経営には明るくはありませんが、セミナー終了後ずっと後ろで待っていてくれたようなので、藤冨が感じたことを率直に進言させてもらいました。
「せっかくの経営基盤をないがしろにして、ネット販売とは…あまりにも勿体ないです!」と。
売上構成比や財務状況などを詳しく見たわけではないので、あくまでも感覚でしかアドバイスができません。
しかし、商売を戦いとして捉えた場合、自分の土俵に相手(競合)を引きずり込まずに、他人の土俵で戦っているのは、決して得策とは言えません。
同社の土俵…つまり自社が有利に戦える状態は何か?
競争相手が真似したくても、真似できない作戦は何か?
誰と戦い、誰を味方にして、どのような戦果(誰に貢献する?)を得るべきか?
戦略の基本中の基本である「戦わずして勝つための策」は見出せないのか?
そんな質問を自問自答し続ければ、安直にネット販売とはならないはずなのです。
現実を直視せずに、隣の芝が青く見えているうちは、地に足の着いた事業成長などはしないはずです。
事業成長どころか、この1〜2年で到来されると予想される世界規模の大不況が、もし現実となったら…
地に足の着いていない事業は、大きな時代の変化の流れに、押し流されてしまいます。
では、どう地に足を着けていくか?
それは、現在の商売が成り立っている基盤を、しっかりと直視することです。
最盛期より売上が下がっていようが、商売が成り立っているのは現実です。
売上が下がっているからダメだ…と目を背けるのではなく、一つ一つの商売の基盤となっているものをテーブルに並べてみるのです。
そして、何にフォーカスをして、どれを磨けば、売上が上がりそうか…
つぶさに検討してみれば、意外にも「金の匂いがするアイディア」が見つかるものです。
今回、最後まで残ってくれた2代目経営者には、ジャストアイデアレベルですが、私は次のように助言をしました。
「外国の食生活」を体験するというのは、ある意味「レジャー」として捉えられます。
現実、統計上でも、レジャー産業と外食産業の売上相関関係は数字として見て取れます。
外国の食事というのは、小さな冒険としての楽しさを持っています。
浪費せず、貯蓄に励む人々だって、ストイックな生活は飽きがくるものです。
小さな冒険なら、喜んでトライするはずです。
人々は「楽しい暇つぶし」を常に探しているからです。
という前提条件に立てば、外国の食材・食品を多く取扱うスーパーマーケットは、「外国人向けの買物の場」だけで終わっては勿体ないと思いませんか?
日本人にだって売れるはずです。
でも、外国の料理は作り方がわからない…。
であれば、今来店している外国人を「教えてあげる人」として招き、料理教室やBBQパーティーなどを企画し、日本人に外国料理の作り方を教えてあげれば良いのです。
教える外国人だって喜びます。
ロイヤリティが強くなり、他店への浮気防止にもなりそうです。
コミュニティが生まれれば、日本人が外国料理を日常の食卓に出す頻度も増えるでしょう。
さすれば、外国人向けのスーパーマーケットだって、日本人が訪れてくれるはずです。
日本のスーバーマーケットでは売っていない食材で、日本人の口に合った簡単で美味しい料理をたくさん教えれば良いのですから。
小さな冒険を望む人は、今日本中にたくさんいます。
楽しい暇つぶしを探している人は、そこら中にいます。
マーケットは、渇望しているはずです。
足元に転がっているネタを活かせば、それが実現できるのに、トライしないなんて勿体ない!
ネット販売を否定するわけではありませんが、まずは、自らの強みに気づき、それを最大限活かす経営をすることで、先代経営者も喜び、今の生活を支えてくれるお客様も喜び、さらに働く従業員の士気も高まるはずです。
ネットに販売比重をおけば、働く人たちは「いつか私たちは不要になるかも」と危惧して、隙あらば転職してしまうかも知れません。
それを、望む経営者はいないはずです。
自らの作戦で自らの首を絞めないためにも、隣の芝が青く見え始めたら、まずは現実を直視することが大切だと感じます。
御社では、足元に転がっている商売のネタを最大限に活かしていますでしょうか?