とことん「本質追求」コラム第278話 顧客の期待がわかれば「高収益事業」が生まれる。

 

 

 

先日のコラムで“言葉”一つで売れる・売れないが決まると言っていましたが、切り口あっての言葉と理解して良いですよね?

 

先日、セミナーにご参加いただいた経営者から質問のメールが入りました。

 

セミナーでは、「商品ではなく、商品のコンセプトを売ることで、飛躍的に売りやすくなる」というお話をしていたために、念のための確認をされたかったのでしょう。

 

もちろん、おっしゃる通りです。

 

 

顧客にとって魅力的でない商品コンセプトのままで、いくら「売れる言葉」を作ろうとしたって、残念ながら成果を生み出すアウトプットは生まれてきません。

 

元栓が開いていないのに、一生懸命に蛇口をひねっても水が出ないのと一緒です。

 

では、事業活動においての「元栓」とは何か?

 

釈迦に説法かも知れませんが、モヤモヤしていることを整理しながらお話をしていきますので、ぜひ聞いてください。

 

事業活動の「元栓」になるのは、商品コンセプトです。

もっと、わかりやすく一言で言うならば「期待」とも言い換えても良いでしょう。

 

 

顧客は、商品でなく、期待を買っている!

こう表現した方がピンとくるのではないでしょうか。

 

そんなことはわかっているよ!と言われそうですが、この「期待」について、商品の企画・設計・製造から、販売、アフターフォローまで、一気通貫で真剣に突き詰めて事業モデルを組み立てている企業は、そう多くはありません。

 

もし「本当か?」と思うのなら、今日のランチタイムに各部門の責任者と会食し、こう聞いてみてください。

 

「お客様は、当社商品に何を期待しているのだろうか?」と。

 

各部門長の答えが同じレイヤー、同じ次元、同類の概念ならば、「顧客の期待に組織として真摯に向き合っている」と断言できる組織だと言えます。

 

 

商品が溢れかえり、多くの分野でコモディティ化が進行している時代だからこそ、顧客の期待に真摯に向き合う必要があります。

 

なぜなら、顧客の期待に応えられない会社は利益率の低下を招き、ジリ貧になっていくからです。

 

 

そうは言っても「顧客は何も期待していないよ…」と開き直るしかない人もいるかも知れません。

 

 

「パソコン」なんかも商品のライフサイクルから見れば、完全に成熟期の後半から衰退期へと入っています。

パソコンなんて、どれを買っても同じ。

ウチの商品に何も期待なんてしていない。単にコストが安いから売れているだけさ。

 

 

ウチの事業も一緒さ。

コピー機なんて、何を買っても一緒。

差別化と言ったって、どこもどんぐりの背比べ。

差別化が謳えない以上、結局は「価格による差別化」、つまり値下げしかないんですよ。

 

パソコンやコピーは、あくまでも「たとえ」ですが…

どの業界にも、横たわっている現実ではないでしょうか?

 

 

私も様々な業界の事業に携わっていますが、この現実は全ての業界と言って良いほど蔓延していると感じています。

 

差別化ができないから、価格で勝負をする。

言い換えれば、「顧客は最低限の保障をしてくれれば御社には何も期待をしないので、値段を下げてくれませんかね?」と言っている様なものなのです。

 

これは、商品別の粗利益推移を見れば、一発で露呈される現実です。

 

企業は、粗利益から、労働分配…つまり社員の給与が支払われ、広告宣伝や商品の運送費や旅費交通費や通信費、水道光熱費などの「売上を上げる活動費」が支払われて「利益」を生み出しています。

 

粗利益が減れば、給与を下げるか、「売上を上げる活動費」を減らして、利益を捻出するか、利益の低減に甘んじる他ありません。

 

これで「ジリ貧」にならないとすれば、一発逆転の大勝負を狙う他ないのではないでしょうか?

 

常識的なことを申し上げているようですが、「顧客の期待に真摯に向き合う」ことと「利益率の向上」は切っても切れない関係だからこそ、あえてお話しています。

 

 

もしも、基幹商品の粗利益推移が低下傾向を示していれば、自社の事業・商品を通じて「顧客に何を期待してもらうのか?」を再定義し直すタイミングです。

 

 

商品の差別化という小さな視点で自社商品を眺めるのではなく、顧客の期待という大きな視点で自社商品を眺めれば、高収益事業を生み出す活路が見えてくるはずです。

 

 

日本のセブンイレブンを育て上げ「コンビニエンスストア」という業態を世に中に普及させた功績者である鈴木敏文氏は、社員に「他社を見るな!世の中をじっくりと観察して、自分の頭で考えろ!」と社員を喝破していたそうです。

 

 

世の中を観察して、顧客となりうる人が置かれている「環境」と「その変化」を見据えて、何が満たされていないのか、何が求められるのか、その期待を見つけて、商品やサービスを通じて、その期待に応えることが、商売の原点だと社員にも浸透させていたのだと思います。

 

決して、優しい「問い」でもなければ、「答え」でもありません。

ましてや、それを商品やサービスに落とし込むまでには、辛く長い時間が必要になるでしょう。

 

それでも、それが「粗利益の源泉」である以上、真摯に取り組む価値はあるはずです。

 

御社の顧客となりうる人々(企業)が抱いている「期待」は、なんですか?

その「期待」に、どう商品が応えていますか?