とことん「本質追求」コラム第267話 初めて営業社員を採用する際の重要視点

 

 

 

「今度、営業社員を雇おうと思っているんです。初めてのことなので面接に立ち会ってもらえないでしょうか?」

 

 

下請業の比率を少しずつ下げ、自社商品の拡販が徐々に増えてきた社長から、2017年の新年早々にきたご相談。

 

社長自らがトップセールスで「あの会社が導入した機器ならすごい商品に違いない!」と誰もが思う「インパクトユーザー」を獲得し、DMやパブリシティを駆使した作戦も当たり、見込み客を順調に獲得しているとのこと。

 

あとは、興味を持ってくれた見込客をしっかりとフォローできる体制が整えば、売上は上がるだろう…そう言った目論見からの人員増加計画でした。

 

私は、人材採用のプロではないし、知見もありません。

なので、一度はお断りをしました。

 

でも、藤冨が社外取締役を務める企業の採用面接に同席していた話を、その社長にはしていたので「どうしても…」となり、お引き受けすることになってしまいました。

 

2日間にわたり合計で8人面接。

 

それぞれに魅力的な人材で、何かを取れば、何かを諦めざるを得ないと言った感じだったので、順番が前後したものの「営業マンの理想の行動をまずは明確にすることから始めましょう!」とディスカッションを促しました。

 

すると、面接に来た一番活きの良い若者が気になったらしく、「先生、営業ですからとにかく数字ですよ! バリバリ受注してくれれば、それで十分です!」と社長はおっしゃる。

 

「前社では営業成績は常に上位でした」と言う勢いに、惚れ惚れしてしまったようだったので、採用後のギャップに苦しまないように、一つだけ質問させてもらうことにしました。

 

 

「彼は、現場(製造)を理解しますかね?」と。

 

と言うのも、彼が前職で販売していたのは、業務用のコーヒー。

言ってしまえば、商品知識なんてほとんど要りませんし、販売時点での顧客の不安も皆無に近いものがあります。

 

しかし、同社は技術系の会社です。

自社ブランド商品も、パッケージ化されているものの、導入時には若干の仕様調整が入るものなので、商談で持ち帰った宿題を製造部門とすり合わせをして、その結果を顧客にわかりやすく翻訳しながら伝えると言う、コーヒーに比べれば、極めて難易度の高い「調整スキル」が必要になるわけです。

 

売れる営業マンを採用すれば、我が社の売上も上がる!

 

そう言った単純な方程式は、絶対に成り立ちません。

 

売れている営業マンから話を聞くときは、「どのような商品を、どのようなセリングポイントで、どのように販売してきたのか?」と言う売上に繋がる行動パターンをヒアリングすることが大事。

 

その上で、我が社の営業との類似性を見つけ出し、彼らの経験が十分に活かせるかを類推することが、中途採用では大切なことです。

 

よほどのケースでない限り、前職で経験してきた営業と、全く異なる商品・組織で同じような成績を弾き出すような人はいません。

 

20代の若者なら可能性はありますが、30代で類似性のない会社に転職し、前職でも新天地でも成績優秀者というケースは、ほとんど聞いたことがありません。

 

 

自覚できるかできないかは別として、大多数の人は「変化」を拒みます。

新天地で結果を出そうとするとき、おおよそ「自らの得意技」を使うはずです。

新天地ならではの必要スキルを嗅ぎ分け、貪欲にそれを吸収し、自らの得意技と掛け合わせながら、変化できる人材なんて、超レア人材です。

 

そんな人材を中途で求めるなんて、広大な南アフリカの土地で、1カラット以上の良質なダイヤモンドを探すのと同じです。

 

 

そんな一か八かを重要な採用計画に組み込むのは、得策ではありません。

 

 

そう社長にお伝えすると、さすがは理系社長。

 

「そりゃそうですね!」と方針を一転。

 

 

・  前職で扱っていた商品と我が社の商品の類似性を見つけられること。

・  前職の経験を我が社に活かすことができるか、類推すること。

・  自社の空気感や既存社員との相性想像してみること。

・  素直に前向きに仕事に取り組めるかどうか、洞察すること。

 

そして、何よりも…

・  「我が社は、営業社員に何を求めているのか?」を明確にし、それにマッチすること。

 

これらの人材像を念頭に置きながら、今度は、自らの希望をより鮮明に描いていくことが大切です。

 

 

即数字を出し続ける人材が欲しいのか。

それとも、3年を目処に強い営業基盤を作って欲しいのか。

 

求めることによって、採用計画を考える必要があります。

 

即数字が欲しいのなら、一人採用はベストな方式ではありません。

数字を即作りたいのなら、営業マン同士が競争しあえる環境を作ることが大事なので、最低でも3名同時採用することが大事です。

 

そのうち、1〜2名離脱してもらっても、構わない。

そう言う覚悟で、採用することです。

 

 

3年を目処に強い営業基盤を作るのであれば、我が社の技術の強みや可能性を見抜き、それに惚れてくれそうな人材を採用することがポイント。

 

スキルは後からでも付いてきますが、好き嫌いの感情は、後付けできないからです。

 

 

そういった観点で、先に面接した人材を再評価していくと、あまりパッとはしないけど、地道に努力をしそうな26歳の若者が社長と私の脳みそに浮かび上がってきました。

 

 

お互いがそれを察し、「あの子にしましょう!」と自然となり、無事採用が確定。

 

あれから6ヶ月。

 

製造の人達に自ら自社の技術指導を仰ぎ、保守対応やクレーム処理にも積極的に同行し、同社の全てを知ろう!と貪欲に仕事に取り組んできたそうです。

 

1年は売上ゼロでも良い…と割り切って採用したとのことですが、蓋を開けてみたら2件の受注。年収の2.5倍も売上貢献してくれているとの報告を先週受けました。

 

自らを知り、相手も知る。

営業マンの採用には、不可欠な視点です。

 

御社は、闇雲に営業マンを採用していませんか?