とことん「本質追求」コラム第245話 メーカーが商社経由で販売を成功させる覚書

 

 

 

「新商品が出来ました! 当社には営業がいないので商社に売ってもらおうと思っています」

 

 

昨年に当社セミナーにお越しになられた社長さんと個別面談がありました。

スケジュールが合わず1ヶ月半以上もお待ちいただいたのですが、個人的にはこの日をとても楽しみにしていました。

セミナー終了後にご相談いただいたその「新商品」の概略を伺っただけでも売れるニオイがプンプンしたからです。

 

しかし、冒頭のお話には釘を刺さざるを得ません。

 

営業がいないから商社に売ってもらう…という丸投げ思想では、折角の良い商品でも売れないからです。

 

これは、請負・受託業の企業にはよくよく見られる光景です。

社長が新規開拓で太い取引先数社を獲得し、社員は技術系のみで営業マンは0人。

しかし、自社ブランドの商品の拡販を成功させるには、これまでの営業とは異なる営業推進が必要になりそうだ…。

これから新規で営業マンを雇い入れるにも、営業マンをマネジメントした経験もない。

だったら販売は商社に任せてしまった方が賢明なのでは…。

 

こう思うのは、至極当然のことだと私も思いますし、立ち上げ当初においては、賢明な判断だと支持致します。

 

実際、今のご時世から言っても新規営業マンを募集するのもかなりのリスクです。

人材募集企業に数十万円払っても、面接に来たので2〜3名。

技術などのバックヤードで募集すると集まるが、営業という単語をつけた瞬間に応募が全く集まらない…これは他のクライアントさんでもよくよく見られる傾向です。

 

それに営業マンは、1名採用したくらいでは上手くマネジメントできません。

競争原理を働かせるために、最低でも2名同時に雇用したほうが上手くいきます。

 

でも、それだけキャッシュアウトが増えるので、不確実性の高い新規事業に対していきなりの投資はリスクが大きくなるのも事実。

 

従って、新規事業の立ち上げ期においては商社経由で販売を成功させていくことに注力するのは、あるべき判断だとも言えるのです。

 

ただし、販売の手足は商社に任せても、販売の脳みそはメーカー側になくてはいけません。

 

商社は、あらゆるメーカーの商品を取り扱っており、各営業マンによっても、販売したい商品の優先順位が異なります。

 

その優先順位を上げてもらうためには、「売れそうだ!」「儲かりそうだ」「成績が上がりそうだ!」という期待価値を高め、我が社の商品を“エコヒイキ“してもらう必要があります。

 

そのためには、自社が最終顧客にセールスするのと同等の知恵と努力を振り絞らなければなりません。

 

決して、手放しで販売してくれるほど甘くはないのです。

 

具体的なアドバイスは、弊社独自の営業戦略のたて方である「波及営業」を徹底しておこなうことをご助言しました。

 

あの会社が購入したのなら、素晴らしい商品に違いない…というインパクトユーザーを受注し、その実績を武器にしたセールスツール(チラシ)を商社に提供する。

 

第三者からの評価は、商社の営業マンからすれば「売れそうだ!」というニオイを醸し出す最強のツールとなるから、ここの手は絶対に抜かないように…。

 

さらに、その売れるニオイを増幅させるために、プレスリリースを出してメディアからの取材を喚起したり、推薦状を同梱したDMで、直接需要を掘り起こす努力をします。

 

引き合いが来たら、商社の営業マンを同行して「営業トーク」を学んでもらい、その場で売ってみせる。

受注が決まったら、「お土産」として持って帰ってもらいエコヒイキしてもらいやすい関係づくりを行う。

 

目先の粗利を捨てて広告宣伝費として捉え、とにかく「売れる空気感」をつくり出す事に全身全霊をかけていくのです。

 

商社という会社と付き合うというよりは、商社で働く営業マンと付き合うスタンスがポイント。

 

ビジネスですから「売りやすい」「儲かる」という現実的な利益も大切です。

ただそれ以上に「売れたら社長が喜ぶだろうな!」という人間的な感情も、非常に重要なのです。

 

商社経由で販売を成功させたいのなら、丸投げ思想は厳禁です。

商社の営業マンの営業モチベーションをいかに上げるか…

この発想と努力なくして、貴社の商品が商社経由で動き出す事はありません。

 

あなたは顧客のみならず、営業マンの感情や心の動き方を先読みする努力を怠ってはいませんか?