とことん「本質追求」コラム第235話 業績を伸ばす「失注分析」とは。

 

 

 

「売れない理由を設計部門にフィードバックする会議を続けたら、1年で売上を30%伸ばすことが出来ました!」

 

一昨年、プロジェクトをご一緒した社長さんから嬉しい報告電話がありました。

 

既存商品の売れ行きが鈍り、新市場に打って出たプロジェクト。

出だしは、パッとしない成果だったのですが、必ずやって欲しい…とお伝えしていた「失注要因分析」を愚直に続けた結果、いまでは確実に第2の柱として育ってきたとのこと。

 

継続はチカラなり。

自社商品が、対象企業に明らかに“価値”を与えているならば、売れないハズがありません。

 

売れるのも、売れないのも、必ず理由があります。

 

売れる理由が分かれば、それをトコトン強くする。

売れない理由が分かれば、それをトコトン克服する。

 

この努力を続けて、成果が出なければ、その理由づけのピントがズレているか、理由分析のツメが甘いかのどちらかです。

 

失注要因を突き詰めた結果、撤退という選択肢を迫られることも当然ながらあります。

 

撤退を迫られる基準は、顧客の視点から見た際に、自社商品よりもより良く満足をもたらす競合商品があり、コスト的にも提供価値的にも上回ることができない場合。

 

または、顧客が商品から得られる価値を感じられないか…のどちらかです。

 

もちろん、他の機能や性能を付け加えたり、他のサービスと抱き合わせて、新しい価値を創造するなどをして、セールス・コンセプトを見直すなど売れる策を創出することは、いくらでも考えられます。

 

販売強化策の創案か、撤退か…いずれにせよ「失注要因」を突き詰めていかなければ、次なる打ち手は見えてきません。

 

言って見れば、当然のことです。

ところが、この当然のことを組織の文化にしていくのは、並大抵のことではありません。

 

と言うのも、失注した要因を大きく分けると「営業マンの未熟さ」か「商品のポジショニング(顧客から見たときの…)」のどちらかになります。

 

平たくいうと「営業のせい」か「商品のせい」のどちらかと言うこと。

 

これを商談後に会社に持ち帰ると、責任のなすり付け合いになる可能性が高くなります。

 

営業マンは、自分の未熟さを認めずに、商品のせいにしがちですし、設計や開発の人達も、それを見透かしてしまいます。

仮に、商品的に劣っていた部分があっても、彼らも簡単には認めません。

 

冷静に「顧客が買わなかった真意」を突き詰めるディスカッションのはずが、最悪は「あいつが悪い、こいつが悪い」と責任転嫁の会議に終始してしまったりもします。

 

これでは、会議自体がまったくのムダ。

逆にやらない方が、マシなくらいです。

 

では、どうすれば良いか。

これは、社長や事業責任者または外部の人間でも良いのですが、公平な目で現実を突き詰め、本質をズバっと見抜きながら、プロジェクトメンバーに「売れない本当の原因」を客観的に見せる工夫をしていくしかありません。

 

このときに「ダメ出し」は厳禁です。

また「人格に入り込んだ指摘」も厳禁です。

そんなことをしたら、二度と「事実」が会議のテーブル上にあがってこなくなります。

 

売れなかった事実だけを切り抜いて、「その時、顧客はどう感じたか」「どう判断したのか?」だけを見せるようにし、「どうすれば良いのか?」をメンバーに積極的姿勢で捉えさせていくことが何よりも大事。

 

失注要因をテーブルにあげて、改善案をつくり出していく会議は、顧客心理と報告者の心理、そしてそれを聞いているメンバー受け止めるメンバーの心理をすべて掌握することが求められるわけです。

 

ただ、最初は、設計や開発メンバーを「失注要因の分析会議」には同席させない方がいいです。

 

営業の方が、失注要因を分析しきれておらず、報告自体が茶番に終わるからです。

 

と言うのも、「真の失注要因」を営業マンが突き詰めるまえに、商談から離脱してしまっているケースが驚くほど多いのが、この失注分析会議をやると分かります。

 

 

「価格が高いと言われました」

 

これでは、失注分析は出来ません。

「何と比較して高いと思っているのか?」

「今の商品はいくらで買ったのか?」

「新しい提案の経済価値はちゃんと理解しているのか?」

 

などなど、商談時に「そう思った理由」を掘り下げていかないと、顧客の選択基準が見えてきません。

 

断る理由を商談で掘り下げるのは、簡単なようにみえてメンタル的にはある程度のタフネスが求められます。

 

でも、この壁を乗り越えないと「本当の失注要因」が見えません。

なので、まずは営業マンに「なぜ、そう思ったのか?」を掘り下げさせる姿勢を持たせる事が大切です。

 

この「つっこみ」をするだけでも、営業スキルがアップして受注確度は上がっていきます。

 

さらに、顧客の真の選択基準が見えたら「営業トークで解決するのか?」「証拠や根拠となる援護射撃が必要なのか?」が見えてきます。

 

営業ステージでは押さえ込めない失注要因が、しっかりと見えてきたら、今度は設計や開発メンバーにも参画してもらいます。

 

こうして「失注する要素」を徹底して潰していけば、業績が上がるのは当然だと思いませんか?

 

でも、簡単なようでいて難しい…。

上記の社長さんは、この並大抵ではない「アタリマエ」のことを徹底し続けて業績を着実に伸ばしてきました。

 

御社では、失注要因を組織的に突き詰めている【文化】を育んでいますでしょうか?