「営業が顧客の声を集めて、商品のリニューアルをしました。でも全く売れません。営業に突き返しても、言い訳ばかりで……」
既存商品の売れ行きが鈍り、全社一丸となった立て直し策が空振り。
これほどシンドイことはありません。
以前お手伝いしたクライアントさんの最初のご相談ごとでしたが、今となっては笑い話。
先日社長とお話したときも「先生が言っているプロダクトアウトの重要性が良く理解できたプロジェクトでした」とのご評価を頂きましたが…
お客様が求める機能や性能をそのままカタチにすると、意外にもこうした「売れない」という現実が待ち構えていたりします。
これはマーケットインという言葉を大きく履き違えたために、誤った典型例です。
とくに営業マンは、目の前にいるお客様から言われたことが「全て」だと錯覚してしまいがちです。
これは、受注を獲得したい! と強い念を常に抱いている“売れている営業マン”であればあるほど、そういう傾向に陥りやすいです。
お客様は、とかく「今の不満」に焦点をあて改善要求を出したりしがちです。
これをベースに商品のリニューアルをしたところで、マイナスをゼロにもっていくだけのこと。
新規客から見たら、何の魅力にもなっていません。
また、新商品を使う事で、これまでの習慣が変わり、「元に戻したい」という動機が生まれるケースもあります。
これをニーズと勘違いしてしまうことも往々にしてあります。
いずれにせよ、営業マンは、お客様の目の前の課題や問題、欲求に振り回されてしまいがち。
目の前の顧客から注文を取る事が最大のミッションである以上、ある意味仕方の無いことではありますが…
大きな視点が抜けてしまうために、視野狭窄の商品が出来上がり、問題を提起してくれたお客様だけにしか売れなかった…なんて笑えない話は、あちこちで聞こえてきます。
ただ誤解しないで頂きたいのは、お客様の声を聞くな!と言っている訳ではありません。
そのまま鵜呑みにしてはいけないだけです。
「なぜ、お客様はそのような要求をするのだろうか?」
「お客様は、そもそも何を満たそうとしているのか?」
「本来のあるべき姿は、なんだろうか?」
商品の機能やデザイン、仕様や性能など、表面的な要求から「根っこにある欲求」を見つけることが大事なのです。
表面的な要求を聞いたら、様々な角度から欲求や顧客が抱えている問題点を掘り下げ「本質」を追求していくこと。
そして、その本質を追究したら「それを実現するために最良・最高な手段は何か?」
と、商品レベルにフィードバックしてみる。
こうすることで、「ある顧客からの願望」を「多くの人が求める願望」へと昇華させていくことが出来ます。
これが本当のプロダクトアウト。
プロダクトアウトというと、メーカーの押しつけ…と勘違いする方がいますが、そうではありません。
マーケットや購買行動を良く観察し、彼らの発言や行動から「本質的に求めていること」を察して、それを満たす「商品やサービスを提供すること」が本来のプロダクトアウトです。
売れる商品、売れる切り口は、売り手である我々自らの脳みそから生み出すことが大事。
顧客の要求を聞いてその通りに従うだけなら、小学生でもビジネスは出来ます。
顧客の本音、購買行動の本質を察して、そこに勝負をかけることが、成功をもたらすことは、数々のロールモデルが証明しています。
御社の組織活動では、顧客の表面的なニーズを鵜呑みにする文化は醸成されていませんか?