とことん「本質追求」コラム第225話 飛込み営業をしても売れない…。時代遅れのセールスだから?

 

 

「脱下請けを目指して、自社商品の営業をしていますが、なかなかうまく行きません。社員に飛び込み営業をさせているのですが…やり方が不味いのでしょうかね。」

 

先日、新規案件の相談を受けた会社。

 

先代社長より事業を引き継ぎ、部品の製造受託を中心に経営をしていたようですが、大手企業の手のひらで仕事をすることに嫌気をさしているとのこと。

 

どれだけ努力をしても、利益は増えず、売上の増減もすべて取引先の発注数に依存している状態。

 

自分達の商品を作って、自分達で売れれば、良くも悪くも全部自分達次第になる。

 

社員に自発性や積極性を求める以上、会社の行動自体が自発的であり、積極性に富んでいなくてはならない…そう考えて自社商品を売り出したようです。

 

商品も見せてもらい、顧客となった企業の導入メリットを想定しても、非常に切れ味の鋭い商品。

 

これは売れる! と直感的に確信を持ちました。

 

が、当のご本人は、散々飛び込み営業をしてきても、ヌカに釘の状態で自信をなくしているご様子。なので、単刀直入にこう申し上げました。

 

「飛び込みが悪いのでなく、開口一番に切り出す“トーク”、商品説明に繋げるリード、そして説明の仕方…つまり伝える内容が間違っているだけです」と。

 

と言うのも、どのようにセールスをしているのか? 社長が担当営業マンを呼び出してくれたので、初訪の切り出し方から、商品説明までのロープレを聞かせて頂きましたが、残念ながら営業をする以前の問題点がありました。

 

この状態で、飛び込みは今の時代にそぐわない…

じゃ、ホームページをちゃんとしようか… それともDMを出してみようか、と議論し、トライしたところで、すべてお金をドブに捨てるようなものです。

 

商品と顧客を繋ぐコミュニケーションが出来ていなければ、いくら手段を変えても結果が変わるはずがないからです。

 

今の時代はホームページです。

今の時代は、SNSを使うべきです。

新規の顧客は、展示会で発掘すればよいのです。

カタログの集合サイトなら、低コストで見込客から声が掛かります。

 

などなど、業者やコンサルタント達が声高々に叫び、具体的な成功事例を次々と提示されると、私たちもやらなければ…とついつい乗ってしまいがちになります。

 

でも、多くは結果が出ません。

 

それは、思うように販売が伸びない主因は、商品や伝え方にあるのではなく、外(手段)に問題があったのだ…と、問題点のすり替えを行っているためです。

 

この勘違いが続く限り、いくら手段を変えても売上は伸びません。

 

飛込み営業であろうが、ホームページであろうが、テレセールスであろうが、「誰に何をどのように伝えるのか」が重要なのです。

 

冒頭の営業の方も、飛び込み時に、会社名を伝え、商品カタログを出し、いきなり商品の説明から始めていました。

 

世の中にない商品で、パンチ力があれば、それでも構いません。

 

しかし、既存商品からスイッチを求める商品、よく営業マンの説明を聞かないと違いがわかりにくい商品は、話の核心に至るまでの「パイプ」が必要です。

 

冒頭に「開口一番に切り出す“トーク”」と言ったのが、まさにこの「パイプ」です。

 

ホームページやチラシなら「キャッチコピー」に当たる部分になります。

 

そして、パイプが出来たら、次に話の核心に導いていくための「リード」となる文脈(コンテキスト)が必要になります。

 

例えば、切れ味の鋭い「ひげ剃り」が出来たとしましょう。

 

ダメな例は、「我が社の技術を駆使して3枚刃の画期的なひげ剃りを開発しました」と切り出すタイプです。

 

いきなり「自慢大会」が始まる予兆です。

 

対し、話の核心を聞いてもらうために工夫をこらしたトークとは、相手の問題意識に直接リーチしていきます。

 

上の例でいけば、「仕事が終わって自宅に戻るまで、アゴをさわってもツルツルのままでいられるほどの深剃りを実現したひげ剃りです」と開口一番に切り出し、相手が“持っているであろう問題意識”にパイプを通していきます。

 

そして、技術的に解決した商品であることを説明するまえに、これまで深剃りが実現しなかった理由を伝え、解決すべき課題を聞き手と共有していきます。

これが所謂リードと呼ばれる作業です。

 

この商談を作って行くロジックが、顧客の欲求や購買心理とマッチしていれば、手段が何であろうが、必ず反応を得ることが出来ます。

 

リーチする客層や手段によって、効率、非効率はありますが、反応が取れる・取れないは、あまり関係はないのです。

 

それに、いまの時代「飛込み営業」をする会社はめっきり減りました。

商品・サービスに差別化が必要なように、販売にも差別化が必要です。

 

なので、逆ばりでおこなう「飛込み営業」は、効果的である可能性を充分に秘めています。

 

但し、それが出来る若手人材がめっきり少なくなったので、仕組みとして取り入れるかどうかは充分に吟味する必要はありますが…

 

それでも、自社商品が売れる文脈さえ持っていれば、あとは実情にあわせて手段を選べばよいだけです。

 

手段ありきのセールスではなく、文脈ありきのセールスに発想を転換することが「売れる秘訣」です。

 

 

御社では、自社商品を売り出す前の事前準備…そう文脈づくりに命を注いでいますでしょうか?