とことん「本質追求」コラム第216話 ストップすべき新規事業と、立て直せる新規事業の違いとは。

「いま考えている新規事業ですが…成功すると思いますか?」

社運をかける商品をヒット商品に育てる… と言うテーマでセミナーを実施しているため、新規事業のプランニング段階でのご相談を受けることが良くあります。

先日も、とある社長さんから持ちかけられたのですが、正直言って、聞いているだけで「十中八九失敗するな…」と感じ、率直にその理由もお伝えしました。

決して、市場性がないという訳ではありません。
と言うよりは、保証された未来など存在しませんから、「成功する」「失敗する」などの判断は、正直言って“やりきってみる“までは分かりません。

それでも、金の匂いがするか、しないか。
そして、成功する可能性が高いか、低いか。

1〜2時間しっかりとお話を聞けば、おおよそ摑めていきます。

ちなみに、藤冨が投げる質問は、いつも決まっています。

1.商品・サービスの概要
2.競合他社の状況
3.お客様が受け取る価値と価格設定
4.営業体制やマーケティングプランなどの販売構想

そして、何よりも勘所を働き出すのは…

5.新規事業を思い立った「背景」です。
1〜3は、はっきり言って「新規事業の成否」には、あまり関係がありません。

いえ関係ないのではなく、判断できない…といった方が正解です。

なぜなら上市した後、経営者が執念で収益化させたり、用途を変えて成功するパターンだってあるからです。

とあるメーカーの卓上の食器乾燥器が、本来の目的(洗浄)では売れなかったのに「プラモデルの塗装を乾燥させるための強制乾燥機」としてマニアから支持されたり、刻みノリ用のハサミ「シュレッダーはさみ」としてブレイクしたりするケースを見れば、頷けるはずです。
以前、板金屋さんが「新規事業創出」を目的に中小企業大学校に行き、アイディアを出しをしたそうですが、全員から反対されたビジネスがありました。

ご縁あって、お手伝いしましたが、都内の有名小売店や有名百貨店での販路開拓に成功し、短期間に想定よりも高い売上をあげたこともあります。

経営者の執念と良いアイディアさえあれば、売れる企画としてピントを合わせていくことは、充分に可能なのです。

また、競合他社が想定よりも強烈だった場合は、売り込む際のセールスポイントを変えたり、別市場に攻め込むことで、競合と戦わない戦略を企てることで収益化が可能です。

お客様が受け取る価値がズレていても、素直に反省をして提供価値を見直し、価格が「高い」と評価されたら、安く見えるまでセールスの切り口を練り込んだり、+αのサービスを付加すれば良いのです。
結局、商品が受け入れられなかったり、競合に負けるという状況を脱するためには、新しい「営業体制やマーケティングプラン」を脳みそがウニになるほど、考えに抜けば、立て直せる道筋は、必ず見えてくるものです。
もちろん、新たなアイディアでは「売上の規模」が見合わなかったり、当社としてやるべきテーマでなかったりするかも知れません。

その場合は、収益化の可能性があっても、ペンディング…とならざるを得ませんから、結果として失敗ということにも繋がってしまいます。

しかし…
藤冨が必ず聞く、最後の質問(5番)「新規事業を思い立った《背景》」が、正しい想いから発想されていれば、ほぼ間違いなくピントを合わせて立て直すことが出来ます。
つまり「ストップすべき新規事業と、立て直せる新規事業の差」とは、新規事業を思い立った《背景》が、正しい想いから発想されているか否かがカギを握っている。

これは私がコンサルティング経験から学び、確信に至ったことです。

正しい発想とは、一言で言うと「自社が取り組むべき課題か否か」ということ。
単なる金儲けのための新規事業であったり、ライバルの新規事業を真似てみたり、家族の思いつきでやるテーマではない…ということです。
「金を儲けるぞ…」という執念も、もちろん「ピント」を合わせていく原動力にはなりますが、組織を動かすのであれば、この原動力だけでは突破は困難。
冒頭のご相談で「十中八苦失敗するな…」と勘所が働いたのは、この新規事業の発想の背景が金儲けだけだったからです。
これでは、行き詰まったときに、立て直しは困難です。

新規事業を推進するなか、高い高い壁が立ちはだかったときに、前線の営業マンの士気をどう高め、維持していくか…。

これが数字に繋がるのですから、「新規事業を思い立った背景」を話すことで、営業マンが奮い立たなくてはなりません。
企業ですから、収益化、金儲けは大切なことです。
でも、それだけでは、錦の御旗にはなりません。

錦の御旗は、働く仲間を鼓舞して、劣勢を優勢に、危機をチャンスに変えていきます。

御社では、新規事業に「錦の御旗」を掲げていますか?