とことん「本質追求」コラム第208話 見込客を潰す営業は、即刻停止しなさい。

 

 

 

「当社が扱っている商品の提案書です。いかがでしょう。魅力は伝えきれていますでしょうか?」

 

 

先日、ご紹介された企業の商品が、どのように売り込まれているのか?を見せて頂くために「提案書」を拝見させてもらいました。

 

社長の指示で、営業担当の方からメールが届いたのですが…一言で言うと「ものすごく残念な提案書」。

 

話を聞いたときには「間違いなく売れるのに、なぜ苦戦しているのか?」不思議だったのですが、提案書を見て合点がいきました。

 

良い商品が売れないことは、本当にもったいないことです。

 

一生懸命に営業活動をすればするほど、見込客を潰していることにも繋がりますから、それなら営業しない方がマシなくらいです。

 

「売れない現実」よりも、もったいない営業活動をしている期間の《営業マンの人件費・交通費》さらには、見込客を潰した《チャンスロス》を含めると2〜3ヶ月も活動すれば、スグに百万単位のお金がムダに流れている計算になるからです。

 

チャンスロスが、インパクトユーザーだったら、それこそ取り返しのつかない被害を被ることにも繋がります。

 

ちょっと話が逸れますが、私が友人と起業し「飛込み営業」で広告を販売していました時のことです。

 

お恥ずかしい話ですが、二日酔いになるほど飲んだ翌日は、一旦朝だけ集合して、そのまま帰宅することすらありました。

 

営業できないほどの体調不良ではないのですが、万全の体制でないと、見込客を潰してしまうために、それなら営業なんてしない方がよい…という判断です。

 

 

営業という活動は、1件、1件が真剣勝負であるべきです。

惰性で仕事が出来るほど、あまい仕事ではないはずです。

 

 

話を戻します。

 

残念な提案書。

これは今回のケースに限らず、私が見て来た範囲だと7〜8割方の提案書が「売れない提案書」です。

 

提案書から売れるニオイがしなければ、営業同行しなくも大半の課題は改善できます。

 

なぜなら、営業で最も大事な部分が欠けているからです。

 

営業で最も大事なことは、最初は魅力に気づかなかった見込客が、商談の場を通じて、「それなら欲しい!」と感情の変化を起こさせることです。

 

それを実現させるためには、相手の欲求やあるべき姿を見極めた上で、どう自社商品がお役に立てるのか?を摺り合わせていく作業が必要不可欠になります。

 

これを大前提とすると、残念な提案書の特徴は、自社の商品説明に留まっているパターンになっているものを指します。

 

本来のあるべき提案書は、お客様のあるべき姿や現状をしっかりと踏まえた上で、当社の商品をご採用頂ければ、御社にこのような貢献ができます! と、ストーリー立てて伝えられるようになっている必要があります。

 

 

分かりやすい例があります。

 

 

もう20〜30年前のドラマだと記憶していますが、「101回目のプロポーズ」というドラマがありました。

 

三枚目を演じる武田鉄矢が101回目のアタックで、ようやく浅野温子を口説き落とすといった内容です。

 

その101回目のアタックが、まさに営業の本質をついていました。

 

猛アタックする武田鉄矢に浅野温子が告白します。

 

「教会で彼が来るのを待っていた。しかし、来なかった。人を好きになって失うのが怖い」と。

 

そのとき武田鉄矢は、突然トラックの前に飛び出て、引かれる寸前でトラックは停車。運転手から罵声を浴びせられ、トラックは過ぎ去ります。

 

そして、浅野温子に向かって大声で叫びます。

 

「僕は死にません。僕は貴女が好きだから」と。

 

 

このメッセージは、相手が最も怖いことに対して、最大の安心感と覚悟を伝えることで、「自分の存在価値と魅力」を伝えました。

 

浅野温子の「あるべき姿」 は、好きな人が絶対に離れないという安心感のもとに、幸せな暮らしをしたい。というもの。

 

しかし「現状」は、裏ぎられた過去があり、人を信じる恐怖心がありながらも、一人でいるのは淋しいという矛盾を抱えていました。

 

そこに、絶対に裏切らない相手が目の前にいた。

 

 

第一印象は好みではなく、100回もプロポーズを断っていたのに…。

 

大逆転です。

 

 

これを営業に例えると、まさに「お客様目線」ということです。

 

 

拙著「営業を設計する技術」の提案書を書くときに抑えるべきポイントにも書いてありますが、提案書は「営業マンの分身」です。

 

目の前にいる商談相手を口説き落とすだけなら「営業トーク」だけでも結構ですが、後ろに決済者や決済関与者がいる場合には、社内会議でも営業マンがいるがごとく、提案書が「営業活動」をしてくれないと行けません。

 

そのためには、「強いプレゼン力」をもつラブレターで、会議室まで自分の分身が営業するする必要があるのです。

 

そのときのラブレターが、自分の魅力をアピールするだけだったら…

よほど、欲しかった商品で競合がゼロでない限り、ほぼ100%撃沈します。

 

ところが、相手の現状をよく踏まえ、あるべき姿に焦点を当てて、当社の商品ならば、御社にこんな貢献が出来る!とスパッと切り込んでいたたら…

 

魅力に気づかなかった人達が、「この商品ならいいかも」と振り向いてくれる可能性が飛躍的に高まっていきます。

 

つまり、良い提案というは、我が社なら御社に貢献出来ます! と言うことを、相手を理解した上で伝えること。
反対に、残念な提案書やプレゼンシナリオは「私を分かってください」という身勝手なメッセージに終始している内容です。

 

説明口調の提案書をよく見ると思いますが、まさにそれが「残念な提案書」。

 

今回は、提案書をクローズアップしましたが、これは全ての社外メッセージに当てはまります。

 

提案書は、特定顧客を念頭に作りますが、これを対象市場の「あるべき姿」と「課題」に置き換えれば、社外メッセージのすべてに適用できます。

 

ホームページ。DM。展示会。

すべての社外メッセージが「当社は誰に、どのような貢献が出来るか?」を明示するだけで、引き合いが増え、売上も増加していきます。

 

 

御社が発信しているメッセージ。

そして、御社の営業マンが発信しているメッセージ。

相手の「あるべき姿」と「現状」を認識した上での提案になっていますか?

 

 

追伸

101回目のプロポーズのラストシーンがYouTubeで見れます!

https://www.youtube.com/

「101回目のプロポーズ名場面」で検索してください。