「藤冨さんは、クライアント企業が有利に戦える市場をどうやって見極めているのでしょうか?」
先日、経営者が集まる会で「お呼ばれセミナー講師」として登壇した際、ご参加頂いた方から頂いた質問です。
有利に戦える市場とは、〈強み〉〈欲〉〈時代〉の3つの条件が、美しく整った状態。
その3条件を、クライアント企業さんの業界において“ど素人”である藤冨が、なぜ助言できるのか? 不思議だったようです。
核心に入る前に、まず「自社にとって有利に戦える市場」を見極めることは、とても大事なので、改めて説明しておきます。
そもそも、〈強み〉が発揮できる市場で、勝負しなければならない…これは常識中の常識ではありますが、実はここに大きな落とし穴がある…と、最近とくに強く感じるようになりました。
「我が社の強みは何か?」と集中して思考すればするほど、どうしても売り手目線の独り勝手な発想になりがちになるためです。
「USP(ユニークセールスプロポジション)セミナー」などに参加しても、一向に売れない理由は、ここに真意があります。
アタリマエではありますが、買い手目線を取り込まないと、商品・サービスを売るロジックは組立てられません。
その買い手目線を取り込むためには、〈欲〉と〈時代〉のフィルターを通す必要があります。
この〈欲〉と〈時代〉の見極めが、商売の成否を分けると言っても過言ではないと私は確信していますが、セミナー参加者の大きな疑念は、どうやって門外漢のあなたが、ある業界の〈欲〉や〈時代〉を感じ取っているのか? ということだったそうです。
まず、〈欲〉ですが、私が「B to B」の業界しかお手伝いしていない理由がココにあります。
法人営業は、個人営業と異なり、〈欲〉が極めてシンプルです。
突き詰めて行けば、法人取引の最終的な〈欲〉は、「売上アップ」か「コストダウン」に繋がりますから、営業アプローチが標準化しやすいのです。
個人的には、個人消費の商品やサービスの企画も嫌いではありませんが、私自身が営業の勘所が摑める「法人営業」又は「チャネル開拓」に限定するようにしています。
理由は、上記の通り〈欲〉がシンプルなので、あらゆる業界とお付き合いしても、着眼点にブレが生じないためです。
そして、もう一つの〈時代〉を感じると方法が、セミナーに参加された皆さんの興味を最も惹き付けているテーマでした。
どうやって、自社にとって有利に戦える市場の条件となる〈時代〉を読むのか?
すこし掘り下げてお伝えしていきます。
時代を読む方法は、色々あると思いますが、私が、売れるニオイをつくり出す一番のキモだと思っているのは、“ひずみ”を発見することです。
ひずみを発見するには、定点観測が有効です。
定点観測には、予測したい分野で自分がスゴイと思った人の言動を入手し続ける方法が個人的には有効だと感じています。
しかし、このような日常活動の努力以外にも効果的な方法があります。
例えば、歴史を振り返り「何がどう変わったのか?」を掌握することも、定点観測と同じ効果を発揮してくれます。
これは、23歳のときに修行をさせて頂いたマーケティングコンサルタント会社で、身についたスキルでした。
ボスは、「日比谷図書館にいって、これを調べてくれ」「日経新聞で“このキーワード”を検索して、関連記事を全部入手しておいてくれ」と、情報収集を指示しれくれていたのですが…
振り返ってみると、その思考・行動方法が、時代を感じるノウハウに繋がっていました。
新聞を過去遡って閲覧したり、業界誌のバックナンバーを紐解けば、時代の流れや断絶、ひずみを感じ取る事ができます。
この“ひずみ”を、自社のセールスに活用することが出来ないか? という視点を持てば、顧客のハートに刺さる提案アプローチが沸々と湧き起こって出てきます。
必然的に、提案すべき客層がクリアに見えてきて、自然にターゲットが絞られてきます。
ターゲットは誰か? と説いても、中々ピンとくる販売戦略は思いつきません。
しかし、自社の「強み」を〈欲〉や〈時代〉のフィルターを通してみると、「あの人(会社)達なら、我が社の商品・サービスを欲しているだろう!」「その人(会社)にアプローチするには、こういった営業展開をしていけば、一番効果的だろう」と自然と売れる戦略がイメージできてきます。
売れる戦略を作る時には、「売ろう、売ろう」と売り手目線に陥らない様、「知ろう、知ろう」と〈欲〉と〈時代〉のフィルターを通して、的確にチャンスを見つけ、セリングポイントを絞って事業活動をしていくことが、売上をあげる最大の秘訣です。
御社では、時代の流れを読み、戦略に活かしていく経営を実践していますでしょうか?