「他社のモノマネをすると、根のない浮き草になる…確かにその通りですよね」
前回のコラム( 第201話なぜ、目の前の成功事例に踊ると組織は腐っていくのか)は、過去最高のアクセス数があり、沢山の反響も頂きました。
大多数の方は、藤冨の違和感と、同じように感じていたようです。
モノマネすれば、確かに成功は早いけど、行き着く先の「尻つぼみ」は見えてしまう。
それが、大成功している企画のモノマネであればあるほど、短命に終わり、長い目で見たときには、やっていないのと一緒、下手をすればやらない方がマシ― という笑えない現実を味わうはめに…。
やはり、困難であることは承知の上で、自社独自の考え方で勝負して行った方が、長い目で見た時には安定していきます。
もちろん、自社独自の事業モデルを軌道にのせるのは、簡単ではありません。
その簡単ではない事業の成長・発展の確実性をいかにあげていくか…。
これは、経営者にとっての永遠のテーマだと思います。
そこで、今回のコラムでは、その「事業成長・発展の確実性を高める方法」についてアプローチしてみたいと思います。
先日、このテーマについては「我が意を得たり!」という面白い本に出会いましたのでご紹介しましょう。
京都大学の客員准教授でエンジェル投資家でもある瀧本哲史氏の「戦略がすべて」(新潮新書)という本です。
この書籍では、「勝てる土俵をつくり出す」というテーマで、2012年ロンドンオリンピックにおいて日本が過去最高のメダル数を獲得した舞台裏が描かれていました。
これは、ズバリ「事業を成長・発展させるためのアプローチ」にも当てはまります。
かいつまんで、ご紹介しましょう。
「勝てる土俵をつくり出す」ポイントはいくつか挙げられていましたが、秀逸だと感じたアプローチは、「投資配分」です。
日本は’10年の広州アジア大会から「マルチサポートハウス」という出場選手の支援体制に投資を行ってきたそうです。
2012年ロンドンオリンピックでは、国が5億4000万円を投じ、選手村から徒歩10分の距離にある、普段は劇場として使われている建物をサポート施設として活用しました。
交代浴ができるリカバリープール、ミーティングなどに使えるスペース、高気圧酸素カプセルや睡眠をサポートする寝具などを設備も充実。
このハード面も見逃せないのですが、本質的に着目すべきは、配置されたスタッフの陣容だったそうです。
競技の枠を越え、出場選手達の「フィジカル(身体)面やメンタル面」のみならず、競技技術の向上支援まで行っていたとのこと。
映像解析や動作解析、戦術分析を行うスタッフにいたっては、40名も常駐していたそうです。
私も半年前からゴルフを始め、週末には「ゴルフスクール」に通っていますが、指導内容もさることながら、自分を客観視できる「ビデオ撮影」に感心していました。
腰の確度を数値的に算出したり、スイング軌道のあるべき姿との差異を客観視できたり…と、何をどうすれば上達できるのか? を動作解析によって、わかりやすく説明してくれるのです。
聞けば、プロゴルファーでも、スイングは日々進化するとのことなので、このような映像解析による支援体制は、必要不可欠ということになるのでしょう。
話をオリンピックに戻すと、予算がつきやすい競技であれば、このようなお金のかかる支援体制を問題なくつくることが出来ますが、予算がつきにくいマイナー競技は、メダル獲得のポテンシャルがあっても、技術向上の可能性を押し広げることができず、残念な結果に終わることがあります。
この課題を克服する手段として機能させたのが、「マルチサポートハウス」という支援体制だったというのです。
メダル獲得数を最大化する戦略を考える際には、選手そのものに投資を行うことを発想しがちです。
・良い選手を発掘する。
・選手一人一人の技術向上に向け投資を行う。
たしかにそれも大事だと思います。
しかし、2012年の史上最高38個のメダル獲得という結果を見ても分かる通り、
選手自体に着目するよりも「支援体制のあり方」に着目した方が、組織目標を達成しやすいのが現実です。
これは、アスリートを営業マンに置き換えて考えた際にも、まったく同じことが言えるのではないでしょうか。
とかく「売れる営業マンが欲しい」と発想したり、「売れる営業マンになるよう教育したい」と思いがちですが、それは組織目標達成という点から見れば、不合理であったりもします。
「期待する成果をあげるためには、企業活動はどうあるべきか」
そして「あるべき姿の組織運営を整備するためには、どのような支援体制が必要なのか?」
といったアプローチの方が、確実に売上金額の最大化(メダル数獲得の最大化)に近づいていけます。
藤冨がいつもセミナーでアプローチしている内容も、本質的にはまったく同じです。
営業という枠を超えて、商品・サービスのあり方から、営業支援(販売促進)のあり方まで、言及しているのも、そのためです。
今の時代、営業部隊だけに焦点をあてて売上をあげようとしてもムリがあります。
営業という狭い思考回路をぶっ壊す必要があるのです。
御社においても、業績向上の支援体制のあり方を、今一度真剣に考えてみませんか?