とことん「本質追求」コラム第201話 なぜ、目の前の成功事例に踊ると組織は腐っていくのか。

 

 

「A社(大手コンサルテンィグ会社)のセミナーに行って来たのですが、業界で成功している“この企画”をウチも取り組もうと考えています。どう思いますでしょうか?」

 

先日、ご相談頂いた内容ですが、前々から不愉快に思っていることがあったので、コラムに綴りたいと思います。

 

大手コンサルテンィグ会社の中には、ある業界で成功した事例のノウハウを抽出して、それをそのまま同じ業界に横展開する残念な会社があります。

 

上記のご相談は、その典型例でした。

 

ぶっちゃけて申し上げますが、コンサルテンィグ会社も、それを採用する会社も、あまりにも無責任だと、私は軽蔑しています。

 

まずコンサルテンィグ会社ですが、クライアント企業の事業成長をご支援するのが本来の役割のはずです。

たしかに、「ある業界で成功した事例のノウハウを横展開」すれば、成功する確率はあがるでしょう。

しかし、対顧客向けの活動の場合、ある業界で成功した事例が流行り出せば、どのような状態になるかー。

彼らは、間違いなく知っているはずです。

 

他例を用いて、簡単にイメージしてみます。

ある地方の宅配寿司が「大間のマグロ寿司」をウリにしたチラシを作成して、大ヒット。昨対比で月商150%増。近年稀に見る当たりの企画があったとしましょう。

 

それをあるコンサルタントが見つけ、別のお店で丸パクリの企画を実施。すると同じように大ヒットして、月商180%増。

 

ポスティングするチラシには、デカデカとマグロを一本釣りする漁師の写真と、アブラの乗り切ったトロの握りを掲載。

 

このチラシも最初の繁盛店の「コピーチラシ」です。

 

これはイケる!と思ったコンサルタントは、宅配寿司のリストを調査会社等から購入して、「チラシ1枚で月商150%アップする方法!」と宣伝。

集まった宅配寿司を経営するオーナーや店長に「このチラシをポスティングすれば簡単に売上はあがりますよ!」と高らかな声で拡散して、全国津々浦々同じような企画が蔓延していきました。

 

すると、当初一生懸命考えて試行錯誤して創り上げた企画者の周りにも同じようなチラシがポスティングされ始めます。

 

お客様は、どのチラシを見ても一緒。

注文が、分散しはじめて、最初に企画したお店の売上も徐々に下がっていきます。

 

最終的に儲かったのは、全く頭を使っていないコンサルタントだけ。

 

こんな笑えない話が、恐ろしいことに一部の大手コンサルタント会社は仕組化されていると聞きます。

 

こういった「わかりやすい構造」を経営者が見透かせず、自社にもそのまま取り組んでしまったら、どうなるか?

 

結果は、火を見るより明らかです。

 

つまり、採用する会社も私は同罪だと考えるわけです。

 

 

目先の売上責任をもつ店長なら、ある程度は仕方がありません。

しかし、長期にわたって経営責任をもつ社長や経営幹部は、このような軽薄な仕組みには、即座に気づき、何が起きているのか?を自らの頭で考えるべきです。

 

なぜなら、経営者が、現象に踊らされていては、組織も右往左往してしまうからです。

いえ、右往左往するだけなら、まだマシです。

 

仕事に対する前向きな態度が薄れていき、社員は、どこかバカにした態度で仕事に接するようになります。

 

「大間のマグロ」をウリにしたチラシを作って、ポスティングするか!

という思考回路では、次に「ブリ」が流行れば、「よしウチもブリだ!」となってしまいます。

 

チラシ制作を指示された社員。

仕入先をさがす社員。

調理企画をする社員。

それをポスティングしにいく社員。

 

浮き草のような根のない企画に、みな「また始まったよ…」と蔭で薄ら笑いして、どうせ長くは続かないだろう…とナメた態度で仕事に取り組むようになります。

 

これは、絶対に避けなくはなりません。

組織は内部から腐っていきます。

 

あるべき姿は、同業種の成功事例のモノマネではありません。
他業種・他業界の成功事例の構造を見抜き、自社化すること。
または、同業種の成功事例を洞察して、顧客の購買心理を読み込んで、別のアイディアを企画していくことです。

 

「なぜ、大間のマグロが受けているのか?」 味なのか、体験なのか、非日常制なのか… どの切り口が消費者から支持をされている根源なのか?を熟考するなり、誰かとブレーンストーミングするなりして、本質を掴まえた上で、独自の企画を練りこむ事が必要です。

 

そうすることで、骨太の企画が出来上がっていきます。

 

骨太の企画ゆえに、ちょっとやそっとでは、方向性がズレません。
方向性がズレないがゆえに、社員も真剣に取り組まざるを得なくなります。
現象に踊らないこと。
現象を生じさせている「前提条件」や「構造」に着眼すること。
その上で次なる一手を考えることが大切です。

あなたは、目の前の成功事例に踊らず、構造を見抜く習慣を身につけていますでしょうか?